なんか皆で温泉なんですけど
「クーちゃん気をつけてね、足元。危険だから。」
『はーい!ですわ!』
「クロも一緒だとよかったんだけど、流石に断られちゃったね。」
『なんでクロは駄目なんですの?』
「一応、ホテルの人にも黒猫ってことになってるからね。本当は客室もペットは駄目なんだよ。テイムしたモンスターも駄目だって。」
『ってことは、本当は私も駄目なのですかね?』
「まぁ、いいんじゃない?」
雨岩温泉ホテルには、その名前の通り大浴場に温泉がある。本来ならば温泉に入ってのんびりしている場合じゃないんだけど、正直他にやる事が無い。ホテルの周囲は西部支部の探索者の人が臨時で見張ってるし、ダンジョン警察の人も出入りしてるので、ホテル内は比較的安全だ。なので、まぁ、ぼーっと部屋ですごしてたわけだけど、こうして温泉に入りにきた訳だ。
観光シーズンでもないし、昼間なので、人もそんなに多くない。というか、何なら脱衣所には人の気配がない。もしかすると、温泉の方にも誰もいないかもしれない。…うん、案の定人影がない。ゆったりと温泉に浸かっていられそうだ。
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クーちゃんに温泉に入るにあたって、いろいろと注意を説明する。そういえば、深海育ちだからクーちゃんには、温泉とかお風呂っていう概念がなかった。存在自体は知ってるみたいたけど、そうだね。深海では入りようが無いね。
ちゃんとかけ湯をすることや、お風呂に入る前にシャワーを流すこと、体を洗うことを説明する。深海ではそんな事しなくても、海に入ってるだけで問題無いみたいだ。そもそも深海には真水がなかったか…いや、水魔法でいいのかな?うーん。ちょっとよくわからないや。
なにはともかく、久々の温泉である。しかも露天風呂まであるよ。前はやっぱり無かったよね?あ、案内にちゃんと新しくできたって書いてあるや。ゆったりと湯船に浸かると、そこから、青い海と、青い空、そして、海の向こうにある半島が見える。こういうのを大パノラマっていうんだよね。素晴らしい景色を、クーちゃんと一緒に堪能する。
…にしても、クーちゃん、人型の時だけど、やっぱ私に似てるないろいろと。
そんなことを考えていたら、扉を開閉する音が後ろから聞こえてくる、誰かが入りに来たみたいだ。横になりながら湯船につかっていたので、顔をこう上にあげると、…でっかいのが見える。
「理恵ちゃーんー。またなにしたのー。ねー。」
…霧島さんだ。あ、隣に岬さんもいる。あれ?岬さん仕事があるって言って、出ていかなかったっけ?
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「今日の仕事は、お兄さんとの打ち合わせいれたから、こっちで会議をね?」
「そうですか。」
露天風呂に、霧島さん、岬さん、私、クーちゃんの四人ではいって談笑している。岬さんはたぶんこれ、仕事さぼって入りに来てるけど、まぁうん。岬さんならいいだろう。いつもいくつも仕事抱えてる人だし、たまにはサボっても。
「まぁ、こういう機会じゃないとゆっくり温泉もはいれないし。」
認めちゃったよ。いいのかそれで。
『気持ちいいですの~…。』
クーちゃんは、温かいお湯につかってとけている。いままでこういう機会なかったっぽいし、かなりリラックスしている。
「そういえば、霧島さんは何をしに?」
「依頼を受けて、中川を連れて来たのとー。あと金田と加藤もー、湯治名目で連行してきたー。それから堺もー。あいつ落ち込みすぎー。気分転換しろー。」
「あぁ、なるほど。」
つまり、私をだしにして皆で温泉に入りに来たと。
「本当はー、一泊しないとここの温泉はいれないからー。宿泊者しか使えないんだよねー。温泉ー。そもそもこのホテルがー、宿泊オンリー。」
「あ、そういうことなんですね。」
「というわけで、私の部屋ー。隣だからよろしくねー。」
ちゃっかりしてるなぁ。
「あと、宿泊費ー。西部支部でだしといてねー。」
「私は仕事ですし、中川さんはこちらからの指名依頼だから西部支部持ちです。加藤さんと金田さんの湯治も認めましょう。堺さんのメンタルケアもまぁ厳しいですが、名目は立ちますので全額は無理でも補助はだせます。ですが、霧島さんは自腹ですよ?」
「確かに岬さんからー。私達に護衛依頼はでてないけどー、私達二人はー、風見さんの依頼ー。だから大丈夫ー。」
「…依頼内容は?」
「岬さんがサボってないかー。報告ー。温泉から出たらー。報告しちゃおっかなー。」
「…これは、独り言なんですけど、夜にお部屋で日本酒の飲み比べをしようと思ってるんですけど、一人で飲むには量が多いんですよね。」
「あー、報告はー、明日にしよっかなー。そしてお酒飲んだら忘れちゃいそうだなー。」
それでいいのか。西部支部。
「あ、霧島さん。他の皆は?佐藤さんと鈴木さんに、藤井さんと西園寺さんの名前が出てないですけど?」
「あー、理恵ちゃんー。その4人はーお留守番ー。というかー仕事ー。内容は秘密ー。そうじゃなきゃ連れてきたー。失敗したけどあんだけしんどい任務の後だしー。みんなで休もうー。」
…まぁ、たまにはこういうのもいいか。
結城「私も…行きたかった…。」
風見「駄目ですよ結城さん。貴女まで抜けられたら、仕事がまわりません。」
結城「風見さんの鬼!悪魔!」
別作あり〼
触手 in クーラーボックス(仮)
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青空設置しました。
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