その者、名を半額勇者といふ
たまには8割会話文で構成される小説があってもいいと思うんだ。
…小さな部屋で、少女は叫ぶ。
「呼び覚ませ、その力。今ここに顕現せよ!」
少女を中心として部屋に光が満ちる。
「我が主よ、力を貸したまえ……
今日の私のおやつである三個入りパックプッ○ンプリン(お徳用)を生贄に勇者を召喚!!」
その瞬間、豪風が吹き荒れた。
「成功だわ…!これで…私もやっと…!」
光と風が収まってゆく。
その全てが消えた時、そこには…なんやかんやで無駄に勇者勇者したシルエットがあった。
なんやかんやは、なんやかんやだ。
その正体とは、もちろん、恐ろしき魔王に支配されかけているこの世界を救う(予定)の勇者である。
説明が雑なのは語り手が面倒臭いというだけであり決して語彙力が貧弱とかそんなんじゃn(略
「あぁ、ついにこの世界が救われる日が来たのね…!これで私のプリンたちも報われるでしょう。さぁ、その姿を見せて、勇者…!」
「あの」
「それにしてもここまで来るのに本当大変だったわ。このプリンを買うためにタイムセールなる祭典で守護者であるOBA-CHAN達と戦ったり、
「ねぇ」
せっかく買ってきたプリンを腐らせないために高等技術である保存魔法と冷気魔法を組み合わせたREIZOUKOを開発したり…」
「あのさぁ!」
「きゃっ?!」
「いや”きゃっ”じゃねえよこっちはずっと話しかけてんだよ?! この…プリンまみれの状態で!!!」
「あ…あら、ごめんなさい、気づかなかったわ。えっと、貴方が…勇者なの…?」
「いや、飯食ってる時に呼び出されたから正直よく分からん。あれか?一世代前に流行った異世界召喚モノか?」
「それは…ごめんなさいね。でも今は、この王国の存亡がかかってる時なの。
どうか、どうか…その力を貸してくださらないかしら。」
「いやまぁ、それはいいんだが…実は洗濯物取り込むの忘れたから一回戻りてえ。」
「(゜д゜)?」
「あと明日の米炊く準備もまだなんだよね。」
「い、いやに家庭的な勇者ね。おかしいわ…事前調査だともっとなんか…こう、いい感じだったはずなのに。
いや、よく見たら顔もそんなにイケメンではない…?。
あっ、もしかして半額シール貼られたままだったのがいけなかったのかしら?。
やっべ、怒られちゃうわね、こんな勇者(苦笑)みたいなの連れてっちゃったら。」
「聞こえてんだよ全部!陰で悪口言い合う思春期女子よりよっぽどタチ悪いわ!」
「だって聞こえるように言ってるんだもの」
「うざっ!?」
「いちいちうるさい奴ね…半額勇者の分際で」
「悪かったな半額野郎で?!そもそもなんなんだよここ!こちとらただ飯食ってただけだぞ!
何も悪いことしてないのに!しかも今日はちょっと奮発してボ○カレーだったのにってああああああああああああああ!?そうだよ!ボン○レーレンジに入れっぱなしだ!」
「えっ、○ンカレー…?奮発して?奮発してボンカ○ー?え?嘘でしょ?」
「貧乏なんだよ、言うんじゃねえ。」
「うわ」
「言うんじゃねえって言ったろ?!」
「てへぺろっ☆」
「うざい!うざいよ何なのこの子?!そしていきなり呼び出された上にこの仕打
ちってナニ!!!」
「おぉ、貴方凄いわね。ツッコミきったわ。」
「あぁー…なんかもうめんどくせぇ。おら、早く話しやがれ。」
「私のスリーサイズを?」
「ちげえよ誰がそんなこと言ったよ?!何で超絶かっこいい俺がこんなチンケで辺鄙な片田舎に呼び出されたかって話だっつーの!」
「急に自己主張し始めたわね…。まぁ、いいわ。説明してあげるからそこにひざまづいて靴を舐めなさい。」
「いやですけど?!」
「あら、いつの間にそんなことを言える立場になったのかしら?
