なんかジャングルにいるんですけど
―暑い
先程まで清涼とした川辺で水遊び…じゃないな。スライム遊び?をしていたはずだが、今は打って変わって、ジャングルの中にいる。眼の前にはうっそうと茂った木々と、ぬかるんだ地面。この景色がまるでどこまでも続くかのようにすら思える。…正直言って、ここまで環境が激変するとは、ダンジョンは本当に不思議だ。地上のジャングルに訪れたことはないが、本当のジャングルもこんな感じなのだろうか?
試しに地図作成Iを発動してみると、MAPいっぱいに広がる木々しか表示されていない…これ自分の現在位置も分からないのか。
「あー、足跡ばっちりだ!2人分!」
「そうですねー。くっきり残ってますー。」
「他の足跡もあるけど…これはより前につけられたやつだな!」
「…佐藤さん、今3F以降に潜ってると思われる探索者って何名でしたっけ?」
「20名だが、全員7F以降に前から潜ってる中堅からベテランだな。おそらく3・4Fにはいないだろう。」
緊急招集で集められた6名の内、佐藤さんと合流した探索者は3名。残り3名は位置が遠すぎて後ほど合流する手筈になっている。いずれも、2F巡回で3F入口近くで巡回をしていて、すぐに駆けつけられたランクD~Cの探索者だ。
『「初心者殺しの3階層」…突破するだけならDランクでもなんとかなるけど、人探しとなると別だわ。』
「任せてくださいよ!伊達に長いことFPに潜ってませんから!」
『あなたが一番心配なのよ、金田。』
一人目が金田さん。いかにもな男性探索者。Dランク。
「大丈夫ですー。いざとなったら私が金田を気絶させますー。」
『それはそれで大丈夫じゃないわよ。霧島。』
二人目が霧島さん。特徴的な喋り方の女性探索者。Cランク。
「指揮は佐藤さんにお任せします。霧島さんだとちょっと…。」
「安心しろ加藤。もとよりそのつもりだ。」
三人目が加藤さん。落ち着いた風貌の男性探索者。Dランク。
これに佐藤さんを加えれば、Cランク2名とDランク2名の編成であり。3階層を突破するだけならば、特別問題がない編成である。
「ところでー。どうみてもニュービーなそちらの女の子はー?なんでこんな場所にいるんですかー?お家へおかえりー。」
「霧島。この娘は黒川さんだ。このまま連れて行く。」
「はー?どう見ても「初めてダンジョン潜りました!」感満載のEランクじゃないんですかー?危険ですよー?」
「違う、彼女は仮免許だ。」
合流した三名組が驚いた顔をして、空気が変わる。
「…正気ー?」
「…えっ!?」
「それマジ?」
(私だって行きたくないんだけどなー)
「冗談ではなくシリアスだ。彼女は今探索に同行する。」
「佐藤?いつからお姉さんに冗談を言えるようになりました?あなたはユーモアが言えるような人じゃなかったはず。」
あ、普通の喋り方できるんだ霧島さん。…あ、金田さんと加藤さんがさっきより更に驚いた顔してる。たぶんいつもこんな喋り方なんだろうなこの人。
『霧島、残念ながら佐藤の言うとおりです。佐藤の指示に従ってください。』
すかさず岬さんからフォローが入る。
「…問題になりますよ?西部支部の岬さん?十文字さんはご存知なんですよね?」
『十文字さんから許可が出ています。』
「…それが西部支部のやり方です?」
『そう取ってもらって結構です。』
「…ならもう私は何も言わないー」
「…反対…と言いたいけど無駄なんでしょうね。」
『決定事項です。』
「それなら俺も問題ない。こっちの責任にならなければな。」
「西部支部の命令であればしょうがありませんね。…後で抗議はさせてもらいますが。」
『終わった後も同様の考えならどうにでもして。』
「…そうですか。わかりました。」
どうやら話はまとまったようだ。
「霧島。」
「…なにー?さとー?」
「守ってやってくれ。」
「…がんばるー」
岬「霧島と佐藤のCランクに、加藤と金田のDランク…まぁとりあえず投入するだけなら大丈夫か」
岬「追加人員はどうなってる?」
職員「それが…残り3名全員と連絡がとれません。」
岬「…最終交信はいつ?」
職員「10分前です。」
岬「…もしかしなくても、やられたわね?生死は?」
職員「確認中です。既に西部支部からの応援を、最終交信地点に向かわせてます。」
岬「次から次へと…でもこれで、計画的で周到な襲撃なことほぼ確定ね。…舐めたことしてくれるわね。」
岬「ダンジョン封鎖及び、非常事態宣言も視野にいれます。生徒の安全確保急いで。」
職員「了解しました、準備します。」




