なんか初めてのスライム討伐なんですけど
ついに、私達が割り当てられたエリアに到着した。いや、本当にちょっと遠かったな。確かに1Fと2Fの道中は整備された道を行くだけだったからそれほどでもなかったけど、私達の学校は、さらに2Fの奥まで移動ということで、一番の大移動をさせられてしまった。しかも私がいる佐藤班は、さらにその一番奥ということで、ずーーーっと移動させられてしまった。まぁその間、京ちゃんと利香ちゃんといろいろと話せたからいいか。でもさすが佐藤さんだね、現役の探索者なだけあって、すらすらと私の班のエリアまで案内してくれた。
道中にもスライムを見かけたけど、それは別班が倒してくれていたので、ようやく、初めてのモンスター戦だ。と言っても、スライムは叩き潰すぐらいで終わるので、いまいち「倒した」実感がないらしいんだけどね。
というわけで、早速ツーマンセル、2組での行動になった。前衛の組と、後衛の組に別れて、更にその後ろから佐藤さんがフォローするという形で移動だよ。前衛が青森ペア(青山&雨森)で、後衛が黒宮ペアの形で移動。私達が行動するエリアは、2Fの奥、3Fに下る階段に近い小川と湿原のエリア。あっちにもこっちにも水たまりがあるし、あちこちから水が流れる音がする。足場は悪いけど、森林エリアより見通しがよくって、うごうご動いているスライムが目視でよく分かる。
目視でよく分かるということは、周りの安全を確保しやすいということ。あ、あっちの方に別の班の姿も見えるね。もう戦ってるなー。
さて、最初は青森ペアがはぐれたスライムと戦闘する形に。利香ちゃんが前に出て、京ちゃんがフォローする形か。
「えい!」
ぷちゅん
利香ちゃんが振り下ろした棍棒に、スライムは簡単に潰れて弾け飛んだ。いともあっけない。
「…えっ、これで倒せたんですかね…?あっEXPが入ってる。」
利香ちゃんも倒した感触が薄かったみたいだ。でもEXPが入っているということは、倒せてるから大丈夫だね。
「EXPが入ってるなら、倒せてますよ。周りは大丈夫なので、そのままドロップ品を回収してくださいね。」
「分かりました。」
佐藤さんが(その必要もないが)周りを警戒してくれているので、安心してドロップ品を回収できる。FPダンジョンのスライムのドロップ品は、スライムジェルと、スライムの核だ。核は魔力があるし、スライムジェルはFPダンジョンの特産品なので、単価は安いけど簡単にそして確実に稼げて美味しいのだ。頑張って集めれば、駆け出しの探索者でも日に1万前後も稼げる場合もある。
なにせ、ここのスライムは安全だからね。ほぼ水だから、溶かされることもなければ、反撃や攻撃もしてこない。うごうご動いているジェル状物質を、ぽんぽん叩いて回収するだけで終わる。たくさん取れるけど、需要があるから値段も一定で、いつでも簡単に稼げると、大人気なぐらいだ。今回の集団探索で取れたドロップ品も、私達のポケットに入る。初心者の高校生の1日程度の稼ぎなら、特例もあって、ほぼ絶対に税金はかからないし、やればやるだけ私達のお小遣いになる。
それに、学校の方も「EXP集めるために、ガンガンやれ!」ってスタンスだし、探索者協会の方も「ジェルたくさん持ってきてね!」と、推奨してるぐらいだ。
「これがスライムジェルですか…透明で水信玄餅みたいですね。」
「というか、スライム自体がほぼ見た目水信玄餅だよねー。」
「わかる。食べたくなってきた。」
奏と京ちゃんの言っているとおり、言われてみれば、確かにこれは水信玄餅だ。
「食感は、水信玄餅というよりわらび餅よりですけどね。ほぼ水ですし、そのままでも美味しいですよ。私もFPに潜る時は、数匹潰してスライムジェルを集めてから進みますし。」
「あー、本当に飲料水代わりになるんだコレ」
「今日の稼ぎで、売店の水菓子を買って帰りましょうか」
「「「さんせーい」」」
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青山ペアと、奏のスライム初討伐は順調に終わって、ようやく私の番だ。一番近くでうごうごしていたスライムにそっと近づいていく。
スライムには目がなく、周りは見えていないし、特に反撃や特殊行動はしてこないので、なんなら、近づいて蹴り飛ばすだけでも倒せるらしい。が、それだとこの集団探索の意味がないので、棍棒をかまえて近づいていく。もう少しであとは棍棒を振り下ろすだけだ。
…だけのはずだった。
私が近づいた途端、スライムが一目散に逃げ出した。えっなんか逃げるの早くない???さっきまで、あんなに、うごうご動いてるだけだったじゃん!?おーーーーい!待てーー!!!あ、もうあっち行っちゃった…。
えっなんでぇ????
スライム「トップスピードだ」
りえち「私が遅い?私がスロウリィ!?」




