なんか崖に大穴があいてるんですけど
「あからさまだな。」
「あからさまですね。」
「あーやっぱりここよねー。」
木々の中、泥だらけの地面に残った足跡を追っていくと見えてきたのは岩の壁だった。そう、文字通り壁だ。断崖絶壁。おそらくは、向こうは100m程度の高さがある台地になっている。そして、その壁には無数の穴と…一つの大きな入口がぽっかりと口を開けている。まるで、大きな怪物がくり抜いたかのような、本当に大きな入口だ。この中に、大型のドラゴンが住んでいると言われても納得してしまう程の。
「霧島、いけるか?」
「愚問ー。」
「ここからは、いつ戦闘になってもおかしくはない。気を引き締めろ。金田。」
「佐藤!?なんで俺だけ名指し!?」
「お前が一番心配だからだ。」
「…ちっ」
ここから先は危ないらしい。そもそもココは一体なんなんだろう。いや待てよ?
(ヴヴヴ)
これは羽音?しかも無数に聞こえる?
「…佐藤さん、ここってもしかしてなんですけど。」
「そうだ、黒川さん。クイーン・ビーの巣だ。たぶん奥にいる。」
「まさかここに来るとはねー。進行方向的に薄々察してたけどー。」
「キラー・ビーも無数に出る。囲まれるのにだけは注意しろ。」
「まぁー、足元のスライムに注意する必要がないのはありがたいわねー。」
「そうですね。音にだけ注意すれば、不意打ちは防げますし。非常に楽です。」
「それにこの時間は、キラー・ビーも巣穴に引っ込むからな。不意遭遇しても仲間を呼ばれる前に叩き潰せば押し通れる。」
加藤さん、霧島さん、金田さんが非常に頼もしい。
「それにー風魔法を展開すればー、自動的にシュレッダー。」
「…まだMPは温存してくれ。」
「クイーン・ビーぐらいなら問題ないけどー、まぁ、そうね。」
「黒川さんは、私の近くにいてね。」
「はい、霧島さん。」
「ところでー。」
「案の定、遅いわね。応援。」
「そうだな、もう合流してもおかしくないはずだが…待つべきか?佐藤。」
「金田。加藤。」
「なんですか?佐藤さん。」
「たぶん応援は来ない。」
えっ。来ないの?
「えっ佐藤さん?なんでそう言い切れるんです?」
「FP支部内に協力者がいる可能性がある。」
「でしょうねぇ。」
「私が敵なら、そいつに連絡して、まず遅れた応援を行動不能にする。」
「同意見よ。」
「つまり、5名でクイーン・ビーの巣穴に突入すると?」
「そう言ってるんだ。金田。」
そうか、ココからは命懸けなんだ。いや、ここまでだって命懸けだった。ここまでもスライムは逃げるだけだったけど、それはたまたま私が称号を持っていたからであって、本来ならスライムだって、とても危険なんだ。
…絶対に、生きて帰る。…帰らなきゃ。覚悟ができてるつもりだったけど。やっぱり、怖いな。




