なんか知ってる天井なんですけど
海の貴婦人攻防戦完!
次回、エピローグ。
「…知ってる天井だ。」
どこかのアニメでありそうなセリフが、自分の口から漏れる。知らない天井ではなくて、知ってる天井が見える。まぁなんせ、この部屋には一週間も入院してたものね。そりゃぁ覚えてるよ。っていうか、なんでここで寝てるんだっけ?
『起きましたか理恵?』
そんな事を考えていたら、額をてしてしと喋る黒猫に叩かれる。肉球がぷにぷにぺちぺちと、気持ち良いかもしれない。まぁ正体は黒猫じゃなくて、ニャゴスなんだけど。さて、クロがいるということは…うん?なんでこの病室に運ばれたんだっけ私?
「あっ、うん。起きたけど。確か私達、海の貴婦人ダンジョンにいなかったっけ?なんで古城病院にいるの?」
『記憶が混濁してます?今は夜の11時ですけど、誰か人を呼んだ方がいいですか?』
「…そうか、夜なんだ。起きてる人がいればでいいので呼んで――」
「起きてますよ。目が覚めましたか黒川さん。」
「夜中ですが、おはようございます。黒川さん。」
病室の扉を開けて、白鳥先輩と赤池先輩が入ってくる。…なんでこの二人が?うーん。とりあえず、記憶をたどる。とりあえずリーリエにいたことは覚えてる。それから、洞窟に行って、結局私がさらわれたのが拉致で、そうだ、なんかひどく眠くなって…。それからどうしたっけ?
「催眠の影響と、魂状態での戦闘の影響で記憶が混濁してますね。霧島お姉様の言う通りです。」
「はい、お水です。黒川さん。」
…催眠?魂状態での戦闘?うーん。まずいな。思い出せない。とりあえず、白鳥先輩が渡してくれた水を飲む。今気がついたけど、喉がからからだったみたいだ。…ん?あれ?そういえば私水着きてなかったっけ?あー、誰かに着替えさせられたのか。恥ずかしいな。
「…何があったか、簡単に説明してもらえたりしますか?」
「簡単に説明すると、黒川さんは、化け物に眠らされて、クロ曰く、アストラル体の状態で戦ってたんですよ。」
あ、うん。駄目だ。聞いても欠片も分かんないや。あとで詳しい話を聞くか、ちゃんと思い出した方が良いなコレ。っていうか、アストラル体ってなんなんだろう。いや、オカルト話で聞いたことはあるけど、そんなもの存在するわけないし。…いや、双子はレイス系だったし、幽霊扱いだなあれ。ってことは、本当にアストラル体で戦ってたのかも?どうしてそうなった?
…そう言われると、なんか思い出してきたかも。灰色のぶよぶよに、触手のニョキニョキ、操られた堺さんと、全力で撃った『アイシクル・パニッシャー・パレード』の感覚。うーん、なんでこんな大冒険してるんだろう。私、仮免許の駆け出し探索者なんだよな。それに、リーリエやクーちゃんってどうなったっけ?ナイアもいたよね?それに確か、倒しきれなかったはずだし、あっそういえば、『■■■■■の鱗』ってどうなったんだろう。パッケージングで強引に引き剥がしたあと、私の手の中に…手の…。
…ある。感覚で分かる。無意識だけどしっかりと握ってたらしい。うーん。ぬめぬめしてるし、このまま持ってるのは嫌だな。…いやまて、なんで持ってる?着替えもさせられたんだから、普通は取り上げるはずだし、なにより、地上に持ち出していいものなのかコレ?不味くない?なんで誰もこれを私から取り上げなかったんだ?…おかしい、絶対おかしい!そうなれば、まずはクロに聞いてみるべきかな。
「クロ、この私の手の中にあるものって、どうすればいい?」
『…手の中のもの?理恵?なにかありますか?』
…もしかして見えてないのか。あ、いや、まて、覚えがあるぞ。あの双子の『白濁した宝玉』だ。あれは、私にしか掴めなかった。これはもしかするとそのパターンで、今回は「私にしか見えない」のかも知れない。後は一応、クーちゃんにも確認してみるか。クーちゃんに見えなければ、その推測であってそうだ。だが、まぁ、確認するのは明日かな。
「…いや、いいや。勘違い。とりあえず…もう少し眠るね。」
『えぇ、おやすみなさい理恵。』
「おやすみ、黒川さん。」
「(…また、人に言えない事ばかり、増えていくなぁ。)」
別作あり〼
触手 in クーラーボックス(仮)
https://ncode.syosetu.com/n1200kj/
青空設置しました。
https://bsky.app/profile/sternjp.bsky.social