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殿下、あなたの悪事を暴き、私は必ず運命を変えるので覚悟してくださいませ!  作者: 音無砂月
本編

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「・・・・・どうして、ボルドーが」

「それはこっちのセリフだ」

公爵邸を訪れたザイード殿下を公爵家の者たちと一緒に出迎えた。ザイード殿下側の護衛騎士の中に見覚えのある顔があった。

「あなたが噂の夜の女神ですか?」

ザイード殿下はとても興味深そうに私を見つめる。私は子爵令嬢だった時に習ったマナーを思い出しながら礼を取った。

「本当に平民なのか疑ってしまうぐらい板についていますね」

しまった!不自然だった?いや、でもまだ誤魔化せるはずだ。

「私は公爵閣下にあなた様の護衛として雇われた身です。閣下の顔に泥を塗るわけにはいかないので」

「そのために身につけたんだ。さすがは夜の女神。プロ意識の高さが違うね」

「それは俺に対する嫌味ですか、殿下」

「嫌だなぁ、誰もそんなこと言ってないでしょう。自意識過剰なんじゃないの」

にっこりと受け流す殿下に対してボルドーは顔を引き攣らせているけど険悪な雰囲気は感じない。随分と親しげだ。

「でもまさか公爵が夜の女神を雇っているとは思わなかったな」

「彼女はちょっとした知り合いでして。ですので、唾つけはご遠慮願いたい」

「残念、優秀な子は一人でも多く引き入れたいのに」

公爵は私を殿下の護衛として、殿下はボルドーを自分の護衛として雇ったということはやはり何かあるのだろう。ここまで警戒しなくてはいけない何かが。おそらく、殿下は命を狙われている。

記憶を辿るのならナハト側の人間になるけど、裁判もなく処刑が決まったことを考えるとあの高位貴族が殿下を殺したという事実も、事実かどうか怪しい。

殿下は殺された。護衛騎士も含めて生き残りはいない。

・・・・もし、あの時もボルドーが雇われていたのなら彼も殺されたということだろうか?

「っ」

落ち着こう。前回と違う点がある。それは私がいるということだ。どれだけの手練れが送られてくるかは分からない。それでも必ず守り通してみせる。ボルドーも含めて。必ず。

「ボルドーとは旧知の仲なんだ。子供の頃に命を救われたことがあってね」

「そうなんですね」

「立ち話もなんですし、入りましょうか。邸を案内します」

公爵の言葉を合図に私たちは動き出した。まだ邸の外にも中にも不穏な気配はない。

「まさか、ここで会うとはな」

閣下は仕事があるので退席し、旅の疲れをとってもらうということで殿下は部屋で休むことに。ラッサールも部屋へ戻った。

殿下の部屋の中は自国から連れてきた護衛騎士と侍女が、外を私とボルドーで守ることになった。

「閣下は念の為だと仰っていたわ。あなたも同じことを言う?」

自国の騎士に冒険者ランクA のボルドーまで。閣下は私を雇っての護衛だし、ここまで来るとやはりザイード殿下は何かしらの情報を掴んでいるということだろう。それも自分の命に関わること。

「お前の予想通り、殿下は命を狙われている。それもナハトからな」

「っ」

見たことがないはずなのにザイード殿下やボルドーの死んだ姿が目に浮かんできた。

「犯人は、分かっているの?」

「・・・・いや。自国にいた時も何度か狙われていたようだが、ナハトに入って顕著になった」

「だからナハト側の人間が犯人というのは安易じゃない?」

確かに私が知っている情報では、犯人はナハトの高位貴族だったけど。

「捕まえた人間がナハト人で、尋問の結果それなりに地位のある人間に雇われていたことが分かった。依頼書も見つかった」

「ナハトに抗議はしなかったの?」

犯人が捕まったという情報はない。

「何もアクションはしていない。捕まったのも、証拠が見つかったのもあっさりし過ぎてて腑に落ちない」

「ナハト側の責任にしたい第三者がいる可能性があるということ?もし、殿下が亡くなれば戦争になる可能性もある?」

私が死ぬ前は戦争になった。だからこそ今の私があることを考えると皮肉ね。

「戦争か、なくはないな。漁夫の利を狙う第三者の陰謀かあるいは両国のどちらかに戦争を起こすことで得する誰かがいるのか。シュテンゲートではそこら辺の調査を初めている。ただ、ナハトには何も伝えていないそうだ。殿下が、今の王太子は信用ならんと」

「・・・・・イヴァン殿下」

私を地獄に落とした人間の一人

「陛下は公の場に出なくなって暫く経つしな。病気だとは公表してはいないがな」

表向きは何れ王になる殿下のために早めに仕事を引き継ぎ、バックアップをしているということになっている。

「イヴァン殿下が王宮を掌握している以上、下手な情報は与えられないだろ。現状はシュテンゲートだけで調査をしている」

「・・・・閣下はこのことを?」

「お前の雇い主か?知ってるだろうな。国が抱える闇の深いとろこに触れるからお前には教えたくなかったんだろうな。かなり気に入られてんじゃん。本当は護衛も任せたくなかったんだろうな。でも、公爵としてはそうはいかない。ザイード殿下が殺されれば開戦の可能性もあるから」

せっかく気遣ってくれた公爵には悪いが、私は無関係でいるつもりはない。

「その話しを私にするということは、ボルドーは私を巻き込む気満々という認識でいいの?」

「この先、絶対にお前の戦力は必要になる。俺はそう確信している。どうする?無理強いはしない。さっきも言ったように国の闇に関わってくる。魔物を退治する時とは別の恐怖がある。頭がある分こっちの方が質が悪いだろう。公爵閣下がお前にそこまで関わることを望まなかった理由もそこにある。醜悪で異質な闇だ。どうする?」

知っているさ。嫌というほど。その闇に私は殺されたのだから。だからこそその闇を白日の元に晒す。

「殿下の護衛及び犯人の確保、ただそれだけのことでしょ。それでもあなた一人では難しいのなら手伝ってあげる」

「生意気」と言ってボルドーは私の頭を小突く。少し笑った後、真剣な顔で私と向き合う。

「本当にいいんだな?国の暗部に首を突っ込めば引き返せなくなる。全てが終わっても今のような暮らしができなくなる可能性だってある」

同じだ。

未来が変わってきてはいるからと言って私の最期が変わっているという確証はない。ならば元凶であるイヴァンをどうにかしなくては私の平穏は訪れない。ならば、この程度で臆するはずがない。

「蚊帳の外でヤキモキしながら成り行きを見守るのは御免よ。それに、どこで生きようと私は私であることを止めるつもりはない」

自分の意思を貫き通す。それが今の私の生き方だ。環境が変わろうとそこを変えるつもりない。そう、決めた。

「そうか。なら、二人であの王子様を守りぬいて、ついでに俺たちの平穏をぶっ壊す奴らをぶちのめそう」

かなり重たい話しなのにボルドーが言うと国がかかっているなんて思えないぐらい軽くて笑ってしまった。

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