表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
111/194

なんか全部白いやつなんですけど

本当にあります。

 「はい、130円ね!」


 あれから、全員が合流して、皆で上級生の塊の中になんとか入り込んだ。このご時世では珍しくなった、まさに押し合いへし合いの中なんとか、窓口に到着して、大声でチキンカツをそれぞれ注文する。代金は130円。事前に小銭を準備しておき、アルミホイルにくるまれたチキンカツと、130円を交換する。


 ほんの僅かな時間だったけど、チキンカツ一つのために、ひどく疲れた。…強化魔法は使えないけど、『プリミティブ(原始の魔力強化)』で防御力を高めた方が良いかもしれない。次があるのかはわからないけど。


 学食は一人とは言え、かなり人気なようで、既にかなり席が埋まっている。6人で確保できる席がなさそうだ…と思っていたら、ちょうど食べ終わった上級生が退席。ぴったり6人がけのテーブルだ。奏と京ちゃんが真っ先に席を確保する。


 「「皆ー、こっちこっちー。」」


 どうやら無事座れそうだ。


****************************


 チキンカツ(130円)は、結構な大きさがある。冷静になって持ってみると、意外にもずっしりと重たい。アルミホイルから、揚げたての熱々の熱が伝わってくる。これをガブッといくと、やけどしそうだな。飲み物がいるかも。


 「はい、アン◯サ。私のおごりだよ~。」

 「ナイス!カナカナ!」


 奏が、人数分の飲み物を買ってきてくれたようだ。そういえば学食の入口に自販機があったなぁ。奏が買ってきたのは、缶の飲み物だ。ただ、「はい、ア◯バサ。」って当然のように渡されたんだけど、私はこの飲み物を知らない。


 「…◯ンバサって何?」

 「「「「えっ!?」」」」


 どうやら知らないのは私だけのようだ。


 「えっ、りえち、本気で言ってる?」

 「りえち?アンバ◯知らないの?」


 利香ちゃんと京ちゃんから突っ込まれる。いや、私からしたら、皆当然のように知ってるのが怖いんだけど。どうやら、周りの反応をみる限り、皆知っているようだ。


 「あの、私達も知ってますよ。クラスの皆も、よく教室で飲んでいますよね?」

 「っていうか、学食前の自販機は、全部アン◯サですよ。」

 「学食のゴミ箱もほら、アレ全部ア◯バサの空き缶ですよ。」


 田中田さんに指摘されて、入口の自販機とゴミ箱を見る。…本当だ。全部この白い缶のやつだ。えっまじで?そんなにメジャーな飲み物なのコレ!?


 「ねぇねぇ、りえち。りかち。とりあえず、アン◯サについては後にしてチキンカツ食べようよ。冷めちゃうよ。」

 「それはそうね。先にチキンカツいただきましょうか。」

 「賛成ー!」


 確かにそれはそうだ。先にチキンカツを食べてしまおう。


 「あ、そうそう、りえち。」

 「どうしたんですか?」

 「気をつけてね。」

 「?」


 とりあえず、チキンカツにかぶりつ…熱っ!?


 「あー、やっちゃった。」

 「初めては皆そうなりますよね。分かります。」

 「あー、もったいない。」


 かぶりつくと同時に、中から熱い肉汁が吹き出した。めちゃくちゃ熱いねコレ!?…あっでも、すごいチキンカツってパサパサしてるイメージがあるのに、ものすごくジューシーだ。中から溢れる肉汁がそれを証明している。サクサクの衣を噛み砕くと、口の中が肉の味いっぱいになるのに、チキンカツだからしつこくない。


 見た目わりと平べったいのに、ぎっしり詰まっているというか食べごたえが凄い。そして、皮がパリッとして、なんとも言えない美味しさだ。なるほど、この人だかりの意味が分かる気がする。そして、この値段だ。


 気になってふと学食のカウンターを見てみると、運動部らしき上級生の人が、一人で2枚や3枚も注文している。確かに、もう1枚食べたくなる美味しさだ。


 田中さんと中田さんも学食は初めてみたいだが、二人も「美味しい!」と口を揃えている。


*****************************


 「どう?りえち?アン◯サとチキンカツは?」

 「美味しかったです!」

 「田中さんと中田さんは?」

 「「美味しかったです!」」


 京ちゃんがドヤ顔をしている。


 「いやー、三人とも、普段お弁当じゃない?一度このチキンカツを食べさせたかったんですよね。」


 なるほど、それでご満悦と。確かにたまに食べたくなるね。この味は。


 「ありがとうございます!また一緒に食べたいです!」

 「いいんだよ。こっちこそ付き合ってくれてありがとうね!さーちゃん!うーちゃん!」


 さーちゃん?うーちゃん?


 「…りえち。田中さんと中田さんの名前分かります?」

 「…。」

 「りえち?どうせ知らないんでしょう?」

 「…ごめんなさい。利香ちゃん。」

 「謝る相手が違いますよ?田中さんと中田さんに謝ってくださいね?」

 「ごめんなさい。田中さん。中田さん。」

 「いえ、こちらもちゃんと自己紹介したことなかったですよね?」「気にしないでくださいー。」

 「もっとクラスの人と、仲良くした方がいいですよ。」

 「…はい。」


 ごめんなさい。


 「田中佐江(たなか さえ)です。さーちゃんと呼ばれてます。」「中田実右(なかた みう)です。うーちゃんと呼ばれてます。」

 「あぁ、なるほど…。改めて、黒川理恵です。よろしくお願いします。」

 「「よろしくね!りえち!」」


 既に私の愛称が定着している。…ところで。やっぱり疑問なんだよな。


 「ところで。やっぱりアン◯サってなんですか?いえ、もう飲みましたけど、白い炭酸飲料なのは分かりましたけど。」

 「◯ンバサは、◯ンバサだよ?」

 「スーパーにも売ってるじゃないですか。」

 「むしろ本当に、今まで飲んだこと無いの?」

 「美味しかったですよね?」

 

 …美味しかったよ?でも本当に?まじ?皆知ってるの??

新作あり〼

触手 in クーラーボックス(仮)

https://ncode.syosetu.com/n1200kj/

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
アンバサを初めて飲んだとき、こんなうまいものがあるのかと子供ながらに思った 大人になってからは、あー売ってる!で買わずに終わる
アンバサ。人々の前から姿を消した神が最後に発した言葉、、、じゃなかったっけ? 神職の人がよく言ってるよね
アンバサ、試される大地では普通に自販機でうってたりします。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