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21.ガルシア城


 結局、いつもの如く私にNO!とは言わせず、夕方になるとお風呂を借りにコトラとクロウも連れてジオンの城へ続く道を歩いた。


「ナンデ、ワザワザ……」

「仕方ないじゃない。外で入るの危ないって言うんだもの」


 鞄の中にはタオルと瓶に詰めたフラワーソープ。そしてヘアオイル。あと、コトラのブラシも忘れず持ってきた。


 背の高い林の中の砂利道を歩いていくとすぐに鉄の柵で出来た裏門がある。


「お、魔女さん来たな」

「お疲れ様です、魔女さん」


 内側で裏門の守衛をしていた二人の兵士が私に気付き、重たい扉を開けてくれた。二人ともよく見る顔。うちに傷薬やエナジードリンクを買いに来るお得意さんだ。


「ジオン様から城の入り口まで案内するように言われてますので。行きましょうか」

「よろしくお願いします」

「がーうッ!」


 コトラもヨロシクとばかりに右前足を上げる。ここの兵士さんたちはコトラを怖がることもなく、むしろ私に隠れてこっそりパンをあげていたりするので(双子に至ってはたまーにコトラを枕にして庭で昼寝してる)コトラは兵士たちが大好きだ。


 前に来た時も思ったけど、辺りを見回しても無骨な石造りの城で迷子になりそうな気しかしない。目印になるような華やかな花壇はなく、地面も硬い石畳。なんていうか……ザ!男の城!という感じ。そんな城の庭を一人の兵士に連れられるようにして歩いていく。


「入隊したばかりの新人は必ず迷子になるんです」

「全部同じ色の石造りですもんね」

「魔獣の森のそばだから一番頑丈な石で建てられてるんですよ。敷地内には兵舎と演習場も隣接していて、たまにジオン様も参加されるんですが」

「領主なのに?」

「もちろんです。我らの大将ですから。しかし、ジオン様が強すぎて、ほんと……もう」

「ボコボコ?」

「ええ。魔女さんの傷薬がよく売れる日がその日だと思って貰えれば」


 そう言って悪戯っぽく笑った兵士。兵士服を着ているせいで気づかなかったけど、かなり若い。たぶん十代だ。


「大変なのね」

「ハハ、でもジオン様の元で働けるなんて光栄なことです」

「魔物討伐したり大変じゃない?」

「確かに危険はありますがその分賃金は高給ですし、なによりジオン様直属の兵ですから。毎年採用試験がありますが募集人員の十倍は応募者が来ます」

「そんなに!?」

「応募してくるのも文武に優れた優秀な方たちばかりです。今でもどうして自分が合格できたのか不思議なくらい」

「それをいうなら双子の方が不思議だわ」

「おふたりは本当に強いですよ。ジオン様に信頼される方たちで、とても憧れます」


 使いっ走りの間違いじゃないのかと思ったけど、彼のきらきらとした尊敬の眼差しを見て、どうやら私が思ってた以上に兵士として優秀らしい。


「さあ、つきましたよ」


 大きくて豪華な扉の前に立てば、その扉は勝手に開かれる。そこから現れたのは執務服を身に纏ったホワイトヘアーのご老人。アンクルをつけて、とても品がある佇まいだ。私に向かって一礼すると、


「ようこそおいでくださりました。マコ様」


 穏やかな微笑みを魅せる。

 その一瞬で、私は私自身が何処ぞのご令嬢にでもなった気分になった。


「お、お招き頂き、あ、ありがとうございます……?」


 思わずモカちゃん(七歳児)の真似をして継ぎ接ぎだらけのスカートを広げ、ぎこちなくお礼をいうと、老人はくすりと笑った。


「私は執事長のセバルと申します。マコ様のことは主人からよく聞き存じておりますので、会えるのを今か今かと楽しみにしておりました」

「えぇ……それ絶対いい話じゃない……」

「いえいえ。お会いしてすぐに想像通りのお方と分かり安心致しましたよ」


 こんな貧乏少女風の私をみて安心するなんて……一体ジオンは私のことをどう話してるのか謎だ。


「さあさあ、どうぞ。中へお入りください」


 ここからの案内は彼、セバルさんがしてくれるらしい。私は振り返り案内してくれた兵士にお礼を伝える。


「また何かありましたらお声かけ下さい。では、失礼します!」


 さわやかな笑顔で敬礼した彼に手を振って別れると、城の中へと足を一歩踏み入れた。

 

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