なんかいつも同じ人なんですけど
集団探索まで、あと1週間と少しである。これまで7限目と土曜日授業まで使って、通常授業と共に詰め込まれた「簿記」と「探索者基礎」から開放されるのも間近だ。つまりは、本日は『探索者仮免許』の試験日である。世間から見れば、座学をしっかりとこなして探索者協会の試験を受けている…ように感じられるが、実際のところは高校生向けの試験が「出来レース」と呼ばれているのはご存知のとおりである。
国策として、義務教育終了後にダンジョンでLVを上げることにより、体力・学力を向上することが奨励されている。故に、厳格な試験によって高校生に仮免許を発行することは、事実上はない。一応は相応の難易度の試験が実施はされているが、その内容は座学担当の指導教員に筒抜けであるのが現状である。各都道府県の探索者協会より、模擬試験の名目で偶然本番の試験と8~9割が同一な事前試験が丁寧に実施されている。
つまりは、各高等学校で(一応)探索者協会の人員監視の元実施される、『高等学校在籍者向け探索者仮免許試験』を落ちるような生徒は、よほど授業を聞いていないか、壊滅的に学生&探索者に向いてないかのどちらかである。ただし、後者の場合はそもそも高等学校に入れる学力が無いハズなので、現実の合格率はやむをえない試験の欠席者(病欠)を除いて100%である。更に言えば、事前テストで落ちるような生徒は、さらに追加で補習が行われるし、病欠の場合は後日各都道府県の探索者協会での再試験を受験するのが常であり、最終的合格率は…もはや言わなくても分かることだろう。
授業で受けた内容を正しく理解しており、社会に通用するだけの高校生レベルの一般常識さえ持っていれば、合格できる試験なのである。
本来、「ダンジョンに入るための予備知識の習得程度の確認」として仮免許試験は存在する。ダンジョン関係の最低限の法律知識、ダンジョン内での危機管理、低層で出現するモンスターの特性や討伐方法、ダンジョン内での義務、ドロップ品や報酬の取り扱い、税金、安全確保の方法、武器防具の使い方など、制度面・知識面からマナーや現実的なダンジョンの攻略に関する事柄まで、求められる知識は広い。故に、『一般向け探索者仮免許試験』ではより多くの範囲をカバーしなければならない。
それに対して、『高校生向け探索者仮免許試験』では、「制度・法律面」はかなり削られる傾向にあるし、一般向けよりも「集団行動」や「低階層の攻略法」あたりに必要な知識が求められる。つまりは、何よりも「安全第一」と、「国策での高等学校生のダンジョン低階層攻略の推進」が組み合わさった結果の、『ダンジョン攻略ありき』の骨抜き試験である。
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だが、そんな試験でも、探索者協会からの監督員は派遣される。いかに試験が形骸化してるとはいえ、不正行為は別なのだ。試験内容そのものが形骸化していても、試験の実施手続きは厳格に守らなければならない。なんのための試験なのかはわからなくても、「試験制度が正しく機能している」という体裁は保たなければ、その試験結果意味がよくわからなくなってしまう。
そして、この時期は全国すべての高等学校が、5月の集団探索に向けて仮免許試験を実施している。進学校であれば、5月に入ってすぐだし、普通科もそれに続く。商業科や工業科はそれに遅れて、5月の第2週あたりの実施となる。つまりは、探索者協会職員の5月のスケジュールは、通常の協会業務をこなしながら、管轄地域すべての高等学校で順次開催される、仮免許試験を次から次へとはしごしていくという、ハードスケジュールなのである。こんなもの、通常の協会員だけでさばききれるわけがない。
故に、素行に問題がなく協会に協力的な探索者には、この時期には試験監督の補助・随行。あるいは、資格持ちの探索者であれば、協会との一時契約を結んで、臨時協会職員として仮免許試験の監督業務につく。…似たような話を前にも聞いた?おそらく気の所為だ。
さて、改めて本日は、この呉西商業高等学校での探索者仮免許試験である。全クラス=全1年生の一斉受験であり、各クラスに試験監督として学校教員1名と、探索者協会よりの派遣監督官2名が派遣される。そして、理恵のクラスの試験監督は…もう言わなくても分かるだろう。岬と佐藤である。
指導者と監督者が同じ?偶然です。学校の試験だって、そうじゃないですか。何も問題はありません。
暑い無理(‘、3_ヽ)_死んでた。
だいぶんなれてきた。




