なんか我が家が賑やかなんですけど
その日は一日、奏と京ちゃんと利香ちゃんにもみくちゃにされた。この間と違うのは、学食の席に白鳥先輩と赤池先輩も加わったことだ。先輩二人とは、自然にダンジョンの話をしたり、学校の話をしたりするようになった。あれだけバチバチ殴り合っていた、京ちゃんと利香ちゃんとも打ち解けたようだ。
何があったかの話については、事前に西部支部と話しあった内容をベースに、話してもいいと言われている範囲で話しておいた。まぁそこそこ違和感はあるけど、矛盾はないストーリーになっているはずだ。それはそれとして、利香ちゃんには怒られたが。
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家に帰ると、クロが玄関まで出迎えに来てくれた。ゴロゴロと顔を擦り付けてくる様子は、そのまま黒猫にしか見えない。既に家でのペットポジションもきちんと確立したようで、いつのまにか、猫じゃらしや猫用の餌皿が用意されている。…猫用のトイレも用意されているけど、どうなんだろう。使うのかな?あれ?爪とぎまである?おかしいな、ちゃんとダンジョンのモンスターだって言っておいたんだけど…。
「おかえりなさい。無事に帰ってきてくれて嬉しいわ。」
『お帰り理恵。』
お母さんまで家事を中断して、私を出迎えにてくれる。ちなみに、クロは念話だ。
「お母さん、流石に学校にいってきただけだよ。」
「病院に行っただけで、数日家を開ける娘よ。当然でしょ。」
そう言われると、何も言い返せない。いや、私も自分から無断外泊したかった訳じゃないんだけどね。結果的に拉致られてそうなっただけだし。…まぁ、お母さんから見れば、前回は1週間入院、今回は数日行方不明だった訳だし、気が気でなかっただろう。甘んじて叱られるしかない。
「…ところで、なんかリビングが様変わりしてるんだけど。いつのまに猫用品なんて準備したの?」
「必要でしょう。それに、実はお母さん、前から猫を飼いたかったのよ。それでね、思い切って揃えちゃった☆」
意外だ。てっきり動物嫌いだと思っていたのに。猫を飼いたかったのか。まぁホームセンターに行けば売ってるけど。…お父さん仕事だよね?お母さんだけでこれ揃えてきたの?っていうか語尾がやけにキラキラしてる。そんなに嬉しかったのかお母さん。まじかー。
「私が手伝ったのよ黒川さん。」
「…あれ?岬さん?」
リビングの奥から出てきたのは、意外や意外、西部支部の岬さんだった。本来ならば、今岬さんは、『海の貴婦人ダンジョン』のスタンピードの後始末で忙しいはず。それなのに、なんで私の家に?っていうか岬さんとお母さんでホームセンター行ったの?なんで??
「テイムされてるとは言え、モンスターを野放しにしておけないので。テイムされている、モンスターの登録証明書の発行ができたのと、様々な問題の押し付…じゃなかった。解決に黒川さんにも用事があるので、お邪魔させていただきました。はい、これがクロの登録証明よ。」
もう、厄介事を持ってきた事を隠す気がないね岬さん。まぁ、いくつかの厄介事は私が発端だし、しょうが無いかな。そんな事を考えながら岬さんの顔を見ると。「あなたのせいで仕事が増えたんだから、責任とりなさいよ。」とでも言いたげな顔をしている。いや、真相は岬さんだけが知るんだけど。
「ちなみに、いくつかの猫用品については、モンスターを飼育しているとバレないように、カモフラージュも兼ねているわ。猫を飼っているのに、猫用品が一式ないのは不自然でしょう?」
そう言われればそうだ。猫がいるのに、猫用品がなかったらたしかに怪しまれるね。あぁそれで岬さんも噛んでるのか。たぶん一部の代金は、西部支部からもでてるなコレ。まぁクロは神話生物だし、西部支部の方でも気になるよなそりゃ。これはクロのこともレポートで報告しろって言われそうだな。…よく考えたら当たり前か。
『理恵!、この猫じゃらし!とても楽しいですよ理恵!』
本来ニャゴスであるから、その必要がないはずのクロだが、私が与えてしまった『猫』の特性によって、猫の本能には逆らえないようだ。お母さんがふりふりしている猫じゃらしに、徐々にエキサイトし始めている。ちなみに、お母さんには神話生物であることは、当然、言ってない。そのため、念話ができることは秘密にしている。
今後のクロのカモフラージュの事を考えているが、流石に食事はキャットフードではなくて、いろいろと与える必要がある。また、本人が蜂蜜を特に希望しているので、もっぱら蜂蜜を上げることになるだろう。だが、そうなると流石にキャットフードを無駄に買う必要はない。だが、まったくキャットフードを買わないというのも、カモフラージュ的にはNGだろう。そこら辺も岬さんと相談だな。もしかするとなんか案があるかもしれない。後で確認しよう。
「で、それとは別に、当然、本題があるのよね。コレばかりは、理恵ちゃんだけじゃなくて、理恵ちゃんのご家族にもOKしてもらわなきゃいけないんだけど。」
「えっ?どういうことです?」
「理恵ちゃん数少ないテイマーじゃない?」
「そうですね。テイマーです。」
「引き取って欲しいモンスターがいるのよ。」
あぁ、そういうことか。つまりペットを増やせと。確かにテイマーを持っている私にしか頼めない問題だね。だけど、流石にお母さんがOKしてくれるかな?
「あー、そういうことですか。確かにクロは両親からもOKしてもらえましたけど、増やすとなると家族にも確認取らないとですね。」
「そうなのよ。というわけで、この娘なんだけど。」
『ですのー!』
ちょっと待て!クーちゃんかい!っていうか、貴方、『ですのー!』は鳴き声じゃないでしょ!なんでちょっと鳴き声みたいになってるのさ!ねぇ!
別作あり〼
触手 in クーラーボックス(仮)
https://ncode.syosetu.com/n1200kj/
青空設置しました。
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