なんか最下層にいるんですけど
お昼は暑すぎるので更新を断念しました。
なら、涼しい夜に書けばいいじゃない。
ローファンジー四半期 3位ですって!!
お読みいただき、ありがとうございます…!
誤字脱字報告もありがとうございます(‘、3_ヽ)_
「「大変申し訳有りませんでしたァ!」」
気がついたら執事服を着たイケおじと、メイド服を着たグラマーな女性に土下座されていた。…あれ?そもそもなんで私こんなところにいるんだっけ?寝てた?っていうか、直前まで何してたっけ?…あれー?確か霧島さん達と蜂蜜の試食会を…違う!!
『海の貴婦人ダンジョン』に潜っている途中で、少女(?)を保護したら、水かきの付いた巨大な手に捕獲されて、海に引きずり込まれたんだ。騙されてはないけど、まんまと罠にかかったよね。だから、これから、壮絶な戦いが…戦いが?
あの水かきがついた巨大な手のひらに掴まれたあと、私達は海の底まで連れ拐われた。覚えているのはダンジョンの海の底に割れ目があって、更に下へ下へと運ばれた事ぐらいだ。そして、間をすっとばして、現在に至る。目の前には土下座を決める執事とメイドである。いや、戦いは?罠は?このダンジョンで起きている異常事態は?
周りを見ると、鈴木さん達も一緒だ。私と同じように、事態を飲み込めていないようだ。ただし、保護した少女(仮)は、タコだかイカだかの触手で簀巻きにされている。えっなにこれ。触手プ◯イでも見せつけられてるの?あちこちに触手が食い込んで、体のラインが強調されている。意外と胸があるなとか、そういうのが丸わかりだ。いや、駄目だろ。
「ちょっと!ダガン!早くこれを解きなさい!イドラ!主人を縛るとは何事ですか!」
「駄目です。解いたらまた姫は逃げるじゃないですか!」
「そうですよ!ただでさえ、人様に迷惑かけてるんですから!大人しくしてください!」
「横暴ですわー!」
「クーちゃん?」
執事とメイドがぎょっとした顔をして驚く。
「お客様申し訳有りませんが、『クーちゃん』とは…。」
「ティアラの事だね。」
「そうですわ!クーちゃんですわよ!」
「姫様…。」
とりあえず、この状況、説明してくんないかな。
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「「「親子喧嘩の末に家出したぁ!?」」」
「そうですの!お母様の分からず屋ですの!」
「おかしいのは姫です。」
「そうですよ。お願いですから、自室で大人しくしててください。」
「嫌ですわ!」
触手で縛られているクーちゃんが猛抗議する。
さて、クーちゃん・ダガンさん・イドラさんの話を聞くとこういう顛末である。まず、この人達は古き昔からダンジョン深層に住みつつも、独自の文明を継承してきた、自称『棲まう者』らしい。そして、クーちゃんは、その文明の姫。お母様は女王様。そして、ダガンさんはその執事で、イドラさんはメイド長。ダガンさんとイドラさんは御夫婦で、クーちゃんの後見人つまりは側近の地位にいる。
そして、大事な姫はそれは大事に大事に本当に大事に、箱入り娘として育てられましたが、度々地上から、流れてくる探索者の遺品や、書籍、こことは違う未知の文化に魅了されましたとさ。好きな漫画は『トリ◯』とか『H◯NTER×HU◯TER』とかだってさ。たまに流れ着いてくる雑誌で読んだんだと。おい誰だ、週◯少年ジャ◯プなんてダンジョンに持ち込んだやつは。
で、ついに地上への憧れを抑えきれなくなった姫は、女王様に『地上に行きたい!』と駄々をこねたが、女王様はその意見を一蹴。ついには『お母様の馬鹿ー!』と衝動的に家出。ダガンさんの部下の魚人さんが追いかけたけど…後はご存知のとおりである。
で、追いかけたダガンさんとイドラさんが見たものは、氷漬けにされちゃった半魚人さんと、大勢の人間に捕まった姫。襲われていると判断した、お二人は、強引に姫毎私達を捕まえて、この宮殿まで戻って来たと。あ、ちなみに水のレーザーを撃ったのがイドラさんで、あの水かきのついた巨大の手は、ダガンさんだって。
「箱入りの深窓の令嬢に育てたはずが、どうしてこんなお転婆姫に育ってしまったのか。およよよ…。」
うん。それは、週◯少年ジャ◯プなんて読ませたやつが悪いかな。だって、クーちゃんが上げた漫画って、どれも大冒険アドベンチャーだし。あと、そのチョイスってことは、クーちゃん、思ったより年齢あるよね貴方。見た目通りの年齢じゃなさそうだね。…その割には精神年齢が幼い気がする。
