12.双子の兵士
翌日。昨日のうちに作っておいた栄養剤を片手に、菜園をせっせと作りなおすことに。
分からないことがあればすぐに本が教えてくれて、昼過ぎには雑草畑だった菜園はきちんと列を成した薬草畑へと。
「あ〜腰が痛い〜」
まだぴちぴちの二十二歳。それでも慣れない畑仕事のお陰で身体が悲鳴を上げる。
ぐいっと伸びをすると空が見えた。向こうの世界と何一つ変わらない、雲一つない快晴。どの世界も、やっぱり青空は綺麗だ。
「カァ!侵入者!兵士ノ侵入者!」
「ええ!?」
(まさか……追っ手が!?)
のんびり暮らしをしすぎたおかげで、すっかり忘れていたけど……そういえば私、逃亡してたんだった。
「隠れないと……!」
「がぅ?」
慌ててコトラを抱き込み、家の中へと走った。家の扉を固く閉め、窓から恐る恐る外を覗く。
「あ〜だめだ、もうだめだ。もう歩けん」
「そんなん俺もだってーの」
「ちょっとこの辺で休んでこーぜ」
緑髪の男と、明るいオレンジ色の髪の男。双子だろうか。二人とも顔がそっくりだ。どちらもガタイがよく、屈強の戦士のように見えるが我が家の庭にごろんと寝転がる姿はなんとも情けない。
「(なんでウチの庭で寝るのよ…!不法侵入だわ…!)」
まあ、私にはなんの権利もないけれど…。
寝転がっている姿を見る所、私の追っ手という訳ではなさそうで少しだけ胸を撫で下ろす。
「カァーーッ!」
ホッとしたのも束の間、いつの間にか兵士の頭上を飛び回るクロウの姿を見て一気に肝が冷えた。
「此処ハ魔女ノ家!出テケ!出テケ!」
「おわ!おいっセオ!スピークビークが出た!」
「ほっとけ。最弱の魔物だ」
「カァーーッ!誰ガ最弱ノ魔物ダ!!!」
「おまえだよ」
ぺしんっ!と手で払われるクロウを見た瞬間、思わず家から飛び出した。
「ちょっと!!!」
「おわっ!だ、だれ!?」
「ここの住人ですが!」
「は!?ここ人住んでたの!?」
家と私を見て、目を白黒させるオレンジ髪の兵士。確かに外側はまだ何も手入れしておらず、相変わらず苔まみれで廃墟だと思われても仕方ないけれど。
「うちの可愛いクロウに向かって最弱ですって!?」
「いや、だってスピークビークだし……」
「なあ?」
「そんな失礼な事言う人はさっさと出て行ってくださいっ!」
庭の向こうに広がる林を指差し追い立てる。
「いや、頼むからちょっと休ませて……」
「俺らね壁に大きな穴が開いてるって修繕に駆り出されたわけだけど、次から次へと魔物が出てくるわ」
「もうクッタクッタなわけよ」
「だからってうちの庭で寝ないでください」
「あーもーだめだー」
「いまはむりぃ」
そう言って、また地面に沈んでいく二人。こんなとこでおちおち寝られたら堪ったもんじゃない。梃子でも動かなそうな二人に私は頭を抱えた。
(あ、そうだ!確か栄養剤の応用で……!)
魔女のエナジードリンク。材料は栄養剤と囁木の樹液、弾ける実一晩浸した水とレモン。材料は揃ってる。大丈夫、作れそうだ。
「じゃあ、ちょっと待ってて!」
私は慌てて家に戻り調合を始める。グラスをふたつ用意し、注いでいくとほんのりレモンの香りがする炭酸っぽいジュース。加えるだけの調合だから、あっという間に完成だ。
「はい!これ飲んでとっととお帰り下さい!」
「ん?」
「特製エナジードリンクです!」
「おっ助かる〜」
「おっサンキューな」
渡した瞬間、ぐいっとドリンクを煽った双子。私が言うのもなんだけど、飲む前にもう少し疑った方がよくないか?そう思うぐらいの飲みっぷり。
「ん!?」
「んん!?」
そっくりな顔を見合わせるとシューッ!互いの耳と鼻から湯気が立った。
「おいっ!煙出てるぞ!」
「おまえもだそ」
「つーかスゲェ!なんか……なんか俺!」
「おぉう……!俺もだっ!」
「「元気になった気がする……っ!」」
途端にキラキラとした瞳で私を見上げた双子。
「もう一杯くれ!」
「俺も!」
「ダメです!エナジードリンクは1日一杯までが限度です」
「ええ〜」
「こんな美味くて面白いのに……」
「元気になったのならさっさとお帰りください」
「ソウダ!帰レ!サッサト帰レ!!!」
グダグダと文句を垂れる双子をクロウと共に追い払う。最後に双子が私に向かって「また来るわ!」と笑顔で手を振ると、私は「二度と来るな」と笑顔で返した。




