やっぱりなんか初期装備が心許ないんですけど…
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STATUS / ●NOTICE
>新規通知
◯特に有りません
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いくらか素振りを行ったあと、ステータス画面をチェックしてみた。前回は勉強をしただけで経験値とINTが上昇していたので、今回も何か影響があるかもと思っていた。しかし、何もなかったようだ。それとも素振りの方法が悪かったのかも?棍棒も思ったよりも重たくなかったし、そんなにトレーニングになってないのかもしれない。…疲れたし、今日はもう寝よう。
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7限目の補習だが、集団探索がくるまでは、簿記と探索者基礎の日替わりである。つまり、本日の7限目は探索者基礎ということになる。先週の一週間で、一通りのオリエンテーションと簡易な説明が終わったので、本日からは本格的な授業に入っていく。探索者基礎で学ぶ内容は、大別して2つだ。一つは集団探索前に取得する『探索者仮免許』のための座学であり、もう一つは、座学と実習があわさった、いわばOJTのような形で、『集団探索で訪れるダンジョンを想定した』校庭でのいわば、訓練である。これは、実際の探索者を呼んで教わる。
これも日によってクラスが違う。本日のビジネスマネジメント科は、校庭での訓練日で、会計科は座学である。そして残りの国際ビジネス科と情報処理科は、簿記の補習日だ。つまりは7限の補習内容は、日替わりでローテーションされている。
さて、ビジネスマネジメント科が本日行う校庭での訓練であるが、集団探索で赴くダンジョンを想定しての訓練だ。そのダンジョンが、1Fがスライムで、呉西商業高校から近い位置にある、フォレストパークダンジョンである。正式名称があったような気もするが、ダンジョンが発生した公園名からとって、FPダンジョンと呼ばれている。
となると、いかにしてスライムに対処するかという訓練内容となってくる。ダンジョンで発生するスライムは、RPGでいう雑魚ではあり比較的安全ではあるが、決して舐めていい訳ではない。このダンジョンで発生するスライムは、泥々というか汚濁を持った不透明で不定形な半液体で、なんというかナメクジもどきみたいな感じである。その泥々が、地面を這いずって動いている。
大きさには個体差があるが、低層ではよほど大型のスライムは出現しない。せいぜいが、その辺にいる犬や猫ぐらいの大きさだ。(これが、さらに深い階層となると、上位の大きいスライムなどもいるが、今回は考えなくてもいい。)速度も遅く、歩けば逃げられるし、回避は容易だ。防御力も弱く、棍棒を叩きつければ容易に倒せる。
…が、それは普通のダンジョンのスライムの話だ。なんと、FPダンジョンで出現するスライムは少し特殊である。ダンジョン内部が、発生した公園の環境に似ており、大量の綺麗な水と緑豊かな環境となっているためか、その影響を受けたFPダンジョンのスライムは、なんと透明度が高い。見えないという程度ではないが、『澄んだ綺麗な水にスライムの核が包まれている』といった感じで、通常のスライムよりも綺麗で、脅威度も低い。
スライムの脅威度は、スライム本体を構成するいわば『泥々』部分である。場合により有毒だったり、酸性度が高かったり…といった、『接触にリスクが伴う』のがスライムの危険性である。場合によっては脱水が有効だが、個体によっては化学反応を起こす危険性や、脱水しきれずに粘性が増す場合もあり、安易な投薬・対処は禁止されている。無論、ダンジョンによっては安易な攻略方法が確立されている場合もあり、ダンジョンごとの注意事項や攻略情報の確認を徹底すれば、ローリスクで戦える。
FPダンジョンのスライムは、なんとリスクゼロ。綺麗な水によって、討伐後のスライムジェル部分は、食用・飲用すら可能であることが確認されているほどに安全だ。ゆえにFPダンジョンは日本でも有数の人気ダンジョンであり、場合によっては他県からも集団探索に来るほどである。『探索者を始めるなら、FPダンジョンから』と言われる程。
…というわけで、校庭で行われる最初の訓練は、この『安全なスライムを叩き潰すための動き』になる。他にも『ダンジョンで安全を確保するための訓練』も必要となってくるが、最初に行われる訓練は、まず生徒にやる気を出させるために、このような戦闘訓練が中心だ。
つまりは、校庭に設置した『スライムを模したマト』にむかって『棍棒を振るう』のが今日の授業だ。実際に振って、棍棒を使うことにより、棍棒の使い方や危険性、実用性、棍棒を持っているときの動きといったものを訓練する。
…つまり、理恵は、その訓練の指示通りに棍棒をマトに振りおろしたに過ぎない。過ぎなかったのだが。
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●STATUS / NOTICE
>PARAM
-STR:400
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STR400の理恵が、『指示通り全力で棍棒をマトに叩きつける』とどうなるか。
―バラバラになったマトと、へし折れた棍棒の出来上がりである。
これは本当に運がよかったと言うしかないが、砕け散った破片はあちこちにすごい勢いで撒き散らされたにも関わらず、奇跡的に怪我人は発生しなかった。…いや、これは理恵のLUKの高さも影響しているのかもしれない。
ともかく、初期装備の棍棒は、確かに心許なかった。問題は『これでスライムを倒せるのか?』という意味ではなく、『これで理恵のSTRに耐えられるのか?』という問題が正解であった事だろうか。
―この事件が、理恵の問題ではなく、『マトと棍棒側の不備』だと考えられたために、次の棍棒がへし折れるまであと数分。
次の内容はきまってますが、まとまってなかったので更新が遅れます。
誤字脱字報告ありがとうございます!