親ばかなんです
「収益化……したいんだ」
収益化?
「18歳以上じゃないと……収益化できなくて」
「何?お金が必要なの?いくら?母さん頑張って働くから、あ、大学の進学費用のことなら、学資保険にも入っててちゃんとためてあるからね?えっと、そ、それにほら、儲かる人なんてごくごく一部だよ?アルバイトでもしてコツコツ稼いだ方が……」
まさか、小学生の子たちが夢はユーチョーバーになることみたいな感覚なの?一攫千金目指してる?
「欲しいものがあるわけじゃないし、大学も頑張って国立合格できるように勉強する。それに、学校はアルバイト禁止だし……」
私立の大学でも、医学部など特別にお金がかかるところじゃなければお金のことは気にしなくていいのよと言ってあるはずなんだけど。
足りなければダブルワークでもして何とかするつもりだし。それこそ、若くはないとは言っても、優斗が大学出る頃に私はまだ40代半ばだから。それから老後のための蓄えをすることだってできるんだもの。
「じゃぁ、収益化とか考えずに、楽しんだら?上手く話せなくてもこんなに可愛いんだから、きっといいねしてもらえるよ」
ふるふると、PCの中の天使が首を横に振っている。本当にかわいい。守ってあげたくなるような子だ。
「でも、僕……少しでも稼いでお母さんを楽にしてあげたいんだ」
「え?」
「これなら、アルバイトじゃないから校則違反でもないし……今、人気は歌が上手いVTuberで、曲も作ってみたんだけど、僕、歌えなくて。母さん歌が上手いでしょ?……母さんのためっていって、母さんに頼むのもダメだなって思ったんだけど、でも……」
わ、私のため?
「優斗……?」
優斗が、ぎゅっと両手の拳を握りしめている。
ああ、これ。
優斗が何かを我慢するときの仕草だ。
私、また何かを息子に我慢させちゃうところだった。
やっぱりいいよごめんって。笑って言う息子の顔が思い浮かぶ。
「か、母さんも、おしゃべりとかは下手くそだからその、自信ないけど、歌なら、ちょっとは上手いって褒められるから、歌なら、協力するよ」
「ほ、本当?」
優斗が嬉しそうに顔を上げて、目を真ん丸にしている。PC画面のキャラクターも、同じような表情を見せた。
すごい、なんで動きだけじゃなくて表情もシンクロするんだろう。
機械音痴な私にはさっぱりわからない。というか、うちの子天才なんじゃないかな。
「よかった!母さんをイメージして作ったキャラだから、母さん以外の人だとイメージに合わないんだよね」
ニコニコと嬉しそうな息子。
え?この水色の髪の、優しそうな目元の天使のようなキャラクターが私をイメージ?
いやいや、全然似てないんですけど。どう見ても、似てないんだけど。
ああ、でも、優斗の優しそうな眼にはちょっと似てるかなぁ。
うちの息子、天才な上に優しいとか。それに、実は眼鏡をはずすとイケメンなんです。ええ、もちろん親ばか目線ですけどね!
「じゃぁ、早速お願いします!配信は毎週土曜日の夜8時から9時固定で、えっと、歌は生じゃなくて録音、あと、しゃべることに困った時用の台本も用意するから!まずは歌、これ僕が作ったんだけど、覚えたら教えて。はい、母さんのスマホに入れといたから、聞いて覚えてね」
……。
あれ?
なんだか、すごく準備万端では?