化け物には化け物を
ほしいものリストからお紅茶を頂きました。
わーい!これで捗るぞ!って元気だしたらそのまま、33℃→24℃→29℃とかいう謎の気温変化を喰らいました。どうして。
「なにこいつ。こんなところにいていい強さじゃないんだけど。」
「なにより、数が多いですし、まだ貴方が一体も食べられていないのは珍しいですね。」
「言ってるでしょ、こんなところにいていい強さじゃないって。なんとかならなくはないけど、45階層あたりの敵の強さじゃないかも。」
「手伝いますか?」
「まだ大丈夫かな~?強いぶん、齧れれば魔力も経験値も沢山手に入るし。食べ甲斐はあるよ?味はともかく。」
「食べ甲斐と味ですか。」
「食べてみる?」
「いいえ。私は遠慮しておきます。」
リーリエの近くでは、木花と蠢く触手の塊たちが衝突を繰り広げていた。蠢く触手の塊は、一体や二体ではない。木花の『暴食魔術』でも、やすやすと食べることが出来ないが、食べられない訳では無い。そんな個体が、それこそ無数に存在している。
こんなふうに緊張感がない会話をしているが、実際には触手の攻撃が地面をえぐり、さらに木花の暴食魔術がそのえぐれた地面をさらにえぐる。敵の触手と木花の影がぶつかるたびに、爆発したかのような轟音が響き、衝撃波が周辺地形を破壊する。その衝撃はさながら、高速で走る大型トラック同士の正面衝突である。そのたびに、触手の方はほんの少し齧られ、影は少し小さくなる。
触手が放つ魔術の数々も、木花の影が喰らい、木花もまた通常魔術を返す。傍目には分からないかもしれないが、先程から金属魔術Vや氷魔術Vといった、魔術攻撃の無数の釣瓶打ちが行われている。そのたびに、木花の魔力はへっているのだが、減った分、触手を齧っては回復している。
「やっかいかも~。負けることはないけど、数が多すぎる。いわゆる飽和攻撃って奴?対多数は別に問題ないんだけど、持久戦って好きじゃないかも。さっさと食べて終わらせたいよ~。」
「本気出さないとまずいですか?」
「それほどではないかも?」
「なら、我慢してください。持久戦ならばなおさらです。」
「…は~い。」
「貴方が暴走したら面倒くさいので、最悪、私も参戦しますけど、今は一人でなんとかしてください。」
木花は実際、これぐらいならば余裕である。ただ、『食べて終わり!』で戦闘を終わらせたい木花にとって、食べにくい相手との持久戦が、性格上好ましくないだけだ。『モーめんどくさい!』とキレた場合、暴走するかもしれないからだ。故に千種も、最悪自分が対処する事を検討し始める。
何度も言うが、千種の役割は『木花の監視』である。故に千種が戦闘に参加することは、基本的には無い。そもそも木花がいれば、戦闘はどうにでもなるというのもあるが、監視が任務の千種は直接介入を必要性がない場合は禁じられている。ただし、今回のように、『木花が暴走するかもしれない場合』は、十分その『必要性がある場合』の範疇だ。
――S級探索者がいるのに、付き添いが参戦する意味があるのか?
「…それでも駄目なら、久々に私のユニークを行使しますかね。報告書書くのがめんどいなぁ。」
******************************
『ちっ、確かに少々暴れすぎたとはいえ、なんでこんな化け物まで降りてきますかね。どれだけ時間をかけて準備してきたと…。』
『可能ならあの化け物は、分体で封じ込めてしまいたいですけど、難しそうですね。…リーリエの中には、ティアラも黒川理恵もいませんでしたし、ダガンとイドラの方にも感づかれましたね。』
『ただ、それだけでは説明つきそうにない動きもあります。こっちの■■体系の■も介入してそうです。実にめんどくさい。』
『長い事…長い事待ったのに、こんなイレギュラーに力を使いたくなかったんですが。仕方が有りません。まぁ、ダガンたちは、私の狙いがリーリエとティアラだと、誤認してくれてはいるみたいなので、それはよしとしましょうか。』
『まぁどうせ、あの鱗を隠してあった、洞窟あたりに逃がしたはずです。流石にあの洞窟には分体で入るのは無理ですので、私が直接出向くしかありませんね。』
別作あり〼
触手 in クーラーボックス(仮)
https://ncode.syosetu.com/n1200kj/
青空設置しました。
https://bsky.app/profile/sternjp.bsky.social




