なんか全部白いやつなんですけど
本当にあります。
「はい、130円ね!」
あれから、全員が合流して、皆で上級生の塊の中になんとか入り込んだ。このご時世では珍しくなった、まさに押し合いへし合いの中なんとか、窓口に到着して、大声でチキンカツをそれぞれ注文する。代金は130円。事前に小銭を準備しておき、アルミホイルにくるまれたチキンカツと、130円を交換する。
ほんの僅かな時間だったけど、チキンカツ一つのために、ひどく疲れた。…強化魔法は使えないけど、『プリミティブ』で防御力を高めた方が良いかもしれない。次があるのかはわからないけど。
学食は一人とは言え、かなり人気なようで、既にかなり席が埋まっている。6人で確保できる席がなさそうだ…と思っていたら、ちょうど食べ終わった上級生が退席。ぴったり6人がけのテーブルだ。奏と京ちゃんが真っ先に席を確保する。
「「皆ー、こっちこっちー。」」
どうやら無事座れそうだ。
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チキンカツ(130円)は、結構な大きさがある。冷静になって持ってみると、意外にもずっしりと重たい。アルミホイルから、揚げたての熱々の熱が伝わってくる。これをガブッといくと、やけどしそうだな。飲み物がいるかも。
「はい、アン◯サ。私のおごりだよ~。」
「ナイス!カナカナ!」
奏が、人数分の飲み物を買ってきてくれたようだ。そういえば学食の入口に自販機があったなぁ。奏が買ってきたのは、缶の飲み物だ。ただ、「はい、ア◯バサ。」って当然のように渡されたんだけど、私はこの飲み物を知らない。
「…◯ンバサって何?」
「「「「えっ!?」」」」
どうやら知らないのは私だけのようだ。
「えっ、りえち、本気で言ってる?」
「りえち?アンバ◯知らないの?」
利香ちゃんと京ちゃんから突っ込まれる。いや、私からしたら、皆当然のように知ってるのが怖いんだけど。どうやら、周りの反応をみる限り、皆知っているようだ。
「あの、私達も知ってますよ。クラスの皆も、よく教室で飲んでいますよね?」
「っていうか、学食前の自販機は、全部アン◯サですよ。」
「学食のゴミ箱もほら、アレ全部ア◯バサの空き缶ですよ。」
田中田さんに指摘されて、入口の自販機とゴミ箱を見る。…本当だ。全部この白い缶のやつだ。えっまじで?そんなにメジャーな飲み物なのコレ!?
「ねぇねぇ、りえち。りかち。とりあえず、アン◯サについては後にしてチキンカツ食べようよ。冷めちゃうよ。」
「それはそうね。先にチキンカツいただきましょうか。」
「賛成ー!」
確かにそれはそうだ。先にチキンカツを食べてしまおう。
「あ、そうそう、りえち。」
「どうしたんですか?」
「気をつけてね。」
「?」
とりあえず、チキンカツにかぶりつ…熱っ!?
「あー、やっちゃった。」
「初めては皆そうなりますよね。分かります。」
「あー、もったいない。」
かぶりつくと同時に、中から熱い肉汁が吹き出した。めちゃくちゃ熱いねコレ!?…あっでも、すごいチキンカツってパサパサしてるイメージがあるのに、ものすごくジューシーだ。中から溢れる肉汁がそれを証明している。サクサクの衣を噛み砕くと、口の中が肉の味いっぱいになるのに、チキンカツだからしつこくない。
見た目わりと平べったいのに、ぎっしり詰まっているというか食べごたえが凄い。そして、皮がパリッとして、なんとも言えない美味しさだ。なるほど、この人だかりの意味が分かる気がする。そして、この値段だ。
気になってふと学食のカウンターを見てみると、運動部らしき上級生の人が、一人で2枚や3枚も注文している。確かに、もう1枚食べたくなる美味しさだ。
田中さんと中田さんも学食は初めてみたいだが、二人も「美味しい!」と口を揃えている。
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「どう?りえち?アン◯サとチキンカツは?」
「美味しかったです!」
「田中さんと中田さんは?」
「「美味しかったです!」」
京ちゃんがドヤ顔をしている。
「いやー、三人とも、普段お弁当じゃない?一度このチキンカツを食べさせたかったんですよね。」
なるほど、それでご満悦と。確かにたまに食べたくなるね。この味は。
「ありがとうございます!また一緒に食べたいです!」
「いいんだよ。こっちこそ付き合ってくれてありがとうね!さーちゃん!うーちゃん!」
さーちゃん?うーちゃん?
「…りえち。田中さんと中田さんの名前分かります?」
「…。」
「りえち?どうせ知らないんでしょう?」
「…ごめんなさい。利香ちゃん。」
「謝る相手が違いますよ?田中さんと中田さんに謝ってくださいね?」
「ごめんなさい。田中さん。中田さん。」
「いえ、こちらもちゃんと自己紹介したことなかったですよね?」「気にしないでくださいー。」
「もっとクラスの人と、仲良くした方がいいですよ。」
「…はい。」
ごめんなさい。
「田中佐江です。さーちゃんと呼ばれてます。」「中田実右です。うーちゃんと呼ばれてます。」
「あぁ、なるほど…。改めて、黒川理恵です。よろしくお願いします。」
「「よろしくね!りえち!」」
既に私の愛称が定着している。…ところで。やっぱり疑問なんだよな。
「ところで。やっぱりアン◯サってなんですか?いえ、もう飲みましたけど、白い炭酸飲料なのは分かりましたけど。」
「◯ンバサは、◯ンバサだよ?」
「スーパーにも売ってるじゃないですか。」
「むしろ本当に、今まで飲んだこと無いの?」
「美味しかったですよね?」
…美味しかったよ?でも本当に?まじ?皆知ってるの??
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