なんか白濁を飲まされるところだったんですけど
デュエル開始
「…復活?貴方達は、現に目の前にいるのでは?」
「それはほんの欠片に過ぎない。」「魂を分け、霊体を与える。」「お前も早く私達に。」
まず第一に、交渉材料は私自身だ。つまり、「まだ交渉余地がある。」と向こうが思う限りにおいて、私が即、殺されるような事は無い。問題は私が、所詮替えがきく程度だった場合、最悪死ぬ事もありえるということだ。だがそれならば、最初に『ナイア』が失敗した時点で、私達を全員殺しているハズ。故に、ヤツらは私を殺すことだけは無いだろう。ただしこれは、あくまで希望的観測に過ぎなかった。
少なくとも『ナイア』が『撤退』を選択する程度には、私のことを重要視しているのは確定だ。だがこの双子が、それ程私のことを重要視してなかった場合、短気にまかせて殺される可能性はままある。だが、これまでの会話内容にて、その可能性は消えた。
「復活ねぇ。本体は別のところにでも封印されてんのかな?そのまま眠ってて欲しかったところだけど。」
「私達の本体は」「寝ている」「ここにいるのは」「分霊に過ぎない。」「黒川さんなら」「起こすことができる」「新たな教祖に」「私達の依代に」
『イヴとナーグ』にとって『復活』はそれほど重要な事だし、『黒川さんなら起こすことができる』と明言した。つまり、誰でも良い訳ではないのだ。なんらかの条件がある。そしてその条件とはおそらく『■■■■の秘密を解明しようとするもの』ではないかと私は睨んでいる。むしろ、それぐらいしか思いつかない。あとはあって、次点で、『セキュリティキー』あたりだろう。この時点で、私はほぼ替えが効かない存在であることが確定する。
更に『イヴとナーグ』は、誘惑という手段まで使い、交渉を進めようとした。おそらくは、『自らの意思で』この『白濁』を飲み込まなければ意味がないのだ。そうでなければ、私を羽交い締めにして、無理やり口を開けて、飲ませればいい。…もしかするとモンスター化するのは、『■■■■の秘密を解明しようとするもの』の称号を保有して無いからという可能性はあるな。
…つまり何が言いたいかと言うと、向こうはさーちゃんとうーちゃんが人質だが、こっちはこっちで私自身が人質として使えるってことだ。つまり、私が多少抵抗したところで、うーちゃんとさーちゃんを、殺すことは向こうも出来ない。そのハズだ。ただし、あまり抵抗すると、人質を乗り換える事は予想される。
「興味が無い。といえば、嘘になるわね。その為に人を捨てろと?」
「「そう、その通り。」」
故に、最速で引き剥がす。
霧島さんと中川さんの探知能力を合わせれば、たぶん見つけてくれるはずだ。私も魔力を伸ばし、存在をアピールする。ポーカーフェイスを維持してはいるが、背中は汗でびっちょびちょだ。『思考加速』も4/secぐらいで加速させてるし、『プリミティブ』も使って、ずっと自分の時間を加速させている。正直『精神耐性III』がなければ、死ぬほどきつかったと思う。『魔力観察IV』もずっと使い続けているし、正直今だけは、潤沢な自分のMPに死ぬほど感謝だ。
だが、それでも自分にかかる、負荷と疲労は別だ。甘いものが脳髄に染みる。そして、合図が来た。ポケットの中のスマホが、霧島さんからの通知で震える。
「「時間よ。答えを聞くわ。」」
そうだ、時間だよ。こっちもね。
「私の答えはコレよ。」
ズドンッ!!
霧島さんによる魔法の遠距離精密射撃、『アイスニードル』が私が指定した位置に、見事に突き刺さる。そこには、ずーっと、『イヴとナーグから伸びた魔力』…いや、『イヴとナーグへ伸びた魔力』が繋がっているモノがある。…さーちゃんごめんね!カバンは後で弁償するから!
そして、その『アイスニードル』と同じ軌跡で、稲妻が空中を駆ける。ダメ押しの一撃だ。これはたぶん中川さん辺りかな?あるいは、鈴木さんかもしれないが、そこは後で確認しよう。
ガシャァン
カバンの中からは、何かが割れた音が響く。
「「一体何が!?」」
簡単な話だ。『イヴとナーグ』は、人を舐めすぎた。そして、お前は私を怒らせた。返してもらうよ。二人共。
「そぉい!!」
ズボラ故に、カバンに入れっぱなしだった、『聖水』を二人にぶちまける。効果が有るかどうかは不明だが、『LUK』先輩を信じるしかない。…二人とも、聖水でびしょ濡れになっちゃったけど、緊急事態だから許して欲しい。
「「痛い!?」」「なにこれ!?」「水!?」「嘘でしょ!?」「なんでこんなものが痛い!?」「なんでぇ!?」
-----------
聖水
・アンデッドやレイス系に致命的ダメージ。
-----------
さすが『分霊』だね。たぶん、本体には効かないんだろう。でも、ほんの欠片の魂であるならば、レイスの同類認定を受けるようだ。おそらく、本人達も自覚はないだろう。そもそも『聖水』如きが効くなんて、思ってもみなかったハズだ。こっちもぶっかけるまで、賭けだったし。そして、うーちゃんとさーちゃんから『分霊』が離れていく。カバンの中にあるものに戻ろうとするが…。
「戻れない!?」「魔力のつながりが消えてる!」「本体と繋がってない!?」
ただ、これでも魔力の量は、私なんかよりも遥かに多い。分霊でこれなんだから嫌になるね。さ、繋がりは断ち切ったし、こっからが本番だ。
そぉい!
新作あり〼
触手 in クーラーボックス(仮)
https://ncode.syosetu.com/n1200kj/