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Kingship  作者: 三化月
三章 【現実世界と空想世界】
52/65

49話 「0604-2」

 教室から出た俺をササクラは待っていたのか、手招きをして人気のない場所まで歩いて行く。それに置いて行かれないように適度な距離を保って後を追いかける。彼女はいったいどこまで行くつもりなのか。

 校舎と校舎とを繋ぐ吹き抜けの通路までくるとその歩は止まり、背後に居る俺へと向き直った。

 「なんか用?」

 「お嬢様の事で少し」

 纏う雰囲気だけではなく、言葉にも棘が感じられる。ミツキがどうしたかを聞く前に、ササクラが「コスモス」のアイテムを使った。そんなに他人に聞かせたくない話しだとでも?

 俺の方でも人影を探して首を振るが、その動きは途中で止まる事になる。彼女が言葉を紡いだのだ。

 「勉強会ですが、その道中に気を付けて下さい。もしかしたら「コスモス」のプレイヤーに襲われるかもしれません」

 「コスモス」のプレイヤー。つまりは、俺やササクラと同じ様にゲーム内の力を振るえる存在が近くに居ると、彼女はそう言った。しかし、どうしてこのタイミングで言ったのか。警戒を促すならもっと先に言うべきだろう。

 「お嬢様と私は元々高知の方の中学に居たんですけど、その時に不審者に襲われました。私もがありましたからどうにか撃退はしたんです」

 「それがプレイヤー?」

 「おそらくは・・・、当時のレベルは90でしたが、それでも常人であれば敵ではありません。そこのところはキョウ君が一番分かってるかと」

 小さく頷く。ドラゴンでさえ単騎撃破が可能なレベル帯の人間が一般人にそうそう負けることはないのだ。であれば、その人間は間違いなく印持ち。

 「その人物の人相書きは東雲系列の人間に配っているんですけど、その人物に近い人間を仕事中に見た方がいるらしいんです。人相書きは後で送っときますからキョウ君も気を付けて下さい」

 「了解。俺も適当に探してみるよ」

 話しはここで切られ、何事も無かったかのように教室に戻るための順路を歩いて行く。内心では既に戦闘シミュレーションをしていて、色んな状況での動き方も考えた。ミツキやササクラには悪いけど、俺の気分は高揚していたのだ。非日常へと向かって歩いている事が、どうしてか嬉しかった。


 ―― 【笹倉 鈴音】メッセージが届きました ――

  <画像>

 ・身長165cmほどの男性

 ・革鎧メインの装備で、素材は竜種だと思われる

 ・片手剣、短剣、小型クロスボウによる近中距離戦闘スタイル


 学校が終わり、帰宅してからメッセージを開いた。

 それは黒髪、茶色い目をした男で、顔立ちも悪くはない。良くも無いが。プレイヤーネームが分かればまだ調べようもあるんだけどな。戦い方からして武器は一通り一定以上扱えるのだろう。問題は武器の切り替えがどれほど上手いかだが、正面からのササクラより強いのは確実。決して下手では無い程度の腕前は備えていると。

 「どう思う?」

 「至近距離からのクロスボウさえ気を付ければダメージは負わないかと」

 返って来た言葉はベッドに座る俺の前に立つゲンガーからだ。考える頭は多い方が良い。それが優秀であればあるほどにな。

 「変に盾を持たんほうがいいか」

 「視界は広い方がいいでしょうね」

 「なら両手剣かなー、あんまり得意じゃないんやけど」

 「ベル様と共闘するのであれば悪い選択ではないのではありませんか?」

 ササクラと共闘か。2人とも戦い方は被って無いし悪くはない。咄嗟に連携、ってのは難しいだろうけど、互いに隙を潰していく様に動けばどうにかなるんじゃないだろうか。一回練習をどこかで挟みたいけど、それに関しては丁度いいイベントがやってるしお誘いのメッセージを送り付けとこう。ゴブリン50体を2人で凌げるかな?


 直ぐに返信が来るわけも無いので、俺は俺で例の男を探してみる。

 アイテムで姿を消し、外に出てから取りだすのは【戦車のカード】。これは単純に脚に使おうと思っての召喚だ。普通の馬なら空は飛べないけど、この戦車は空も飛べる。戦車と言っても、外見は馬が車輪付きの台座を引っ張ってる物で、現代の戦車と比べるとどうしても見劣りしてしまう。「コスモス」なら条件次第で無双出来てしまうほどに強いんだがな。台車の見た目が本当に箱というのさえなければもっと人気も出るだろうに。

 装飾で誤魔化しきれてない箱にゲンガーと乗り、馬の手綱を握った。最終形態になると騎手が現れるから操舵する必要は無いんだけど、この状態では俺が操作するしかないらしい。まぁ、プレイヤーメイドの戦車と操作方が同じであれば俺でも出来る。

 空中へと駆けていく赤と青の二頭の馬。蹄が宙を叩けば、軽快な音が耳にまで届いた。ワンコインで購入した眼鏡に【鑑定】と【看破】を付けたモノを取りだし、ゲンガーへと手渡す。俺は俺でつけるものの、やはり安物だとかけ心地は微妙だ。

 「どちらまで行かれるので?」

 「ん?取り敢えず市内見て回って終わりかな」

 「では【鑑定】が弾かれれば報告いたします」

 そういえばホムンクルスのレベルはどうなっているんだろうか。そう思って【鑑定】してみると、彼女のレベルは90。プレイヤーとタイマンさせるには向いてないのか。おそらくこれ以上は上がらないのだろう。あくまでもサポート役、足りない手を補うためだけの存在だというなら、それはそれでやりかたがある。何事も使い方次第ってな。


 この日は見つからなかったが、今後もこの哨戒は続けていこうと思う。・・・普通に楽しかった。


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