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#32 報復

 桔梗が右手を挙げると、ドス黒いオーラが桔梗の周りに立ち込めた。木々の枝や葉がざわめきだし、カサカサと音を立てる。


「なんだ? 何をするつもりだ」


「なんて邪悪なオーラなの」


 忠司と光樹は桔梗の攻撃に備えて、桔梗のことを注視しながら体を構えた。


「さあ、何をするでしょう」


 桔梗がニヤッと不敵な笑みを浮かべると、さらに二体の悪霊が現れて彼女の両隣に鎮座した。そして、桔梗が急に気を失ったように倒れていく。


「急にどうした……? まさか!」


「青龍」

「亀!!」


 光樹が青龍を使って、いきなり忠司を襲ってきた。直前に気がついた忠司が、形代を使って呼びよせた亀の式神を盾にしてそれを防ごうとする。しかし、青龍の攻撃は亀の装甲を貫いて直進していく。忠司は青龍が甲羅に衝突し一瞬の硬直したうちに、それを横に飛んで躱した。


「お前……光樹の体を乗っ取ったのか!?」


「ご名答。不意打ちは失敗か。でも、もうこれで、迂闊に攻撃はできないだろ?」


 光樹が……否、光樹の体に入り込んだ桔梗はニヤリと笑った。


「ゲスめ」


「陰陽師にそんな言葉をかけられるとはな。まあいい。潰し合わせてもらうぞ」


 目を見開きながらニヤリと口角を上げる光樹が、拳を構えて忠司に向かって走り込んでくる。忠司は右手でその攻撃を防ぐと、左手で着物の懐から呪符を取り出した。


「我、この者の動きを封ずる、急急如律令」


「む、」


 忠司が呪符を光樹に貼り付けて呪文を唱えると、光樹の体は一瞬硬直した。その隙に忠司は光樹の鳩尾に向かって突きを繰り出した。光樹が「ぐあっ」と嗚咽する。


「戻って来い、光樹」


「貴様、仲間なのに手加減しないのだな。そこは褒めてやろう。だが、後ろがガラ空きだぞ」


 すると、忠司の背後から現れた大きな悪霊が、丸々とした拳を忠司に振り翳す。


「あがっ!」

 

 悪霊の攻撃を受けた忠司は、殴り飛ばされて木に衝突し、その場に倒れ込んだ。


「ほらほら、ノビている場合ではないぞ」


 光樹が忠司のことを蹴り上げて、さらに連続で突きを喰らわせた。忠司は腕を前に構えてそれを必死に防ぐ。光樹は攻撃を続けながら高らかに笑った。それはさながら悪魔のようだ。


「鷹、鷹、鷹!!」


 やっとの思いで取り出した形代を三枚、忠司が宙に投げる。するとそれは鷹に姿を変えて、二羽は光樹に、もう一羽は先ほど忠司に攻撃してきた悪霊に飛びかかった。


「くっ」


 鷹が光樹の相手をしている間に、忠司が気を失っている桔梗の方をチラリと見る。彼女の体は、一体の悪霊によってしっかりと守られていた。

 あの悪霊さえなんとかして、桔梗本体を叩くことができれば光樹を正気に戻すことができるだろうか。

 忠司がそんなことを考えていると、二羽の鷹を振り払った光樹がすでに次の攻撃を仕掛けようとしてきていた。


「行け大蛇、あいつの体を噛みちぎってしまえ」


 光樹が五匹の蛇を呼び寄せて、忠司を襲わせる。忠司は体に纏わりついてくる大蛇を体術で振り解いた。しかし、大蛇は何度も忠司の体を這い上がっては絡みついてきた。


「ほらほら、私のことを忘れるな」


 大蛇を振り解くのに必死な忠司に、光樹が蹴りを入れる。


「ぐあっ」

 

 蹴り飛ばされた、忠司は地面に蹲った。

 下半身にも痛みを感じて、忠司はそっと痛みの元凶を確認した。脚に数箇所、蛇の歯形で穴が空き、そこからは真っ赤な血液が流れ出ている。

 くそ、頭がぼうっとしてきた。蛇の毒に侵されたか。

 忠司は目を細めながら頭を抑えた。悪霊の相手をしている鷹もそろそろ限界のようだ。部下の陰陽師たちも数多の悪霊に苦戦している。ここは早めに決着をつけなければ。


「どうした? もうお終いか?」


 光樹が忠司に近づいて、彼のことを見下した。


「いや、まだだ。まだ終わってない! 終わらせない!!」


 忠司は形代を取り出した。体力的にもこれが最後の大勝負。


「来い!! 朱雀!!!!」


 形代は朱雀の姿となり、悪霊が守る桔梗本体の方へと猛スピードで飛んで行く。


 頼む、とどいてくれ。どうか、この戦いを終わらせてくれ。


 しかし、そんな忠司の思いは届くことはなく、どこからともなく現れた青龍によって、朱色の大鳥の姿は一瞬にしてかき消された。

 忠司の顔は絶望に染まる。


「貴様は私の力を見くびりすぎだ。何百年もの恨みつらみをぶつけているのだ。そう易々とやられてたまるか。それに比べ、貴様はどうだ? 良いのは威勢だけ。昔の陰陽師となんら変わらない。成長していない。がっかりだよ」


 光樹は自らの首に両手を添えた。


「こいつの首をへし折る。貴様はそこで無様にみていればいい」


 両手に力を込めて、光樹の首が徐々にあらぬ方向へと曲がってく。忠司は毒に侵されて、もう足を動かすことはできなかった。


「やめろ……桔梗! やめろおおおおおおおおおおおおお!!!!」


「うばばああああああ」


 桔梗の本体がある方向から突然悪霊が呻き苦しむ声がして、光樹はそちらの方へと振り向いた。

 悪霊の姿が消えていき、黒い霊魂が落ちてゆく。その場の地面には、一本の虹色の矢が刺さっていた。


「悪霊は仕留めました。あとはお願いします。レイ」


「おおおおおおおおおおおお!」


 死装束姿の半悪霊少女、レイが桔梗の体を蹴り上げる。


「貴様! いつの間に!!」


 光樹が慌ててレイに駆け寄ろうとしたが、それは叶わなかった。続けてレイは桔梗の体に拳を振り翳した。


「目ぇ覚せ! クソ悪霊!!」


 レイの打撃は、気を失っている桔梗の鳩尾に綺麗に決まった。その瞬間に光樹は嗚咽して、そのまま倒れていく。そして、桔梗本体も「おえっ」と嗚咽声をあげながら目を覚ます。


「貴様がなぜここに? それにこの矢は……GHの?」


「あんたピエロの居場所を知ってるんでしょ? 力づくでも教えてもらうよ」


 苦悶の表情で腹を抑える桔梗に向かって、レイは睨みつけながら拳を構えた。

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