なんか上級生に見つかったんですけど
日常回
「あ、いた。」
学食で皆でワイワイしていると、後ろから声をかけられた。振り返ると、知らない生徒が立っていた。制服から見て上級生だが、私はこの人を知らない。
「黒川さんですよね?少し、お時間借りても大丈夫かな?」
おーん。なにかお話がしたいらしいが、私はあなたを知らないよ。…まぁ流石に上級生に直接言う度胸はないが。お断りしたいが、探し出して声をかけてくるぐらいだもんなぁ。
「あの、えっと。お名前って。」
「おっと、ごめんね。うちは、3年の緑谷って言います。」
「えっと…。たぶん、初めましてですよね?」
「そうやね。初めましてです。」
「そんな私にご用事が?」
「そうです。」
あらまぁ。
「えっと、緑谷先輩?ですか。そのお話って長くなります?今皆で親睦を深めていますので。」
「すぐ済むよ。確か青山さんだったかな?少し黒川さんをお借りしても?」
「お断りしますー。緑谷さん。帰ってください。」
利香ちゃんが牽制し、京ちゃんが拒否。
「えぇー。そんなこと言わんとさー。雨森さん。少しぐらい黒川さんを貸してくれても良いんじゃないです?」
「残念ながら、りえちはモノではないので。貸出はしてないんですよねー。諦めていただいて良いですか?」
「うーん。できれば言う事を、聞いていただきたいんですけど。」
「(チッ、シツコイ。)」
なんか今舌打ちが聞こえたような。
「おっと、ちょっといいかなー。緑谷さん。」
そうこうしていると、なんか増えた。…この人も上級生だね。
「あら、赤池さんじゃないですか。何か用ですか?」
「何か用ですか?じゃないんですよね。あなたには用がないんですよ。」
「あら、では誰に用があると?」
「それは当然、黒川さんですね。」
まじか。
「ほーん。上級生が一体、1年生になんの用なんですかねぇ?赤池さん。」
「そういう貴方こそ、ブーメランではないですか?」
それはそう。
「あの、お二人共、さっさとUターンしてお帰り願いますか?学食で迷惑ですが?」
「その通りですね。それに上級生が下級生に声を掛ける理由、心当たりは一つしかないです。」
「「お二人共、今はまだ部活動解禁前ですよ?」」
京ちゃんと利香ちゃんが口を揃えて上級生に「NO」を突きつける。
「あらあら、まぁまぁ、真面目ちゃんねぇ。」
「部活動に参加するのが前なだけで、実際にはあっちでもこっちでも勧誘してますよ。」
「なるほど。ですが、規約では禁止期間です。引き下がっていただけますか?」
「部活動説明会まで、大人しくしていただけます?それとも物理的に大人しくさせないと駄目です?」
「あら、1年生が言うわね。」
そろそろ止めないとまずそうだ。…そう考えていると、更に後ろから声がかかった。
「はい、それまで。4人共、下がりなさい。」
経理部顧問の太田先生だ。
「げっ、見つかった。」
「騒ぎすぎたか…。」
「概ね、そこの1年生の言うとおりです。学食で、他の生徒にも迷惑です。下がりなさい。」
「…ちぇ。」
「仕方ないですね。」
だが、次の一言で雰囲気が一変する。
「それに、彼女は、経理部に入っていただきますし。他の部が入る余地はありません。」
「「職権濫用!!」」
「太田先生?それは聞き捨てなりませんが?」
「そうですよ。教師が規約を守らないとは。」
「現に彼女は、既にほぼ経理部部室で勉強してもらってますし。」
「横暴!」「ずる!」「経理部を許すな!」「りえちを返せ!」
…教室に戻っていいかなー?うーん。やっぱり『インビジブル・チョーカー』必要だったかも。
次回 なんとかなれ
新作あり〼
触手 in クーラーボックス(仮)
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