愛用のクッションがどうもなにか変…な気がする
―してしまった。
―獲得してしまった。
―EXPを獲得してしまった。
それも一回、クッションにダイブしただけで。40EXPも獲得してしまった。ファンタジーやメルヘンであってほしい。いや、これファンタジーだったわ。このクッションダイブを25回も行えば、1,000のEXP。すなわち、高校生になるまで15年もかかって獲得できるEXPが手に入ってしまう事になる。ようするにチートだ。チートアイテム。
この『クッションを潰す』で獲得できる『40EXP』は、どう考えても因果関係がおかしい。労力と成果が見合っていない。いや、見合ってなさすぎる。明らかなERROR。『クッションを潰す』と『EXPを獲得できる』の繋がりが異常すぎる。逆に言えば、この『因果関係』は間違っている。間違っていなければならない。否定されなければならない。そうでなければならない。
つまり二回目の試行結果も何らかの偶然である。偶然でなければならない。
<<バフ>>
<<ばちゅん>>
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STATUS / ●NOTICE
>新規通知
◯40EXPを獲得しました。
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●STATUS / NOTICE
LV:40(EXP 985→1025/4000)
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そして三回目の試行結果がこうである。
「そうはならんやろ!」
「なっとる!やろがい!」
『だが、現実は非情である。』という言葉があるように、私はこう言おう『ファンタジーは非情である。』と。なんらかの偶然であってほしかったが、三回もダイブした結果、このクッションからEXPを得ているのは、ほぼほぼに間違いがない。完全に確定させるには、更に回数の検証を行わなければならないであろうが、暫定結果として、チートアイテムであると断定をせざるを得ない。
では、このクッションはなんだ?いつも枕にもしているし、下敷きにもしている。5年も使っている愛用のジェルクッション。このジェルクッションが特異なアイテムであることは、想像に難くない。つまり、このクッションと同様の存在は世界にめったに存在しないだろう。そもそも存在したのであれば、皆が使っている。そもそもこれは、家族が買ってきたクッションのハズだ。つまりは市販品でなければならない。だが、こんなクッションが市販品のハズがない。
ブランドは?メーカーは?このクッションはどこで売られていた?さすがにもう数年前のことを確認するのは難しいだろう。クッションのようなものになると、ブランドやメーカーを示すタグぐらいはついているはずだ。だがこのクッションにはついていない。最初からついてなかったのか、それとも外してしまったのかはもはや定かではない。が、たぶん前者だろう。
じゃぁ見た目はというと、やや大きめでぱっと見にはホームセンターなんかに行けば、よく売っている普通のクッションっていう感じだ。布地はすべすべとしていて、触っていて気持ちがいい。…いや待て、このクッションつなぎ目が無い?そういえばこのクッションの中身って見たことがないかもしれない。いや、そもそもこのクッションって洗ったことあったっけ?あれ?
ファスナーもない。つなぎ目もない。だから触っていて気持ちが良くて、座り心地もいいし、枕にしても気持ちがいい。使ってる分には普通だけど、普通じゃない…。
愛用のクッションが どうも なにか 変 な 気が する。
あれ?そもそもこのクッションって、本当に買ってきたものだったっけ…?少なくとも私ではない。家族が買ってきたハズ…本当に?家族の誰?ママ?それともお父さん?思い出そうとしているが、どうしても思い出せない。
そもそもうちでクッションを使うのって、私ぐらいだ。他にもあるクッションは、ほとんど自分でホームセンターや100円ショップで買ってきたやつだ。もちもちクッションとか、いろんなクッションがある。だから、それらのクッションはちゃんとどこで買ったものか把握している。にも関わらず、このクッションだけ、『誰かがどこかで買ってきた』という認識でずっと使い続けてきた。
こうやって、『認識』したうえで見ていると、なんだろう、なんか違和感があるような…気が…する…。けど…。何が…変…なんだろう。普通のクッションだよ。
『―そんな訳無い。これが普通のクッションの訳が無い。』
もうさァ!無理だよォ!気温差に体がさァ!ついていかないんだからさァ!一気に暖かくなったくせに、寒くなるとかさァ!もっとさァ!手心とかさァ!段階とかさァ!もっとさァ!!




