なんかこれは直伝なんですけど
「助けて~!!」
海から出てきたのは、半魚人に追われる女の子であった。この女の子が何故、こんなところにいるのかはともかく、半魚人が追ってきているのは事実だ。なんとかしなければ。
「黒川さんはうちの後ろへ、藤井さん、佐藤さんと霧島さんを呼んできて下さい。」
「了解しました。任せてください。」
「堺さん、前衛を任せました。黒川さんとうちが、後方から援護します。」
「…わかった。」
「とりあえず、まずは女の子を確保しなければいきません。堺さん。」
堺さんが前に出るのに合わせて、私は半魚人の方向に『アイスニードル』を打ち込む。この間のイヴとナーグの時と同じ要領で、狙いをつけずにひたすら釣瓶打ちにする。要するに牽制攻撃だ。半魚人にアイスニードルがヒットするが、全くもって効いている様子が見られない。
ガシャンガシャンと、氷が割れる音がするが、半魚人には傷一つない。おそらくあの鱗が硬いか、私程度の魔法攻撃など効かないかのどちらかだ。…それから、この感じはおそらく『恐慌』持ちだな。『精神耐性』が動作しているのを感じる。これで、倒れていないということは、西園寺さんと堺さんも『精神耐性』を持っているということかな。
半魚人は、いかにもな半魚人だ。全身の鱗に、魚の頭、そして、水かきがついた手足に、首に有る大きなエラ。何かしゃべっているようだが、未知の言語だ。私達には何をしゃべっているかの判断がつかない。
「堺さん、牽制して足止めするだけでええです。堺さんが前衛を引き受けてくれれば、うちの『グラビティ』で拘束できる。時間を稼げば藤井さんの話を聞いて、『疾風迅雷』が来てくれるハズや。建物からもそう遠くはありません。時間を稼ぐだけで勝てます。」
「そんなに、俺は頼りないか?」
「違います。損耗を抑えてローリスクで勝ちに行きます。戦いは数や。」
「…そうですか。」
半魚人が爪を振るい、それを堺さんが受け止めて、流す。その反動で回転し、一太刀を入れる…。が、鱗に弾かれる。やはり相当硬いなあの鱗。
「硬い、刃が通らない。」
「ならば、剣の峰や平で叩くんや。切れないのなら、打ち込みです。鱗の下、内部を打撃で破壊するんです。」
「…そんなやり方もあったな。」
堺さんはアドバイス通りに、斬るのではなく、打つに切り替えて、攻撃をしかけていく。最初は、平気だった半魚人も、次第に「まずい」と思い始めたのか、動きを変える。その間に私は、逃げてきた女の子を確保する。
「ありがとう~。助かりましたわ~!」
「まだ、安心するのは早いよ。私の後ろに。」
「はい!」
うん、元気そうだね。まぁ、この娘の事は後回しだ。とりあえず目の前のアレをなんとかしないと。実際に対応しているのは、堺さんだけど。
バキン パキン
堺さんの打撃により、次第に、半魚人の鱗が割れて落ち始める。割れた鱗の下の皮膚は、元は何色かわからないが、腫れ上がって紫色になっている。やがて、半魚人が目に見えて、堺さんの打撃を避け始めるようになる。だが、撤退をしようとはしないな。
「うぅん、思ったより隙がないな。ばっちりうちの魔法も警戒しとる…。」
だが、西園寺さんの存在は抑止力になっているはずだ。
「皆さん!大丈夫っすか!」
そうこうしていると、鈴木さんが飛んできた。
「流石、疾風迅雷やな。仮称半魚人と戦闘中、堺ががんばってうちらを守ってくれとったわ。」
「すぐに、佐藤さん達が来るっす。もう大丈夫っす。」
鈴木さんが堺さんと並んで、剣を抜く。半魚人の意識が、鈴木さんと堺さんに向く。だが。その隙、見逃さない。
「アイシクルパレード!」
霧島さん直伝の『アイシクルパレード』を喰らえ!
『グオッ!?』
半魚人に見事に命中。氷柱は砕け散るが、その衝撃で半魚人は、はるか後方に吹っ飛んでいく。そのまま吹っ飛んでいった半魚人は、海に落ちる。想定通りの吹っ飛び方に思わず、ガッツポーズがしたくなるね。そう、アイスニードルは布石だ。私の魔法は大したことがないと思わせるためのね。そのために威力も抑えていたし、半魚人は今回も「受ければ良い」って思ったんだろうね。
「ライトニングフォール!」
そこに鈴木さんの電気魔法が、ズドン!と決まる。しばらくするとうつ伏せになった半魚人がぷかぷかと水面に浮いていくる。よし、これで大丈夫だろう。…まぁ、念の為、凍らせておくべきかな。
残念!半魚人のターンはここまで!
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