13.レオとセオ
あれからというもの、双子の兵士。オレンジ髪のレオと緑髪のセオは、度々家に現れてエナジードリンクをせびってくるようになり、あまりにもしつこいので諦めて売る事にした。
モヘジマーケットで買ったミルク瓶にエナジードリンクを入れて、コルクでしっかりと蓋をする。一本、銅貨三枚。それが高いんだか、安いんだか分からないが売れ行きは上々だ。
たまーに後輩を連れてきてご馳走してやっているところを見ると、どうやら兵士として上の方にいるらしく、部下にはちゃんと慕われているようだ。
怪我をした兵士に傷薬を塗ってやると、たちまち兵士の中で評判になったらしい。双子が言うに、私の薬は魔物から受けた傷にいちばん効果があるようで、今や生傷絶えない兵士達の必需品になっているよう。こちらもひとつ銀貨一枚で飛ぶように売れた。
そのお陰で、なんとか生活苦には陥らず過ごせているけど……。
今日も今日とて、双子は仲良くやって来ると窓際にあるダイニングテーブルをぶん取り、エナジードリンクで乾杯している。
「ちょっと!ここ居酒屋じゃないんですよ!」
「イザカヤ?」
「あっ……ええっと酒場じゃないってこと!」
「そんなケチケチ言わないでさ!魔女さんも一杯やる?」
「やりません!エナジードリンクは1日一杯までですよ。飲みすぎると毒になりますからね。あと、魔女さんではありません!マコです!」
「はいはい、わかってますって。魔女さん」
「全然分かってない」
初めて出会った時、クロウがこの家を「魔女の家」と言ったせいで、私の呼び名は何度言っても魔女さんから変わらず。せめてもの救いは、本物の魔女だから呼んでいると言うより、愛称に近い感覚で呼ばれているということだ。
「しっかしな、壁の修繕が終わったと思ったら、今度は神獣の森の調査かぁ……」
「俺ら命いくつあっても足りねぇよな」
「神獣の森?」
「ほら、壁向こうの森だ。主が苛立ってんのか、魔物達が騒いでるみたいでさ。その調査に駆り出されるんだ」
家の後ろの林の奥に大きくて頑丈そうな高い壁があることは知っていたけど、その壁の向こうが神獣の森と恐れられる魔物たちの棲家だなんて……。
「兵士でもないのに魔女さんよくこんなとこ住めるよな」
いや……、知っていたら絶対住んでなかった。
基本的に壁はこのガルシア領の領主であるジオンの兵が護っていて、今は三百人程兵士がいるらしい。
その数はどこの辺境よりも多いそうだ。そんな強固な守りだけど、たまーに空を飛んで入ってくる魔物がいたりして、壁近くの森に住もうなんて思う住人はいない。と、いうのがここ最近常連の兵士達から得た情報だ。
「俺らばっかり危ないとこ行かされてジオン様の暴君!」
「ほんとジオン様の人でなし!」
双子が息を揃えて、ダン!と瓶を置いた瞬間、ゆっくりと音を立て家の扉が開いた。
「ほぉ。この俺が暴君で人でなしとはな」
扉から現れたのは、白いシャツをすらりと着こなした男性だ。しかし、がっちりとした広い肩幅と長身で、うちの扉が小さいのか少し屈んで長い足を家へと踏み入れる。
「「ジ、ジオン様っ……!?」」
男が外に跳ねた耳下程までの黒髪を指で掻き上げると、瞳が見えた。金色に輝く瞳。とても美しい人だった。




