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第二部 エピローグ1 瓶詰めの■■と逃げ足が早い■■

エピローグ!

 時間はちょっと巻き戻り。木花が、ヒュドラの現実態を丸呑みした、少し後ぐらいにまで遡る。


 『なぜ…人間ごときに…ここまで食べられてしまったのか。その上、瓶に詰められるなど…。』

 「あら、まだ生きてますね。」


 あれだけ暴れまわったヒュドラは、千種と木花によって瓶詰めにされていた。このまま持ち帰るつもりである。千種としては貴重な『特異点案件』のサンプルとして、そして木花としては『まだ食べられる』食料としての思惑がある。ここまで力を削いでしまえば、あとはどうにでもなるだろうという判断もある。


 「というわけで、現地の救助対象の探索者で間違いないですよね?このまま、コレ(ヒュドラ)は、うちで持ち帰っても大丈夫ですかね?」

 「…こんな事を言えた身分ではないのは重々承知ですが、できれば渡していただけると助かります。うちとしても報告をしなければならないので。」


 千種からの提案に、佐藤が返答する。佐藤としては、ヒュドラ自体はどうでもいいのだが、持ち帰られるよりは、今ここで確実に潰しておいた方が良いというのが本音である。


 「こっちとしては、今回の騒動(スタンピード)の原因を討伐するのも契約のうちなので。持ち帰りたいんですよねー。名古屋に。」

 「…。」

 「あと、そこの特異点案件、二人もいますね?そこの倒れてるスキュラ娘も含めて、見なかった事にしますけど、どうでしょうか?呑んでいただけますよね?」

 『おや、戦わないんですか?てっきり、問答無用で向かってくるかと。』

 「いやー、一応救出対象の探索者守ってたみたいですし。こっちも、もう帰りたいんで。なら、もう、無理に戦わなくてもいいかなって。コレさえ持ち帰れれば。」

 「…わかりました。」

 「え~!?食べないの~!?」

 「食べちゃ駄目です。」


 ナイアの事はどうでもいいし、むしろ食べてくれたほうがありがたいが、千種の言う二人の中には、明らかに黒川が含まれている。そして、化け物(木花)の方は、黒川まで食べる気満々のようだ。ヒュドラの持ち帰りで、黒川が見逃されるのであれば、もはや呑まざるを得ない。


 「…どうぞ、お好きに。」

 「では、この瓶はお持ち帰りさせてもらいますね。ありがとうございます。」

 「(コレが、食えない女ってやつか。まいったな。)」


******************************


 「「龍崎さん!」」

 「…おう、白鳥と赤池か。死んだかと思ったぜ。胸を貫かれたかと思ったんだがな。」

 『えぇ、私が幻影魔法で守って無ければ死んでましたよ?』

 「なるほどねぇ。悪運強いってやつかね。」


 龍崎は生きていた。『近距離閃光魔法(スタナー)』をヒュドラに決めたことで、一時的にヒュドラの行動を封じた龍崎だが、その直後、ヒュドラの触手で貫かれたのだ。だが実際には、直前でナイアが幻影と差し替えていた。ヒュドラが貫いたのは、龍崎の姿を移した岩の塊だ。


 『近距離閃光魔法(スタナー)』は中級探索者なら誰でも使えるが、龍崎は、この一点を強力に磨き上げていた。相手の目眩ましの効果だけではなく、一定時間、相手の行動を阻害する。逃げに使っても、狩りに使っても良い。特に、この深海では、暗闇の中で発せられる強力な光は、上位モンスターですら、その衝撃で動きが制限される。通常の探索者が使うよりも、遥かに眩しいその光は、実際、僅かな時間ではあったが、ヒュドラの動きを制限した。それがなければ、木花と千種が間に合ったかは疑わしい。


 「さーて、この気絶してる奴らを、引きずって帰らないとなぁ。久々に酷い目に会ったぜ…。白鳥と赤池も手伝えー。」

 「「はい!!」」

 「(また生き延びた上に、ちゃんと佐藤から話を聞いていないが、どうやら厄介事に関わってしまったらしい。地上に帰還すれば、西部支部のお偉方に呼びだされるだろうし、念入りに秘密保持契約も書かせられるだろう。まず、逃げさせてはくれないだろうなぁ。…引退はもう少し先になりそうだな。)」


******************************


 「金田ー。調子はー?」

 「気持ち悪いぐらい、何事もなかったかのようだな。」

 「…なるほどー。ちゃんと治療はやってくれたみたいねー。ただし、帰ったら検査ねー。」

 「わかってる。そうじゃないと気持ち悪くてやってられないぜ。クソが。」

 

 ナイアによって治療された金田は、まるで何事も無かったかのように、傷が塞がっていた。ナイアが金田を治療した理由は、一応、黒川を守るためだろうが、なんとなくしっくり来ない。そのため、霧島は、帰還後に、金田を徹底的に検査することを決める。というよりも、治りすぎだ。今すぐ、暴れまわっても問題ないぐらいには、金田の治療は完了している。


 『そんなに怪しまなくても大丈夫ですが?』

 「直してもらったのはありがたいが、信じられないんでね。」

 『まぁ、好きにして下さい。私は、あの化け物(木花)が我慢しきれなくなる前に、逃げますので。』

 「おや、てっきり、こっちを襲ってくるかと思ってたんだが?」

 『まぁそれも一応計画には織り込んでましたが…。ヒュドラを食べて、上位存在になりつつある()()と正面から戦うのは正直ごめんなんですよ。たぶん上には十文字もいるでしょうし、黒川理恵を強奪して逃げるのは、絶対に無理ですね。というわけで、大人しく退きます。さようなら。』

 「…正直だねー。まぁこっちも、この上ナイアと戦うのはゴメンだったし、これでいいかなー。」

作者誕生日です。(‘、3_ヽ)_


別作あり〼

触手 in クーラーボックス(仮)

https://ncode.syosetu.com/n1200kj/


青空設置しました。

https://bsky.app/profile/sternjp.bsky.social

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― 新着の感想 ―
誕生日おめでとうございます。 いつも楽しく読ませてもらっています。暑さは引いてきたことと思いますが、体調にはお気をつけてくださいね。では。
西部じゃなく西武だと東京都か埼玉県の西部(つまり、武蔵の西側一帯)になっちゃいます ここってたしか、石川県ですよね? 富山県でしたっけ?
こんにちは。お誕生日おめでとうございます(^_^) 今回は以前と比較したら、ガチの死にかけバトルでしたなぁ。今回よりヤバい奴ともいつかはエンカウントするんやろなぁ…。
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