深くより暗きから蠢く
ユーザー名をあわせました…(‘、3_ヽ)_
FPダンジョン2F、3F入口前。
『やぁ、よく来たね。高橋君、山田君。私の渡したものは役に立ったな?』
その男は居た。
「えぇ!アレのお陰で引率の探索者に気づかれることなく移動できましたよ!」
「俺達ふたりがいなくなって、あたふたしてた姿は滑稽だったな!」
件の二人組と一緒に。
「こうやって来たんだ。3Fのクイーン・ビーまで案内してくれるんだよな!」
『当たり前ですとも』
「さっさと倒してレベルを上げてやろうぜ高橋!そんで他のやつらボコボコにして言うこと聞かせてやるんだ。俺達二人ならできるだろ!」
「あんたからもらった、コレは本当に素晴らしいな!ナイアさん!」
『えぇえぇ、どんどん使って強くなってください。そのためにお渡ししたものなので。それがあれば、クイーン・ビーだって簡単に倒せますよ。そうすれば、更にダンジョン奥にだって行けます。そうすれば、稼ぐこともできるし、他のクラスメイトをねじ伏せることもできる。探索者として活躍すれば、名声も得られる。そして私は、自分の実験の実証もできる。』
―フードの奥からぬるりとした瞳だけが二人組を見つめる。興奮する二人組とは対象的に、ただただ冷めた目だけが、怪しく光る。その一方で、その男の口は饒舌に二人組に語りかける。
『…ところで、同じクラスに黒川さんって人いますよね?』
「あー、黒川?あの女か。」
「あぁ、よく7限目いないやつだな。毎日すぐ帰るし。」
「顔は良いんだけど、愛想がないんだよな。あぁ、スタイルは悪くない。」
「ただ、俺は雨森のほうがいいな。あいつをねじ伏せて言う事聞かせるのが楽しみでしょうがねぇよ!」
「俺は青山だな。いつも俺に噛みついてきやがる。あのすました顔を歪ませてやるのが楽しみだなぁ!」
『(…中身はまぁこんなもんですか。所詮は借り物の力を、自分の実力と勘違いする無能ですね。猿のほうがまだ賢い。ま、その方が誘導しやすくて助かるか。)』
『えぇえぇ、それはもう。お二人の好きなようにできますよ。そのために、わざわざあの無人のダンジョンで使ってみていただいたんです。ソレの効果を大変よく分かっていただけたと思います。好みの女がいる?結構!どんな女でも、強くなってしまえば力でねじ伏せられます!ましてや仮免許の高校生など、お二人にかかれば赤子の手をひねるのも同然です。…まぁ、そのためにはもうちょっと経験値を稼いでもらわないといけないんですけどね。』
男は、耳障りの良い言葉を並べ立て、二人をおだてる。
『えぇ、そのためにはクイーン・ビーを倒していただいて、お二人には条件を満たしていただかないといけません。条件を満たせば、更に一つ上の力を手にすることができます。そこまで行ければ、その辺の探索者なんて話にもなりません。お二人の思うがままです!』
「話を聞いたときは本当かよって思ったけどなぁ!あれを見せられちゃぁな!」
「そうそう、あんたには本当に感謝してるよ!仮免許の方もあんたのお陰で楽勝だったしな!」
『(…ちっ仮免許すら自力で受からない無能め)』
『はははは!お役に立てたなら何よりです!…ごほん。さてさて、お二人への追跡者が出るのは時間の問題です。他の探索者の目もありますし、さっさと3Fに行きますよ。』
「おぉ!そうだな!さっさと行こうぜ!」
「楽しみだなー!クイーン・ビー!スライム狩りなんて飽きちまったよ。」
『(ただ、この二人から黒川理恵の事を聞けなかったのは想定外ですね…まぁいいか、どうせ集団探索は中止になる。あとは協会に潜らせてるアイツが混乱に乗じて黒川理恵を確保してくれるでしょう。そのために、このバカ二人とアイツにわざわざ、アレを与えてやったんだから。ま、役に立ってくれるうちは大事にもてなして差し上げましょう。殺したところで蜂の餌にしかなりませんしね。それぐらいなら、有効活用しないと。)』
『(えぇ、楽しみですね。実験成果の方も、黒川理恵の方も。手に入るのが待ちきれませんね。)』
T県探索者協会西部支部より派遣された応援職員「高橋と山田の素行調査結果あがりました。コレです。」
岬「…はぁ?4日前に三子山の鐘付跡ダンジョン付近に目撃情報?あこは確か…出張所もないゲートだけのダンジョンでは?」
岬「あこ…しかも、遠いだけじゃなくて、小規模かつ難易度が高いにもかかわらずドロップが渋いから、ほとんど人の出入りがないダンジョンだわ。そもそも周りになにもない。だから職員すら定期チェックしかしない。あこに高校生が近づくのは不自然だわ。…でも何しにはいったの?そもそもゲートすり抜けてはいれんの?」
職員「ダンジョン内部を調査した職員から、最近人がはいった形跡があったと。ゲートの入出管理には1月程、出入り記録ありませんでした。矛盾してます。ゲート通らずに侵入してる可能性大です。」
岬「それ普通にインシデントなんだけど。あこの管轄どこだっけ。」
職員「…ここ(FPダンジョン支部)です。」
岬「…十文字支部長へ報告。もう私の手には余る!」




