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33.仕立て屋ロザリー



「こ、こんにちわ〜……」


 ドキドキ高鳴る胸を抑えながら、仕立て屋ロザリーと書かれた扉を開いた。

 すぐに中にいたご婦人と目が合うと、ご婦人は柔らかに微笑む。

 

 ここに来るのは二度目だ。一度目は下着を買いに来た時。その時、イラストの描かれた子供用の下着を薦められたことを思い出す。


「あらあら、今日はどうしたの?」

「今日は、あの……ドレスを……」


 ジオンにここで注文するように言われたけど、私みたいなちんちくりんに似合うドレスなんかあるんだろうか。

 ジオンが言うには、この仕立て屋の店主、ロザリー夫人は元々王都で有名なデザイナーであり、昔は流行りを牛耳ってブイブイ言わせていたらしい。歳を取って第一線から退いたが今でも実力はジオンの折り紙つき。

 横槍を入れて来たディラン曰く、幼い頃からジオンのスタイリストであり私には勿体無いくらいだそうだ。


「ドレス?あら……!あなただったのね!」


 目を見開いて、私を見る。


「ジオン様が夢中になってるって噂の女の子!」

「いや、それはどう……なのかな」

「もう!ジオン様も隅に置けないわね!こんな可愛らしい女の子に夢中になっちゃって」


 そう捲し立てながらも、私を色んな角度から見ていた。穏やかな表情見えるが、目は職人の目だ。


「さ!ジオン様から聞いているわ!舞踏会まで時間もないし早く仕立てないとね」

「よ、よろしくお願いします」


 あれよ、あれよという間に丸いお立ち台に立たされ、ロザリー夫人が取り出したメジャーで測られる。肩から袖口。腰から足首。首の長さ。指の長さまで。


「ジオン様からドレスは好きなものを着せるようのと言われているの」

「はい。好きな色を着ろって言われたけど、私そういうのよく分からなくて」

「好みの色はないかしら?」

「好みの色かぁ……」

「明るいのと暗いのだったら?」

「暗い方……かな。派手なのは似合わない気がするから、どちらかと言われたら地味目のドレスが」

「何言ってるの!可愛らしいお顔しているのに勿体無い!」


 ロザリー夫人は私をピシャリと叱ると、顎に指を添え私をじっと見つめる。


「でも、ジオン様の隣に並ぶと思うと、もう少し大人びた方がいいかしら……そうね、ピンクや暖色はなしだわ、あとフリルも少なく……ラメがいいわ、あれがいい!シースルーのレースよ」


 大きな独り言を言いながら棚を漁る。戻ってきたロザリー夫人の手には山ほど生地がのせられていた。それを一枚、一枚私の肩に這わせ、色を確かめる。

 この時点で入店してから優に一時間は越していた。

 私はてっきりもう出来上がってるドレスを買うんだと思ってたんだけど……様子を見る限り一から作るつもりだろうか。そんなことをしたら時間も、ジオンが出してくれるとはいえお金だって勿体無い。

 私は慌てて口を開く。

 

「あのっ!私、もう出来てるやつでいいです!サイズだけ直してもらえたら、それで!」

「何言ってるのよぉ!ジオン様から貴方に一番似合う最高のドレスを作れって言われてるのに!そんなことをしたら不敬罪でしょっ引かれちゃうわ!」

「そ、そんな」

「まぁ不敬罪は冗談だけど、ジオン様は奥方もいらっしゃらないし無駄遣いだってされないからねぇ。いい領主様なんだけど、たまには街にお金落として経済回してくれないと」

「何も私のドレスで経済回さなくても……」

「今回のことで一番喜んだのは宝石商ね。私もドレスに合わせる為に見せてもらったけど、素晴らしかったわ」


 そう言ってロザリー夫人はうっとりとした表情を浮かべる。私がなんのことだと首を傾げると夫人が言った。


「ジオン様が貴方の為に用意した、イエローダイヤモンドのネックレスとイヤリングよ」

「イエロー……ダイアモンド……」

「舞踏会当日まで街銀行の金庫に保管してるわ」

「ひぇ……」


 胃がキリキリしてきた……。いくらするかも想像できない高級なもん首と耳からぶら下げて、万が一落としたりしたら……ゾッとする。


「自分の瞳の色をプレゼントしたいなんて、ジオン様も……ふふっやるわね」

「ジオンの瞳の色……」


 金色だ。初めてジオンを見た時、目を奪われたほどのきらきらと輝く美しい色。

 私のちっとも輝かない真っ黒の目玉とは違う。


「色白で綺麗な肌に映える……決めたわ!」

「この色?……紺色?」

「こんいろ?これはエンペラーブルー。青の王様と言われるだけあって一番美しい青なのよ」


 元の世界でいう紺色に近いが、ムラもなく色がしっかりと染まっており生地も上質なのが見るだけでも分かった。その生地の上に、細かい上品なラメが散りばめられた薄いレースを被せる。


「このドレスに金色の宝石……素敵だわ……」

「色も派手じゃなくて上品だし、確かに素敵……」


 私だって一応レディだ。

 自分に似合う似合わないは別として、ドレスや宝石が嫌いなわけじゃない。

 二人揃って、うっとりと生地を眺める。そして何か思いついたようにロザリー夫人が手を叩いた。


「そう!テーマは夜空のお姫様!きらきらと輝く満面のレースの星空に一際眩しく光るジオン様のダイアモンド!なんて素敵なのかしら!ふふっ!こうしちゃいられないわ!任せてちょうだい!」


 才ある職人とは、多分こういう人のことを言うんだろう。

 ロザリー夫人はスケッチブックを引っ張り出すと、私を店から追い出す。私に子供用パンツを勧めていた人と同一人物と思えないくらい、その目はギラギラと燃えていた。

 邪魔をするなということなんだろう。

 なんかジオンの知り合いというか、ガルシアの人々ってこういう人多いな。こう、なんていうかな。我が強いというか、我が道をいくというか。


「ジオンに一応お礼言いに行こうかな」


 ドレスを注文したって報告もしなきゃだし。


 でも、あれだけ気が重かった舞踏会が少しだけ楽しみになった気がする。

 私は来た道を戻ると、ジオンの城へと足を進めた。

 


ブクマ、評価、いいね、ありがとうございます!!

6月中にはなんとか完結したいと思っています。

お付き合い下さると嬉しいです(*´꒳`*)

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