この…ちょっとプリン臭いわねあなた。滅んでくれる?」
「誰のせいや思てんねん」
「関西の人に失礼よ、死になさい。」
「ほんっと呼吸みたいに毒吐くなぁお前!と、とにかく俺はお前なんかの靴は舐めねえぞ?!」
「私の靴を貴方なんかに舐めさせるわけないでしょう汚らわしい。自分の靴を舐めるのよ」
「ただの可哀想なやつじゃねえか!」
「い ま さ ら (笑)」
「ああああもう!いいから事情を説明してくれ!!」
「えぇ…実は、実は私ね…その…初めて…なの…」
「誰がお前の下の事情を説明しろっつったよ?!」
「責任とりなさいよ…!」
「早くしろ(真顔)」
「アッハイ」
「よろしい」
「むぅ…もう少し遊びたかったのに。…しょうがないわね。いいこと?一回しか言わないから耳の穴かっぽじってよく聞きなさい。そう…あれは今から132ヶ月前のこと。」
「なぜ月数え。」
「お黙れ。…この世界はね、”魔王”という災厄によってその平穏を脅かされているの。現れたのはずいぶん前だけど、今もなおその勢力を伸ばし続けている、正体不明の、だけど正真正銘最悪の化け物よ。私たちは他国と力を合わせて対 抗してはいるけど、陥落されるのも時間の問題ね。…そこで、貴方なのよ。半額勇者くん。」
「はぁ…何だか妙にスケールのでかい話だな」
「半額についてはもう受け入れてるのね…。とにかく、ね。貴方は魔王に対抗し得る最後の手段としてこの天才美少女召喚士である私に呼び出されたの。
…どうかしら?ここまで、何とか小学生にも理解できるくらいまでには説明のレベルを下げ
てみたのだけれど。ごめんなさい、流石の私も猿語は習得していないのよ。」
「いや…なんか…もう…諦めるわ。」
「類人猿にしては賢明な判断じゃない」
「あっやっぱ無理だわうぜえええええええ!」
「堪え性のないやつね…。そんなんだからアッチの方も早いのよ。」
「今なら訴えても勝てる気がする。」
「ほんと口数の減らないやつ。ま、とりあえず現状把握としては十分でしょ。
ほら、そんなとこでおっ勃ててないで早く行くわよ」
「色々と言いたいことはあるが”突っ立って”だろ!」
「あら…お粗末(笑)」
「そっ、そんなことねえし?!…って、行く?どこにだよ?」
「Heaven」
「そっちのイくじゃねえんだよ!お前ほんとに少女なのか?!中身おっさんだっ
たりしないか?!」
「おっさ…?!い、いい度胸してるじゃない猥褻物の分際でェ…!」
「誰が猥褻物だ!お前の脳内の方がよっぽどR18じゃボケェ!」
「はぁ?!何言ってるのこの〔自主規制〕!!!」
〜しばらくお待ちください〜
「はぁ、はぁ、な、なかなかやるじゃないのよあんた。ここまでアツくなったのは久しぶりだわ…」
「お、前こそ…!…心の…友よ…!」
「キモいからやめてくれる?」
「人がせっかくノってやったのに何だその言い草は!」
「いや今そんなんやってる場合じゃないんで。国滅びかけてるんで。
ほら、ついて来なさい。」
二人は部屋を出た。
「おぉー…おぉー!すげえ!マジで異世界だ!」
「私はその喜びを共有することは出来ないけど…勝手に呼び出したのはこちらだものね。せめて楽しんでいって。」
「言われなくても!おっ、なんだアレ!アレ何だ!翼生えてんな!
アレか、ドラゴンってやつか!すげええ!」
「そりゃ羽は生えてるでしょうよ。ドラゴンだもの。この辺ではあまり見かけないけど…。
よかったわね。レアイベントよ。」
「いやぁ、いいなぁ、羽!アレで世界中を飛んでるんだろうなぁ!」
「いや、実際はそんなに羽は使ってないわよ?あの種族。」
「はい?」
「あなたは足があって歩けるからって国境をも歩いて超えるの?
そんなん疲れるに決まってるし、ちゃんとあるわよ、交通手段。」
「え…あ、うん…」
「それに今はあの姿だけど、普段は人型よ?」
「…」
「そりゃ、あの巨体だもの。そこにいるだけで他の者の邪魔になるしね。」
「で、でもさ!今は何であのドラゴンはデカい姿なんだ?! 何かしら役立てようと思ってじゃねえの?」
「あぁ、多分あなたがいるからよ。」
「??」
「あなたのような異世界だー、異世界すげーって騒いでる奴は大体観光客だからね。
ちょっとしたサービスで異世界っぽく見せてるの。」
「夢ねえなあ異世界…」
「失礼な。こっちだって財政難とか少子高齢化とか働き方改革とかで色々大変なのよ。
アレくらいはやらないと、魔王以前に社会問題で国が滅びるわ。」
「…なぁ、ここほんとに異世界か?実は映画のセットを使ったドッキリだったりしないか?」
「…?せっと?どっきり?何よそれ?」
「…いや、何でもない。おかしいのは俺の方なんだな、そうなんだな。」
「…???。何だかよく分からないけれど、まあいいわ。
それよりこれからの予定、というかあなたにやってもらいたいことを説明するわね。」
「ああ。勇者っていうくらいだから、魔王を倒すための旅でも始めりゃいいのか?」
「近からず遠からずってとこね。魔王を倒してもらうのはそうだけど、旅はしなくていいの。」
