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なんか海から女の子が出てきたんですけど

 10階層の管理施設は解放された。解放はされたが、中身はミズウオの粘液のぷるぷるや、その粘液に包まれたミズウオの卵やらなんやらでいっぱいである。なんなら、まだ生きてるのが床でピチピチしてるし、潰れたミズウオの目玉やらなんやらが散らばってたり、焼けたミズウオが散らばってたりする。あと、戦闘中は気づかなかったけど海水もたっぷりあったようで、あれもこれもびっちゃびちゃである。建物の外には、中から溢れた海水とミズウオのあれやこれが散乱している有り様だ。


 「これは清掃が大変そうだな。」

 「建て直したほうが早いとおもうわ。」

 「電子機器は…まぁ確かめるまでもなく全滅っすかね?」

 「いや、確かモンスターの攻撃に備えて防水処理されてるはずだから、家電類はともかく通信機器は大丈夫なハズ…よ。」

 「あ、駄目です。物理的に壊れてます。」

 「あの野郎(オイラン)…。」

 「こっちの機械は中までミズウオびっしりです…。」


 管理施設の解放には成功したが、中身は使い物にならなかった。一見無事なのは外観だけである。一応、進行ルートの確保は出来たが、それ以外に得られたものは何もない。生存者も見当たらないが、そもそも痕跡が見られないというか、あれもこれもぬめぬめのぷっるぷるな訳で、検証のしようも無い。まぁ、ここで会えなければ生きていないだろう。


 「…セーフゾーンパレットが壊されてるっす。」

 「まぁ『オイラン』がいた時点で、そうだとは思ったが、『()()()()()()』で、いいんだな?」

 「そうっす。」

 「こりゃぁ、足止めと偵察用だな。まんまとやられたか。無駄に魔力を使っただけだな。」

 「となると、急ぐべきっすか?」


 佐藤さんが少し悩んだ後、次の行動を指示する。


 「いや、癪だが、ここで一旦休憩をとろう。セーフゾーンではないが、幸い周辺のモンスターは、『オイラン』を嫌ったのか、近くにはいない。魔力も消耗したし、この後は更に厳しくなるのが予想される。ここで30分。休憩をとる。」

 「了解っす。」

 「わかった。」


 佐藤さんが選んだのは休憩だった。確かに闇雲に突入するよりも、今は魔力を少しでも回復するべきか。霧島さんは、懐から蜂蜜の瓶を取り出して飲んでる。…待って、その服の懐って、その瓶は一体どこに隠してあったんです?それにしても、この蜂蜜、すっかり回復アイテムとして定着しているな。


******************************


 建物の中では到底休憩できないので、外に出て深呼吸をする。念の為魔力観察を使ってみるが、周辺に感覚は無し。この周辺は今なら安全なんだろう。まだ、10階層だが、私としては初めてこんなに深くまで潜った。だが、目的の階層は更に下にある。レベルだけは高いが、戦闘経験も探索者としての経験も浅い私は、この先も足手纏いになるだろう。だが、確かにヤツ関係であれば、私は先に進まなければならないのも事実である。


 そんなことを考えながら、建物の周辺を歩く。飛び散ったミズウオのあれこれが散らばっているが、今更だ。ミズウオの魔石も転がっているので拾いたいところだが、全部ぬめぬめぷるぷるしているので、なんとなく拾う気になれない。…待てよ?ぬめぬめのぷるぷるで『包まれている』って解釈すればどうだ?いけるか?…あ、いけた。私の手のひらの上で、ぷるぷるの中身から()()された魔石が転がる。意外となんでもありだな?…まぁ、私が魔石集めたところで使い道はないんだけどね。


 そんな風に施設の周辺を散策していると、建物の中から、堺さんと藤井さん、そして西園寺さんが出てくる。私の事を心配したのだろう。それはそれとして、堺さんの表情が心做しか暗い。


 「黒川さん。一人で歩くのは危険やから、うちもついていくよ。」

 「建物の中では、佐藤さんと中川さん、それから霧島さんがミーティングをしていてね。私達では話にも入れないから出てきたよ。」

 「…バラバラになるのは避けたい、すまないが一緒に行動しても良いか?」

 「えぇ、構いませんよ。」


 まぁそれはそうか、いくら休憩といっても無防備に一人で出歩くのは危険か。私には魔力観察がある。なので『接敵に気づけるから大丈夫』と油断していた。だが、確かに複数人で行動したほうがいいか。


***************************


 堺さん、藤井さん、西園寺さんと一緒に行動する。休憩するために、潮風に当たりながらぼーっとすごす。遠くには、上層へと行進する『アオガニ』の行列が見えるが、この辺りはコースから外れているみたいだし、大丈夫だろう。


 そんな風に遠くの景色を眺めていると、海の中から何かが上がってくる気配を感じる。私は棍棒を構えて迎撃態勢をとる。同時に、堺さんが前に出て、藤井さんと西園寺さんが、私の隣を固める。水面を見つめていると、海中からぼこぼこといくつもの泡が上がってくるのが分かる。やがて影が大きくなると、水の中から飛び出してきたのは――


 「ぷはぁ!!」


 私と同年代程の女の子である。…は??人??この海の中を泳いでたの?本気で?海の中から上がってきた女の子は、私達を見つけると、大声で叫び始める。


 「あ、そこの貴方達!!助けて!!悪い奴らに追われていますの!!」


 そんなセリフを言うのは、漫画の中のお姫さまぐらいですが?』というテンプレなセリフと共に、海の中から現れた女の子は助けを求めてくる。女の子は陸上にあがると、私達の方に駆け寄ってくる。その後続けて、海の中からその女の子を追ってきたと思われるモンスターが数体、飛び出してくる。


 そのモンスターの見た目は、半魚人のように見えるが、なんだか嫌悪感がある。名前も分からないが、そのモンスターもこっちに女の子を追いかけて、真っ直ぐに向かってくる。戦闘は避けられなさそうだ。


 問題は、この女の子よく見ると…いや、まぁ今はいいか。追われてるの事実っぽいし。

暑い、無理しない。更新ちょとずつ。


新作あり〼

触手 in クーラーボックス(仮)

https://ncode.syosetu.com/n1200kj/

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― 新着の感想 ―
はい!更新多くてめちゃ嬉しいですけど、暑いから無理しないでくださいね〜
こんにちは。 このタイミングで狙ったかのようなタイミングで「私、参上(?)!」か……お前絶対ナイア達の仲間だろ(疑念
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