天使!
「じゃぁ、お願いしてもい?会議室片づけてくるね!」
と、二人に手を振って会議室に向かう。……ちらりと振り向けば、二人が親し気に話ながら事務室に向かっているのが目に入った。
会議室に戻り、お弁当箱をかたずける。それからプリンの容器。
社長の食べた分も。
「あ……」
米粒を残さず綺麗に食べる人なんだ。
東御社長の新しい面を発見して、ちょっと楽しくなる。
「あれ?なんで、私は楽しい気持ちになっているんだろう?」
ゴミ箱にゴミを捨て終わり、カップを片付ける。
「どうしようか」
もう少し休憩とっていいよとは言われたけれど。
残業するよりも休憩時間返上で仕事をした方が早く帰れる。でも、せっかくの山崎さんの気遣い……。
ああ、そうだ。
1つやることが増えたんだ。
来週、東御社長と足を運ぶ場所を考えないと。
スマホを取り出す。
優斗の音楽を聴きながら「子供 遊び」と検索。
まずは近い場所から足を運んだ方がいいだろうと、地名を入力。
「ああ、懐かしい、ここ、優斗を連れてったわ」
懐かしい場所の写真を見て、小さかった優斗のことを思い出す。
真くんがこのころは生きていたなぁ……。
「あ、新しい場所ができたのね」
楽しそう。優斗が小さかったら、絶対連れて行ったのに。
……ちょっと行ってみたいなぁ。行ってしまおうか?
いや、私は案内役なんだから、知っている施設に行った方がいいよね。
「あっ!やばい!時間っ!」
うっかり思い出に浸ったり、新しい施設が気になったりしている間に、あっという間に時間が過ぎてしまった。
「ただいまー。ごめんね、買い物寄ったら遅くなっちゃった」
玄関のドアを開けると、優斗が玄関まで来た。
「おかえりなさい」
私が玄関に置いた2つのビニール袋を優斗がすぐに持ち上げると台所に運んでくれる。
くっ。なんていい子なのかしら。天使よ、私の子供は天使なの!
誰か、聞いて!ねぇ、聞いて!と、心の中で叫ぶ。台所からは冷蔵庫をバタんと開け閉めする音も聞こえてくる。買い物したものを片付けてくれてる?
え?うそ?
そこまでしてくれるの?いったい、どうしちゃったの?
「母さん、ご飯食べたらまた録音させて~、早く早く!」
と、声が聞こえてきた。
あ、そうですか。そのために……。私のためというよりは、自分のためなんですね。でも大丈夫。
自分のことすら自分でやれない残念な男の人に成長するよりは自分のことはきっちり自分でできる大人になってほしいんです。
……東御社長、ゴミをちゃんと片づけようとしてたよね。それに、よく見たら私のプリンの容器を自分の食べたプリンの容器に重ねてあった。
……私のごみも一緒に捨ててくれようとしていたんだよね。
東御社長も天使!
と、東御社長の顔が思い浮かんで赤面する。いやいや、年上の男性にむかって、何を言っているのか。
親ばか発動のついでに東御社長の株が上がるwww




