私は普通の高校生なのに、言えない事ばかり増えていくんですけど…
認識することで、今まで普通だと思っていたものが正しく見える。今目の前にある愛用のクッションも、『普通じゃない』と認識することでいろんな違和感を覚えている。むしろ、なぜ、いままで、気がつかなかったのか不思議でならない。普通のクッションは、つぶしただけでEXPなんて獲得できない。不本意ではあるが通知機能がなければ、クッションからEXPを獲得していることに、たぶんこの先も気がつかなかったことだろう。
そう、私は認識した。ステータスの時もだ。あぁそうだ、ステータスもそうだった。EXPとSPが認識することで、見えるようになった。称号や通知機能も全て、認識したことが全部きっかけだった。つまりだ、すべての鍵は『認識する事』にあるのではないか?そう考えると、いろんなことが腑に落ちる。つまりは、『正しく認識する』と、『正しい状態が観測できる』のではないだろうか?
あらためて、『異常』を『認識』した状態で、クッションを観察する。
ジェルクッションだとずっと思っていたが、つなぎ目がなくて、中身を見たこと無い。つまり中身は厳密にはわからない。不明だ。観察して、わかるのは一切つなぎ目が無い布地部分だけだ。では触感はどうか?ジェルのような弾力と反発。ようするにぷにぷにとか、個体と液体の中間のような反発力のある物質の感触。手に持ってみると、その中につまっている物質のために、やや重たい。布団に置く時に投げると<<ボフ>>という程度には。
…うん。挙げた特徴だけならば、普通のジェルクッションと同じだけだ。なんとなくだが、まだ、正しく認識できるための何かが足りていない気がする。今すぐに、このクッションの正体を確認することは難しいのかもしれない。
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「うーん、これ、何でできてるんだろうな…」
とりあえずとして、疑わしいのは、中身だ。中身に使われている物質が、クッションを潰すだけで、EXPを獲得させる原因になっていると推測。しかし中をあけて見るのは、最終手段にしておいたほうがいいだろう。もちろんクッション全体として、『なんらかのアイテム』になっている可能性もあるし、その可能性が高い。だが、やはり問題は中身なのだ。
となると、今このクッションに対して調べられることは限られている。…少なくとも今日は、枕にして眠るつもりはないが、今後の取り扱いについても悩ましい。だが、手放すという選択肢はない。というよりも、監視下にないほうが怖い。それと、もし他の誰かに見つかった場合、大変なことになるだろう。それはそうだ。労せずしてEXPを稼げると知れれば、それこそ世界中の探索者が欲しがる。なんならば、自分からはダンジョンに行かないような権力者は、それこそ文字通り『何をしても』欲しがるだろう。
つまり、このクッションの存在がバレることは、私がとれるリスクではない。少なくとも、対外的にはこれまで通り、使う必要があるかもしれない。家族に話すことすら憚られる。…そして、ますます私の高いLVがバレるわけにはいかなくなった。ダンジョンにも入っていない、高校生がこんなに高いLVだということが、知られれば、『なぜこんなに高LVなのか?』と追及が始まるに決まっている。
「ますます、言えない事ばかり増えていくなぁ…普通の女子高生のハズなんだけどなぁ…どうしてかなぁ…」
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「十文字支部長、なぜこれが、機密なんですか?確かに対象の異常さは気になりますが、機密指定するほどの重大インシデントとは思えないのですが?どれだけ強くても、一般冒険者の枠内に収まるのならば、これほど問題にする内容とは思えません。」
「風見君、確かにレポートを一読すれば、その程度の認識になるだろう。だが、やはりこれは機密なのだ。」
「一体なにが問題だと?」
「残念ながら、理由について話すことはできない。だが現状は、君の認識よりも深刻だ。K号の存在をできるだけ知られないように、秘匿する必要がある。わかったならさっさと手続きしろ。」
前回のあとがきの悲鳴がすべてです。上げてから落とされた(※気温が)ら大変なことになるんですよね…。ようやく調子がもどってきたので、続きをちびちびと。別件の予定もあるので、更新したりしなかったりするかもしれない。