なんか潮の香りがするんですけど
海が綺麗だ。寄せて引く波に、堤防にあたり飛び散る波しぶき。潮の、海の香りがする。
「黒川さん、準備は出来ましたか?」
「あ、はい。大丈夫です。佐藤さん。水着も着込んであります。」
6月だというのに、まるで、夏休みに海に遊びに来たようにさえ思えるほどだ。すぐそこを泳いでいる、大量の宝石タイラエビも、美しい。このまま、ゆったりと海を眺めていたいぐらいだ。…だが現実はそういうわけにはいかない。時間だ。
「佐藤さん、全員準備OKっす。」
「では、これより、海の貴婦人ダンジョンの中層を目指して出発する。低層ごときでは手こずらないと思うが、アカガニの硬さは舐めないように。大量発生しているアカガニを駆除しつつ、先行している探索者との合流を試みる。なるべく速やかに合流を行うぞ。」
目の前には海から次々に上がってくる、大量のアカガニの群れがいる。
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「昨日18時頃、海の貴婦人ダンジョンをメインとする探索者数名より、『ダンジョンに異常有り』の報告が多数。西部支部は即刻、海の貴婦人ダンジョンへ職員を派遣。速やかに入場規制を実施し、午後19時にダンジョン封鎖。その後、Cランク数名による偵察チームを派遣。異変の調査の為にダンジョンアタックを行っていますが、その派遣したチームは現時点で未帰還です。」
「その後、今朝5時24分に、1・2階層にて監視をしていた別の探索者チームより、『アカガニ大量発生』の緊急通報が入りました。現在、周辺ダンジョンで探索していたB~Dランク探索者十数名を投入して討伐を実施していますが、現在もアカガニの大行進は続いています。原因は不明です。」
「それは、所謂スタンピードの前兆か?」
「不明です。佐藤さん。」
「なるほど。通報された異常の内容は?」
「『ユニークモンスターの発生』及び『未確認の新種モンスターの発生』です。」
「いや、普通にやばいっすよね?」
「『アカガニの大量発生』を受けた後、速やかにダンジョン警察に応援要請。ダンジョン周辺は午前7時30分より封鎖中。もとより公園だったのが助かりました。また、日本探索者協会に、Sランクの派遣を要請済みです。…ですが色よい返事はもらえていません。」
「何故だ?いや、あの事件のせいか。」
「その通りです、突然の巨大モンスターの発生を警戒するために、首都圏のダンジョンを中心に、高ランク冒険者の殆どが、主要都市のダンジョンに張り付けにされています。Sランクの応援は見込めません。唯一あるとしたら、名古屋からの派遣ですが、それでも数時間はかかる見込みです。」
「ここまで来ると逆に笑えるわねー。」
「自衛隊の派遣の要請は?」
「カニを焼くのに自衛隊が呼べれば苦労しません。ですが、既に十文字支部長経由で現状を報告済みです。」
「なるほどー。」
「続けます。よって、本日朝8時、西部支部は専属探索者の投入による『海の貴婦人ダンジョン討伐作戦』の実施を決定いたしました。」
「それでこの面子ってわけか。ちょうどいい。長い入院で肩が凝ってたところだぜ。」
「その通りです。」
「しかし、残念ながら現在、西部支部にA級の専属冒険者はいません。」
「それがどう関係するんだ?」
「ダンジョン特措法です。討伐作戦にはAランク探索者の参加が求められます。」
「そうだった。」
「よって霧島さん。西部支部より正式に『Aランク探索者への復帰』を要請します。」
「ほえー。面倒くさいー。…でもしょうがないなー。今回だけならいいよー。」
「それから、佐藤さんと中川さん。通達が遅れておりましたが、既に西部支部内ではBランク探索者として登録されています。よろしくお願いします。」
「こんなことで、昇級してもなぁ。」
「拒否権は有りません。よろしくお願いします。」
「…仕方ないな。」
「指揮は佐藤、前衛に堺、金田、鈴木、中後衛に、中川、藤井、そして不測の事態に備えて黒川と、その護衛に霧島と西園寺の編成です。アタック開始はこの後、午前11時25分よりを予定しております。」
「これは、西部支部からの緊急要請クエストです。不参加の場合は機密保持のため軟禁させていただきます。…全員参加でよろしいですか?」
「あの、私も行かなきゃいけないんですか?」
「そうです。これは西部支部よりの正式な要請です。現状、光魔法を使えるのが黒川さんしかいません。」
人生三回目のダンジョンアタックがコレかぁ。…たまにはゆっくりしたいなぁ。できなさそうだなぁ。
霧島「だけどやっぱりやだー!面倒くさいよー!手続きだの、交渉だのやってられないよー!あげくのはてに政治みたいな事までやらされたし、もうAランクになるのやだよー!全体指揮とか向いてないよー!やだー!!!!半分引退できてたのにー!!!」
金田「やっぱ姉御、元は高ランクだったんですね。」
佐藤「そうだ。なんでCランクになってたのかは、全部、本人が口にだした通りだな。」
金田「ランク上がれば、ダンジョン潜ってるだけで生活できるぜ!とか考えたんだが、そうでもねぇんだな…。」
中川「だから俺もBになるの嫌だったんだがな…。」
佐藤「諦めろ中川。」
黒川「(蜂蜜たべたい…。)」
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