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ガールズ・ゲームVR ーアストラル・アリーナー  作者: 草鳥
第三章 いろんなプレイヤー、いろんなわたしたち
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23.ランキングシステム実装!


 このゲームで最強になる――それがミサキの目標だ。

 ただ、最強とは何をもって最強と呼べばいいのか。この数万人アクティブのオンラインゲームでどうすればそれを証明すればいいのか……それがわからなかった。

 フランに聞いてみると、


「その辺にいるつよそーな奴片っ端から倒せばいいんじゃない?」


 などと投げやりな回答をくれた。

 ミサキ自身もそういう手段も考えなくは無かったが、最終手段にしておくことにした。どこの流浪の格闘家だ。

 かといって他にどうすればいいのだろうか。

 そんなもどかしさを抱えていたミサキだったが、ひとつの知らせが解決してくれた。




 ミサキ――神谷沙月は授業の終わりとともにスマホの画面を点灯させる。

 彼女の通う学校の校則は厳しくも緩くもない。スマホの持ち込みや授業外での使用は認められているが、派手すぎる着崩しやアクセサリー類は禁じられている、といった塩梅だ。


 神谷が左目に着用しているカラコンも本来は認められていないのだが、瞳を際立たせる目的ではなく目立つ瞳の色を隠す目的で使用されているため注意は受けていない。と言うより近しい友人たち以外は気づいていないだけなのだが。


「お、来たね」


 ミサキが覗き込んでいるのは『アストラル・アリーナ』の公式サイトだ。そこににアップデートのお知らせが更新されている。これからのアプデ予定を記したロードマップも気になるが後にしておく。

 一番気になるのは直近のアップデートの項目だ。


 そこには『ランキングシステム実装!!』という文言が派手なフォントで表示されている。

 なんでもこれからはトーナメントや期間限定イベントなどの実績によってランキングポイントというものが各プレイヤーに付与されるらしい。そのポイントが高い順に順位が設定され、月終わりごとの最終順位によって報酬が配布される――というものらしい。


 見ると上位の報酬はかなりおいしい。お金だけではなくレア度の高く優秀な装備までラインナップされている。このゲームは、突き詰めていくとレベルやステータスよりも装備の性能が重要だ。

 だから強さを求めるプレイヤーたちは精力的にダンジョンやトーナメントに挑む。それでもいい装備を獲得できる確率はかなり絞られているのだが……ランキングの上位報酬なら確実に手に入るうえに、これまで実装されていた装備よりもワンランク優秀だ。


 さらにランキングの実装に合わせて『指名バトル』というシステムも追加される。これはランキングが近い相手にバトルを申し込み、勝った方に大幅なポイントが追加されるというものだ。

 文脈から見るに、ランキングを上げるにはこのシステムの活用が近道になるだろう。


「これは荒れそうだなあ……」

 

 とにもかくにも、ゲームが大きく変化しそうだ。

 それがいいものか悪いものかはわからないが――ミサキ個人としては大歓迎だ。

 強い相手との戦いに想いを馳せ、思わず笑顔を浮かべる。


 そんな様子をクラスメイトたちは少し気味悪そうに見つめていた。






「ランキングぅ~? やんないわよ」


 今日も今日とてフランは釜をかき混ぜている。

 

「ほんとに? でもお金欲しいなら順位上げた方がよくない?」


 その疑問を聞いたフランはかき混ぜ棒を壁に立てかけ、


「何度でも言うけどね、あたしはお金が欲しいんじゃないの。稼ぎたいのよ――他でもないあたしの錬金術で」


「……なるほど」


「だからパス。まあ何か明確に目的があればトーナメントやイベントに参加することはあるかもしれないけどね」


 そう言って肩をすくめると、天蓋つきのベッドにごろんと寝転んだ。

 少し疲れているらしい。そう言えばここ最近はお客さんが増えて忙しかったようだ。そういう事情もあって解放した海岸エリアにもまだ足を踏み入れていない。今抱えてる仕事がひと段落したら、と言ってはいるのだが。


 それに、口にしている以外の理由もあるのだとミサキは思う。

 彼女は他人と戦うのがあまり好きではないようなのだ。モンスターだとか、いわゆるmob相手なら問題は無いのだが、対人戦となると気が進まないというか……もちろん先ほど言っていたように必要に駆られれば戦うこともあるだろうが、ミサキとは違って戦うこと自体を目的にバトルしたりはしないということである。

 

 ただ、これはミサキが彼女と接している中でそう感じたというだけなので、本当のところはわからない。合っているかもしれないし、もしかしたら別の理由があるのかもしれない。

 そしてそれをフランが口にすることは無いし、ミサキもまた深掘りするつもりもない。

 適度な距離感、というやつだ。


「ま、でもできる範囲で協力はしてあげるわ。約束――だからね」


「うん! よろしく」


 知らなくていいこと、知るべきではないこと。

 相手の全てを知らなくたって仲良くなれるし友達でいられる。

 そのことを、ミサキはよく知っていた。


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