なんとしても探索者仮免許に合格したいんですけど
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『探索者仮免許試験』まであと数日しかないよ~。授業中にやった、模擬試験は合格ギリギリだったし、不安だね。普段から授業を聞いていれば問題ないような内容だったけど、本番で合格できるかは全然わかんない。通常の授業に加えて、日商簿記の勉強とかもやってたから、仮免許の勉強の方が若干おざなりだったのは否定できないんだよね。
あと、ネットで『探索者仮免許試験』で調べたら、もうちょっと難しそうなんだよなー。なんか授業でやったやつより難しくない?そっちだと合格点に届かなかったし、やっぱり自分でもある程度進んで勉強した方がいいような気がするんだよね。幸いにも私には『蛍雪の功』っていう称号があるし、INTの補正があるから、今から数日間で本気で勉強すれば、もうちょっと余裕で合格できる点数が取れる気がするんだよなー。
というわけで、用意したのがこちら!『一般向け探索者仮免許試験』の教科書になります!…なんか一般向けと高校在学者向けって2つあったんだけど、高校向けのやつは売り切れてたから、一般向けのやつ買ったんだよね。たぶん内容のわかりやすさが違うぐらいだと思うから、まぁ私には問題ないかな?たぶん。まぁそもそも探索者協会の通販に在庫がなかったから、そもそも手に入らないんだけどなー。
※『高校在学者向け』は、この時期は全国の学校で必要になるので、在庫不足となり通販では手に入らない
…で、ちょっと舐めてた。思ったより分厚い。探索者制度の事とか、探索者向けの法律のこととか、ドロップ品の税制の話とか、授業でやったっけ?みたいな内容までのってる。いや、なんか多少やった記憶もあるし、配られてたレジュメとかにもちょろちょろ書いてあるけど、なんかここまで詳しくないよね?でも、これ試験に出るんじゃないのかな?うーん。どうなんだろう。まぁでもやっとけば、別に問題ないよね!
ふーん、ダンジョンって発見したら国、あるいは都道府県の探索者協会に届け出しないといけないんだ。私有地だった場合は、売買の場合と貸借で保証内容や、ドロップ品の税制も変わってくると。あぁ、ドロップ品の代金を受け取る方法が決まっていて、一定額やランクを超えると源泉徴収を選択できるようになるのね。それに、税制特例で250万まで非課税なのか。で、探索者は帳簿の記録も必要になって、あぁ、複式簿記でつけるのね。簿記の知識も求められると。ふーん、開業届は出さずに探索者免許と届け出で、個人事業主の申請ができると。企業所属なら会社側が全部やってくれるし、探索者協会所属っていう選択肢もあるのか。ふんふん。ダンジョン内部での通報制度に、探索者協会で受けられる優遇制度、こんなものまであるんだ。
…あれ?わりと大事な内容多くない?授業でやらなかった気がするけど?これはかなり集中して、取り組まなきゃダメそうだなぁ。幸い、日曜日もあるしあと数日あれば、たぶん全部詰め込めるはず!
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「110点ですねぇ。」
「満点以上ね。」
「おかしいですよね。」
「おかしいわね。」
ただいま絶賛、K号担当コンビによる、探索者仮免許試験の採点中である。当然採点中の答案は、呉西商業高等学校ビジネスマネジメント科、全員分の解答用紙である。内容は当然、『高校在学者向け探索者仮免許試験』のものである。これは他の学校とも変わりはない。ただし、今回のテストはおそらく「最高得点は90点、平均で75点、最低点数が70点」ぐらいであろうという試験である。ちなみに合格ラインは60点だ。所詮は簡単なテストだからだ。
だが、「合格が容易なテストと満点が取れないテスト」これは矛盾しない。これはどんな試験・テストにも言えることで、いわゆる「難問」「奇問」「悪問」と呼ばれる問題によるためだ。これは、出題者の嫌がらせや、出題ミス、あるいはそもそもとして、解答がはっきりしないような問題が出題されることによって、発生する。今回の「高校在学者向け探索者仮免許試験」では、「難問」と呼ばれる悪問が混ざっていた。たしかに知識を持っていれば、解答すること自体は不可能ではない。不可能ではないのだが、それに求められる理解度が、「高校在学者向け」で求められるレベルではないのだ。
これに解答できるとすれば、『一般探索者向け』に探索者協会が出版しているテキストを、かなり深く読み込み、探索者という制度について、深く理解していなければならない。この分厚いテキストを隙間なく網羅するには、「高校入学から仮免許試験まで」の期間では短すぎる。
つまりは、今回の出題者のいじわるとして、一般探索者向け仮免許試験でも「難関」と言われるような設問をなんと、実に「3問」も紛れ込ませていたのである。うち2問は各5点、そして、1問は実質0点…ただし完全解答で配点10点のまさしく「悪問」である。そして完全解答しない限り点数は与えられない。すなわち、今回の高校在学者向け探索者仮免許試験では、90点が最高得点である。
だが、中にはやはり天才や秀才といった者がいたもので、進学校で行われた試験で、叩き出された最高得点は、95点や100点といったものが存在した。そして、表向きには100点で満点であるため、満点合格者として発表される。
だがここに、真の完全解答を成し遂げた答案が存在する。おそらく、後の満点合格者発表で、一人だけ秘密裏に110点として別に表彰される事になるだろう。
そう、やっぱり黒川理恵の答案だ。
「佐藤くん、やっぱこれ報告しないと駄目?」
「駄目でしょうね。」
「代わりに報告書書いてくれたりとか。」
「…一応私は臨時職員ですし、責任者は岬さんですので、責任者が報告すべきかと」
「言うわね。その代わり、残りの採点!任せたわよ!」
「ぐっ…はぁ…。わかりました…。」
佐藤が飲む徹夜のコーヒーは苦い




