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【⭐️5,000ブックマーク】愛用のクッションがどうもなにか変【累計350万PV】  作者: 一級フラグ建築士
第6章 海の貴婦人攻防戦(前)

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なんかまるでBBQ会場なんですけど

 ジュゥジュゥと音を立てて、あちこちから、カニが焼ける良い匂いがただよってくる。あちこちで、カニの丸焼きが調理されていると言っても、もはや過言ではない。活けのまま丸焼きにされた蟹が、あちこちでキュゥキュゥと音を立てている。それだけならば、ここはただの『海の高級バーベキュー会場』だ。


 ただし、その蟹の大きさが1匹、1メートルはある上に好戦的である。


 大きなハサミに、太い足、そして硬い甲羅。探索者によって殻が叩き割られると、中から赤と白のぷりぷりとした美味しそうな身が出てくる。実際美味しい蟹なんだが今は、それを呑気に食べている訳にはいかない。今現在もその大きな蟹が、数百匹単位で大行進して海から上がって来ているのだ。いや正確には、深層から上がって来ている。


 あっちでは蟹が感電し、あっちでは蟹が両断され、あっちでは蟹が焼かれ、あっちでは蟹が氷漬けになっている。…お金を出しても今後一生見る事ができなさそうな光景だ。あっちこっちで高級食材が、食べるわけでもなく討伐されている。…あ、でも、あっちでは討伐した蟹で炊き出しをやってるのか。蟹雑炊が前線の探索者に、無料で振る舞われている。


 ――ここは、『海の貴婦人ダンジョン』第1階層、最終防衛ライン。入口から進んで、第2階層へと繋がる"ズレ"の狭間だ。基本的に、ダンジョンの、第1階層と第2階層は(一部例外があるが)、ほぼ地続きなことが多い。故に大抵の場合は「第1・2階層」とセットで呼ばれることがほとんどだ。第1階層にも蟹がいくらか歩いているが、それは、巡回する探索者が討伐している。


 だが、より深層から上がってくる蟹は、この第1・2階層の狭間を防衛ラインとして撃退している。そして、その蟹の大行進は止める気配を見せないどころか、続々と上がってきている。


 「お疲れ様です。佐藤さん。霧島さん。」


 最終防衛ラインを守っている、探索者の一人から声がかかる。


 「お疲れ様です。柿崎さん。」

 「あ~。ともともー。久しぶりー。」


 柿崎さんは、炎魔法を行使して、大量の蟹を焼きながら、佐藤さんと霧島さんと喋り始める。


 「ともともー。現況はー?」

 「現在、第5・6階層の蟹が上がってきてる感じですね。終わりが見えません。交代交代で防衛しており、まだ余裕がありますが、13・14階層あたりの蟹共が上がってくると、脱落者が出始めるでしょうね。」

 「先発探索者から連絡はー?」

 「ありません。音信不通です。」

 「無線はー?」

 「7・8階層のはまだ生きてるっぽいですが、それ以降のは全部壊れてますね。おそらく中層手前の10層にある管理施設もぱぁでしょうね。長い事、時間かけて作ったんですけどね…。」

 「あららー。」

 「ところで、そこのフードの人は?顔を隠しているみたいですけど。」

 「すまない、紹介はできない。」

 「あら…。触れちゃまずそうね。」


 今私は、霧島さんが用意してくれた、フードをかぶっている。ただのフードではなく、ダンジョン産のアイテムだ。これにより、顔と声を隠している。


-----------

 隠密魔道士のフード

 ・レア

 ・装備品

 ・『魔力消費軽減I』『隠密I』

 ・MP消費無し

 ・このフードを装備すると、魔力消費を軽減する。

 ・このフードを装備すると、顔と声が認識されづらくなる。

 ・ただし『人物識別I』あるいは同等のスキルにより無効化される。

 ・例 上位の『鑑定』スキル等。

-----------


 「せめて、増援がもっと来れば、第2階層にまで前線を押し上げたいところですが、無理はできません。ロスを少なくして、部隊をローテーションさせることで損耗を回避します。」

 「正道だな。」


 「ところでともともー。結婚してからダンジョン潜るの控えてたじゃんー。緊急動員かもしれないけどー。よく、出てきたねー?」

 「出るわよ。先発部隊に妹がいるのよ。なんなら私が今すぐにでも、奥に行きたいぐらいよ。前線維持するために、これでも我慢しているのよ。」

 「…マジ?」

 「本当よ。偵察チームに、海の名前があるわ。」


 「佐藤、名簿。」

 「持ってる。これだ。」


 霧島さんは佐藤さんから名簿をひったくるようにして受け取ると、それに目を通す。 


 「…本当だ。赤池と白鳥の名前がある。」


 …どっかで聞いた名前だなぁ。


 「…赤池先輩と白鳥先輩ですか?」

 「おや、貴方、知ってるの?」

 「あー…そうね。この娘は、知ってるわね。」 

 「そう…。()()ね。」


 やっべ。やらかした。


 「柿崎、すまんそれ以上は。」

 「はいはい、詮索はしないわよ。ただ、佐藤、独り言ぐらいはいいでしょ。」

 「独り言?」


 「私の代わり、…任せたわよ!」


 「…はい!」

ダンジョンを潜ります。


新作あり〼

触手 in クーラーボックス(仮)

https://ncode.syosetu.com/n1200kj/

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