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「ほかには何かないか?府網さん」

 社長が府網建築に声をかけている。

 いや、もう判断材料としては十分でしょう。うちの負けですよね。部長もあきらめモードですよ。

「そうですね、次に打ち合わせる時までに考えておきましょう」

 次の打ち合わせですか。ここで振り落とされる可能性は全く考えていない発言ですよ。

「二棲さんはどうですか?」

 社長と目を合わすといけないので、視線は部長の手元あたりに落としていても、声の感じでこちらに社長が顔を向けたのが分かる。

 部長の手から力がふっと抜けた。

 ああ、もうこりゃ完全にあきらめたかな。

「いえ、その、私からはほかには特に」

 はい。答えも次までにと言った府網とは対照的に、ここでおしまいという気持ちが出てしまっています。

 さ、これで会議はおしまいかな。と、思ったのに。

「君からは何かないか?」

 ん?

 君って誰?

「深山くん、何かないかと、東御社長が」

 部長が私に小さな声で話しかけた。

 いや、なんで、私?

 部長だって、臨時で私を連れてきただけで、このプロジェクトにかかわってこなかったことくらい知ってるでしょうに。

「声を聴かせてくれ」

 はぁ。

「君の、声を」

 声っていっても……。どうしたらいいんだろうと、部長の顔を見る。

「あの、深山は、今日は私の手伝いで、その、普段はこの件には関わっていませんでして……」

 社長が黙ってしまっている私をフォローするように、説明してくれた。

 さすがに、ずっと下を向いていたのでは、東御社長を無視するような形になりそうなので、顔を上げる。

 うぐっ。

 オーラ全開の社長が、私の顔をガン見していた。

 視線、一瞬会った。

 すぐに、社長の目から少し視線を落として鼻先あたりを見る。

 今のは仕方ないよ。視線を合わすなっていうなら、こっち見ないで!

 東御社長が見てるんだし、指名されて、別のところを見てるわけにいかないんだし、不可抗力だよ。

 それにしても、やけに真剣なまなざしで私を見ていた。

 なぜ?

 もう、ほぼ府網に決定でおしまいじゃないの?今更、私の声を聴く必要なんてないんじゃない?

「あー、いや。こほん、そう、専門的な話じゃなくていい。その、女性の、ユーザー目線での意見も聞いておきたいんだ」

 なるほど。

 ここに集まっている中で、確かにプロジェクトにかかわっていない素人っぽいのは私だけだ。

「あの、私の意見が参考になるかわかりませんが……正直な感想を述べさせていただきます」

「ああ。ありがとう。うれしいよ」

 甘い声。

 私のこと睨んでた社長が出す声には思えない。


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― 新着の感想 ―
[一言] あ〜! アナウンサー声ってあるんですよね〜! 知ってる人にいます! それとは別に、他所の会社の話ですけど やたらと声がキレイで電話の受け答えの美しい女性がいたんですよ お客さんが来社すると…
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