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 皆さんこんにちは。7回目です。


 イザボー皇太后に呼び出され王宮に舞い戻り、そしてアデルの部屋から出ようとしたところで、悪魔憑きの状態の何者かに刺された。多分死んだ。


 多分というのは今も生きているからだ。

 あの次の瞬間。気が付いたらその日の朝に戻っていたのだ。王宮に向かう準備をするためにもそもそと置きだした瞬間。今度はそこに、刺殺されるまでの記憶が加わっていた。でも誰かに殺されたかは、顔が見えなかったためわからない。


 いや、正直誰が私を殺したのかということが吹っ飛ぶ大問題が発生している。いやそもそもこれはループしたということでは?と気が付いたのだ。

 ただでさえ、自分が死んで、ゲームの世界に飛ばされるという訳のわからない状況下なのに、ここにループまで加わるとか、ヤバ案件のエレクトリカルパレードか。


 かといってそれの「なぜ」を考えてもわかる気がしなかった。致し方ない。難しいことを考えるのはそこでやめて、とりあえず生き延びることとした。気持ちの切り替えはビジネスでも大事だからね。

うっすらと、(もしかしてアデルの行方不明と関係しているのでは……)という気付きはあったものの、それ取り掛かると面倒以外の何ものでもないので、気が付かないふりをしていた。


 だから今度は王宮に行くことを中止して修道院に立て籠った。イザボー皇太后の呼び出しに行かなかったのだ。我ながらそれもクソ度胸であるが、王宮に行くということが引き金になるのかと。そしたらその日のうちにどこからともなく悪魔憑きが現れて、また刺されて殺された。


 3回目には仕方なくまた行ったのだがやっぱり同じところで殺された。4回目は注意深く王宮の女官と行動を共にしていたのだが、周囲に人気がなくなった一瞬をついて女官もろとも殺された。女官ごめん。


 イザボー皇太后に面会の時に「恥ずかしながら、宮廷内にはわたくしのことを快く思っていない方もおりますでしょう。護衛を付けていただけませぬか」と申し出たら、承ってくれたけど「では明日にもお前のところに向かわせましょう」とか言われて、ちげーよ!今だよ今!ここを出る前に付けてくれないと困るんだよと、オブラートに包んで重ねたけど間に合わず、また死んだのは前回。


 マルグリットは悪魔祓いの才能がある。なんだけど、急に通り魔みたいに襲われると、対応できないのだ。悪魔祓いは、憑かれている者を拘束して、それで聖句の詠唱により行われるものだからだ。

誰か腕利きの屈強な男でもいればいいのだけど、マルグリットが無防備な時を狙ってくるから、聖句を唱える暇がない。


 ということで、トライ&エラーを繰り返して、ついに7回目。

 もう保身を考えてもうまくいかないし、そうなると手近な怪しい目標はアデル探しだし、それを実施するにあたっても、とにかく身の安全を図らないことにはどうにもならん。

 私はやけくそ交じりな行動にでたのだ。


「お久しゅうございます」

「マルグリット殿!?」

 イザボー皇太后の部屋を出たら、王宮本館の彼女の部屋ではなく、騎士団の駐屯所に向かった。なるべく人の多いところを通って、足早に。

 イザボー皇太后との対面を終え、アデルの捜索を頼まれた私が向かった先は、攻略キャラその一、騎士団長エルキュールのところだ。




 攻略キャラ一、騎士団長エルキュール。


 正直、一番人気ではない。「いい子だよね~」「好き~」「かわいい~」という声は有れど、だ。多分原因は、マジで裏表のない朗らかいい子で、落とした時のギャップ萌えが少ないからじゃないかなと思ったりする。


 これの開発に関わった子と話したことがあるけど、他の攻略キャラがクセ強だから、一人ぐらい素直にしておいた方がいいだろうという話があったとかなかったとか。でも乙女ゲーの攻略キャラ的には人気が無くても、結婚するなら絶対彼だと思うんだ。素直さとかこじれてない性格とかは大切だ。


 割とがっしりした体つきで長身。体格は攻略キャラの中で一番いい。短髪の赤毛で瞳は茶色。ワンコっぽい可愛さがある。歳は25歳くらいの設定だったか。

 私が彼のところに来たのは、その気立ての良さにワンチャン賭けたからだ。


 騎士団駐屯所は、王宮でも比較的入口近くにある。騎士と話をしていた彼は私の顔を見たとたんに名を叫んだ。それからはっとしたように口をつぐむ。

 マルグリットがこの王宮から退去してしばらくたつのに顔を覚えていてもらえたのは幸先がいいぞ。それに当時はエルキュールはまだ十歳そこそこ。彼もまた貴族の出自だから、子供ながら王宮に出入りしていて、その時にすれ違ったり紹介し合ったりくらいはあったのかもしれない。


「ごきげんよう、騎士団長エルキュール様」

 たいそう若くして騎士団長なのは、まあ貴族の若者の名誉職というところでもあるからだ。戦術戦略についてはこれからであろうが剣技は天賦の才を持つと聞いている。


 私は王宮内での貴族女性の挨拶……ドレスの裾をつまみ軽く膝を折って首を垂れる、今までマルグリットが何百回も優雅にこなしてきたあの挨拶をしようかと思ったが、己の着ているものが修道服だと気が付き、やめた。その代わりに清楚に見られるよう、体の前で手を重ね深々と頭を下げた。


「わたくしを覚えていてくださったこと、嬉しく存じます」

 エルキュールは、この数瞬で自分を取り戻し、静かに重々しく頷いた。

「お久しぶりです。ええと今は女侯爵ではないのですよね」

「わたくしはもう貴族位ではないのですよ。修道院に入る際に俗世の物は全て置いてまいりましたので」

「……失礼を」

 彼はぶしつけにならない程度にさっと私を眺めていった。

「修道院から出られることはあまりないと伺っております。王宮には今日は何かご用事でいらっしゃられたのですか?」


 いいぞ!エルキュール!可愛い!

 ゲーム公式でも愛妾なんて卑しい仕事を、という態度でマルグリットに当たる連中が多い中、ちゃんと礼儀を保っているところは最高だぜ!人間なんだからそうじゃないとな。会社だって嫌いな人間いてもみんななんとか大人の対応してるんだし。


「ええ、イザボー皇太后にちょっとした用事を賜りまして。ほんのしばらくではございますがこちらに留まります。朝に着いたばかりですの」

「そうですか」

 一拍置いて少し言いだしにくそうにエルキュールは問う。

「それで、私のところには一体どんなご用事で?」

 それはそう。

 私はにっこりと、なるべく感じが良く見えるように、微笑んだ。


「実は騎士団長殿に剣技をご教示いただけないかと」

 エルキュールは目を瞬かせた。

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