なんか珍しくお兄ちゃんがいるんですけど
「ただいまー。」
「おかえりなさい。」
『おかえりですのー!』
『おかえり、理恵。』
ちゃんと無事に帰ってきたよ。学校に行くだけで帰ってこない訳はないんだけど、病院に行っただけで帰ってこなかった私には、言い返す権利は無い。最近では毎日お母さんが、私が帰宅する度に、玄関まで迎えに来てくれる。「危ない事はできないな。」とは思いつつ、危険なダンジョン探索にこれからも挑まなければならない事に、若干の後ろめたさを感じる。
それから、クロとクーちゃんもお母さんと一緒に玄関まで来てくれる。クロからは、ちゃんとお帰りなさいのスリスリもある。ほんの数日で、本当に家が賑やかになったなと感じる。ほんの少し前までは、お母さんぐらいしか、出迎えてくれる人がいなかったからね。
お父さんはこの時間仕事だし、お兄ちゃんはよくわからない。仕事してたりしてなかったり、部屋にいるかと思えば、しばらく不在にする事もある。ちゃんと仕事はしてるみたいなんだけど、何をしてるのか知らないんだよね。前まではよくわかんなかったけど、探索者になっていろいろ巻き込まれた今なら、多少分かる。たぶんなにかしらの守秘義務があるんだろうというのまでは、予想がついてる。ただ、無理に聞く必要はないだろう。
そう考えながらリビングに行くと、なんと珍しくお兄ちゃんがいた。
「おっ。おかえり。そうか、高校はこの時間か。おもったより早いな。」
「ただいま。珍しいね?お兄ちゃんがリビングにいるなんて。」
「まぁな。まぁ隣の部屋が、お前の後ろにいる居候で、煩すぎるってのもあるが。」
『ですのー?』
なるほど、クーちゃんが今日一日煩かったのか。今日はお兄ちゃん、一日家にいたんだね。そんで私の部屋で騒ぐクーちゃんにたまらず、リビングに降りてきたと。…そういえば、クーちゃんの居候決定する時、お兄ちゃんだけいなかったね。
「まぁ、話は一通り聞いてる。このスキュラ娘の事も、黒猫のクロの事もな。」
「あ、知ってるんだ。」
「まぁな。まぁ、だが、あまり母さんや父さんに心配かけるんじゃないぞ。」
「ぐっ…。ごめんて。」
「入院した時、母さん、泣いてたんだからな?」
「…うん。」
「まぁまぁ、それ以上はやめときなさい。忍。」
「わかってるよ。母さん。」
久しぶりに会った兄から、お説教を食らう。今更感が無いことは無いが、なんども言うように、心配をかけたのは私だしね。お母さんも同じ気持ちだろうに、お兄ちゃんを止めてくれる。まぁ、一度お兄ちゃんとはちゃんと話をしておくべきかな。
「ま、説教がしたいわけじゃない。俺も人の事言えないしな。ダンジョンに潜ることも反対しないし。むしろ、お前がやりたいならば、どんどんやれとすら思ってる。この蜂蜜のスイーツも、お前が探索者やってるからこそ、持ち帰ってきてくれたものだしな。」
おや?意外だな?流石に反対してくるかと思ってた。それにダンジョンに入ることには反対しないんだ。そう言いながら、お兄ちゃんは私が貰って帰ってきた、蜂蜜のスイーツを食べ始める。あ、それは、蜂蜜プリンだね。っていうか、お兄ちゃん。もしかして甘いもの好き?
「うん。」
「まぁただ、今日は少し聞きたい事があるんだ。まぁ座ってくれ。お茶もあるぞ。」
ん?これまた珍しいな。お兄ちゃんが私に話があるなんて。私は椅子に座って、出されたお茶に口をつける。お兄ちゃんはプリンを食べながら、話を進める。あ、クロ、お兄ちゃんのプリンに手を出したらだめだよ。気になるのはわかるけど。
お兄ちゃんは、蜂蜜プリンが気になって机の上に上ってきた、クロの下顎を撫でながら、プリンを食べ進める。クロはごろごろいいながら、尻尾を振っている。これはあとで、蜂蜜プリンをあげないと駄目かな。まぁ、見てるだけだとちょっと微笑ましい。
「で、リビングにいたのは、まぁ煩かったのも事実だが、今日は俺は、お前を待ってたんだ。」
「そうなの?」
「あぁ。それで、繰り返しになるが、聞きたいことが有る。」
「うん。」
「まぁこれは、憶測なのと、確信があるわけじゃないし。」
「うん?」
「言いたくないことは言いたくないで構わないんだけど。」
「…?」
「…母さんは、うん。キッチンだな。」
「お兄ちゃん?」
「なんでお前、神話生物なんて拾ってきた?」
私は飲んでいたお茶を盛大に吹き出した。
別作あり〼
触手 in クーラーボックス(仮)
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青空設置しました。
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