「大事なお祭りも今日なので、その目玉の姫には大人しくしてもらいたいのですが…。」
「お祭りなんて知ったことではありませんわー!私は地上へ行きたいんですの!」
で、とりあえず丸ごと捕まえて、ここまで連れてきた所、私達がクーちゃんを襲っていた訳ではないと判明し、冒頭の土下座へ繋がると。…うーん。疑わしさと本当なんだろうなってのが半分半分。概ね言ってる通りだけど、なんか肝心な事は喋ってないみたいな、そんな感じがする。概ね嘘ではなさそう。だが、そうなるとめちゃくちゃおかしい点があるんだよな…。
「あの、ところで、ここってダンジョンのどれぐらい深い場所なのですか?」
「私共が把握している限りはあの建物がある階層から、30~35階程下層になります。具体的な階層数は把握しておりません。そもそも我々が上の階層まで移動することは基本的にないので…。」
ということは、地下40階層ぐらいか?いや更に確認する方法があるな。
「これより下に階層ってありますか?ここが最下層でしょうか?」
「そうですね。このフロアが、このダンジョンでは最下層になります。」
となると最高到達地点の42階層よりは下だな。となると、申告を信じるなら45階層ぐらいかな。ただ、言い方がなんか引っかかる。しかし、最下層か…。困ったな。24階層に行きたかったから深くまで潜っていたのに、そこを通り越してしまった。っていうか、あれからどれだけ時間経ったんだろう。確認しないとまずいな。
何より、佐藤さん達と分断されてしまった。佐藤さん、霧島さん、中川さんという、パーティーの中心人物がおらず。頼れる前衛の金田さんもいない。幸いなのは、鈴木さんと西園寺さんがいて、さらに前衛を担える堺さんがいるというぐらいか。そうなると、必然的に鈴木さんか西園寺さんが指揮担当になるね。
「ダンジョンに棲息する知性のあるモンスターはいくつか確認されてるっすけど、独自の文明までもったモンスターは初めて聞いたっすね。もはやモンスターと言っていいのか不明っす。」
「というか、ダンジョンが出現してから5年のハズや。独自の文明ってことは、更にその前からダンジョン内で生活をしていないとおかしいな?つまり、うちが考えるに、ダンジョンは『私達の世界に出現する前から存在していた』としか思えへん。」
「そもそも、イドラさん達は、いつからここで生きてるんですか?」
「わかりません。文明の歴史書がありますが、この文明自体は20万年前に沈んだ大陸から、このダンジョンに避難してきた者たちが継承したものです。さらに遡れば3億年前だの、3億5千年前などに起源がありますが、そこまで遡ると、なにぶん古すぎて正確な情報は私達にも残っていません。」
「20万年前…。」
「あなた達のことは分かったっす。ただ、他にも聞きたいことがあるっす。」
「はい、なんでもお尋ねください。」
うーん。文明についてももう少し詳しく聞きたいね。この『ファンタジーアップデート』の核心について、なにか掴めそうな気がするんだよね。だが、そんな事より、まだ確認しないといけないことがいろいろある。
「今、このダンジョンには異変が起きているっす。新しいモンスターが出現した上に、『スタンピード』と言われるモンスターの大移動が発生しているっすけど、心当たりはないっすか?」
「…いえ、そのようなことが起きているのも知りませんでした。」
「20階層…大体ここから15階層ぐらい上っすね。そこにいるモンスターがあの建物がある階層…10階層まで移動してたっすけど、それもなにか知らないっすか?」
「いいえ、まったく。ここから15階層ぐらい上となると、あのぬるぬるした奴でしょうか?」
「そうっすね。そのぬるぬるしたやつっす。」
「…分かりませんね。」
ふーん。
「次っす。ここは独自の文明が発展しているんっすよね?」
「はい、そうです。」
「となると、おそらく言語体系も独自だと思うんっすけど、なんでこうやって『日本語』が通じるんっすか?」
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触手 in クーラーボックス(仮)
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