「旅はしないのか…」
「何で残念そうなのよ。はぁ…ま、とりあえずあなたは今から向かう塔にいる魔王をぬっ殺して欲しいの。」
「おー……ん…?…え、今何つった?」
「私、初めてなの」
「絶対ちげえだろ?!」
「今から向かう塔にいる”まおたん♡”を堕として欲しいの」
「言い方が危ない!あと名前ごまかそうったって無理だかんな!出会い系みたい
になってんぞ!」
「魔王と話し合い(物理)を」
「あれ、おかしいな。言ってることはまともなのに頭の中に変な補足が…」
「にんげんだもの」
「それ何言っても許される免罪符じゃねえからな。…って、こんなコントしてる場合じゃねえんだよ。お前、さっき魔王って言ったか?え?何?最初からクライマックス的なアレなの?バカなの?こちとら呼び出されて1日も経ってない異世界ビギナーだよ?リアルにビギナーズラックとかそんなんねえから。このままだと最初から暗いMAXみたいになるよ?いいの?鬱アニメとかによく付けられるタグだけど、この作品も鬱認定入るよ?軽快なコメディから一転、ドS女に不憫なイケメンがいたぶられるだけみたいになるよ?おそらくジャンルはサイコホラー。え、ちょっと何言ってるのか真面目に意味わかんないんですけど誰かこの人の言ってるこt
「長いわよ」
「いやいやいや!おかしいからな、最初からラスボスって!ラスボスっていうのは一番最後に出てくるからラスボスっていうんだよ!それが何、異世界に呼び出されてまず魔王倒してくださいってお前、何それ? 何、それ?!」
「文字通りよ。これから行く塔には魔王がいるからそれを倒してって言ってるの。
…ああ、能力的な問題って言ったら大丈夫よ。異世界から召喚された人は無駄に高ステータスなのと謎の固有スキルが約束されてるから。これは我が国の歴史的古文書にも書かれている由緒正しい事実よ。」
「ずいぶん俗っぽいなお前んとこの歴史。というか、そうなのか、へぇぇ…。
お、俺にもそんな力が…くぅーっ!やばいかっこよすぎるだろ!あと固有スキルだと!?
全人類の憧れである固有スキルだとぉ?!…な。なぁ。俺の固有スキルってどんなんなんだ?
身体強化系か、技能強化系か、はたまたバフ系の支援効果か…いやぁ、夢が広がるなぁ!」
「あらゆるものをプリンに変えられる能力ね」
「おぉーっ!プリンに変えられいやちょっと待て。一旦落ち着け。…プリン?
この俺が?プリンだと?何で?アレか?生贄がお前のおやつである三個入りパック○ッチンプリン(お徳用)だったからか?」
「いいえ、こればっかりはランダムだから…それにしても、プリン(苦笑)。
お似合いね(笑)。」
「くっそぉ…いや待て。あらゆるものってところは結構強くないか?
それにまだ何かしら隠された効能があるかもしれないしな!」
「…あなたのそのポジティブさだけは尊敬するわ。さ、一応伝えておくこともひと段落したけど…。
あら、いつの間にか塔の前まで来ていたみたいね。はい復唱。素晴らしきかな御都合主義。」
「素晴らしきかな御都合主義」
そんなこんなで二人は塔の入り口をくぐった。
「うっおおおお…。すげぇ!こりゃまさに最上階にラスボスがいる系のやつだな!」
「その感想はよくわからないけど…ここから先は気をつけて進むわよ。外とは全くの別物、それこそ別世界と言っていいくらい段違いに強い敵がわんさかいるわ。」
「お、おお…。かーっ、やっぱこんな時、特殊能力がバァーっと使えりゃかっこいいのに!
かっこいい…俺…俺のなんて…プリnうっ頭が」
「げ、元気出しなさいよ!そりゃ確かに、私にも、肉眼では視認できない大きさくらいは責任があるかもしれない気がするんだから!。
えっと、えっと…ほらアレよ!主人公が最初っから無敵、メアリースーじゃ読者はつまらないでしょう?!。それと同じよ!」
「お前は何に配慮してんだよ! こういう有りがちな英雄譚は主人公がチート持ってなきゃ始まんねぇお約束なんだよ!あと何プリン食ってんだお前!!!」
「あら、ごめんなさい…。なんで私がこんなやつ励ましてあげなきゃいけないんだろうって考えたら、プリンでも食べてなきゃやってられなくなったのよ。」
「追い打ちかけないでくださいますか」
「へっ」
「あーっ、今鼻で!鼻で笑った!こいつ!鼻で笑いやがった!
もう!もういいもん!ママに言いつけてやrうわああああん帰りたいよおおおおおママどこおおおお」
「引くわ」
「 」
「純粋にキモかった」
「…」
「あら…? も、もしかして、怒った?のかしら…?」
「ぼくゆうしゃ(仮)っていうの。おねえちゃんだぁれ?」
「なんだ幼児退行しただけか…心配して損したわ。」
「いや心配くらいしてくれろください」
「いつもと変わらないじゃない」
「◯ね」
「あーっ、今シンプルに!ストレートに悪口言った!こいつ!私に向かって罵倒しやがった!もう!もういいもん!ママに言いt
「ごめん俺が悪かったわ」
「わかってもらえたならいいわ」