木花の今日の昼ご飯
明日誕生日です(‘、3_ヽ)_
「どうせ始末書物だし、たまにはストレス解消に暴れよう!」と思っていたにも関わらず、あの女性型モンスターからいくつも生えていた触手が、唐突に音もなくすべて消失した。どうやら、私が暴れる必要は無くなったらしい。これじゃ腐食魔術の使い損だ。
そして当然、男性を貫いていた触手も綺麗に消失した。まるで、そんなものはもとから無かったかのように…だ。私の腐食魔術で消失したわけでも、暴食魔術で食べられたわけでもない。また、ソレと同時に、明らかにあの女性型モンスターから感じるプレッシャーが格段に落ちる。
『馬鹿な…どうして…そんな馬鹿なことが!』
非常に狼狽えているし、理由が気になるところだが、明らかな隙だ。これを見逃すわけがない。…そもそもこれだけプレッシャーが落ちれば、あとは私の腐食魔術で押し切れる。…いや、このまま木花さんの暴食魔術で食べて貰ったほうがいいか。散々お預けさせた挙げ句、「食べちゃってください!」って許可を出した後なので、たぶんもう辛抱たまらないはずだ。下手に止めるよりも、このまま食べさせた方が、結果的に周りへの被害が少なく済むだろう。
「木花さ―」
「いただきまーす!」
「(まぁでしょうね。)」
木花さんに声を掛けるが、私が声を掛けるよりも前に、既に動いていた。もう止める術はないだろう。案の定次の瞬間には、女性型モンスターの全身は木花さんの暴食魔術で丸ごと覆われていた。このまま丸呑みするつもりだろう。その方が周りにも被害が出ない。というか、こういうときにはちゃんと周りに配慮できるんですね貴女。普段からもっと周りに配慮してくれればもっと楽なのに。特に私とか。
『これぐらい!問題は無い…無いはずなのに!なぜだ!力が出ない!』
何事かを喚きながらも、必死に木花さんの暴食魔術に抵抗しているが、もはや手遅れだ。十分規格外で桁外れの力を持っているが、それにぶつけるためのS級冒険者だ。先ほどよりも遥かにパワーダウンした時点で、もはや勝てる見込みは無い。あとは文字通り消化試合だ。
『やめ…ふざける…な…■■よりも…ありえ…こんな…長年…』
次々に影が重なっていき、女性型モンスターを覆い隠す。影と影の隙間からときおり、声が漏れ出ているが、次第に聞こえなくなっていく。やがて、何も聞こえなくなったかと思うと<<バリバリ>>と咀嚼音が、影の塊から響いていくる。
やがて、その音もなくなり、影の塊はぱらぱらとほどけていく。ほどけていった影の中には、何も無かった。初めから、何もなかったかのように。虚無だけがそこにあった。
「ごちそうさまでした!お腹いっぱい!」
おや?木花さんがお腹いっぱいになるのは初めてじゃないですか?少なくとも今まで監視してて、見たことがありません。あのモンスターについての詳細な報告を求められそうですが、もう木花さんのお腹の中ですし、どうやって報告したものですかね。
「全部食べちゃいました?」
「そう言うと思って、ちょっとだけ残しておいたよー。」
そう言うと、木花さんの影が灰色のブヨブヨを、ひと掬いだけ私のもとに運んでくる。いいですね。瓶詰めして持ち帰りましょう。そうすれば本部でなんか分かるかもしれませんし。それに、木花さんが、これだけ周りに配慮できるのも珍しいですね。もしかすると、満腹になると理性が戻るんでしょうか?もしその仮定があってるなら、これ、うまく報告すれば、始末書回避できそうですね。
等しく全てがただの食事
別作あり〼
触手 in クーラーボックス(仮)
https://ncode.syosetu.com/n1200kj/
青空設置しました。
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