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Kingship  作者: 三化月
二章 【新たな出会い 巡る線】
49/65

47話 「0509」

 誕生日会の日がやって来た。

 授業は随分前に終わっていて、今は東雲家所有の車で移動中だ。隣に居るミクはガチガチに固まっているが、確かに、緊張する場面ではある。さっき聞いた話しだと、どうやら報道陣が入っているらしいのだ。全国区の報道局が東雲家を追ってたところに誕生日会が合わさり、招待に与ったのだとか。俺達からしたら迷惑な話しでしかない。

 「大丈夫やろ、流石に幾らか規制入るやろうし」

 そう言ってミクを安心させようとみるけど、頷く彼女の動揺は止まらない。これは現地に行ってどうにかするしかないかな。


 俺が手紙を渡してからも、俺達の距離は変わっていない。ミクが手紙を読んでいるというのは確認したから間違いないけど、現に何かが変わったという実感はなかった。心内で何かが変わったというのなら、俺の言葉は無駄じゃなかったことになる。誰かを変えられるほどの言葉を俺が持っていた、と思えればいいんだろうけどさ、残念ながらそこまで自惚れてないからそう上手く考えるのは難しいだろう。

 自分の中で手紙を書くというのは、いい転機になったと思う。気分がスッキリしたというか、相手が俺を知ってると分かってるのが心に余裕を生んでる気がする。それはミクが俺に対して距離を取らないからで、これは彼女が変わらないでよかった点だ。だから俺も少しは心の距離を詰めれたと思う。

 普段と変わらないこの距離。でも、確かに俺達の距離は埋まってきている。


 東雲家に到着すると、この前やって来た時には無かった高級車が列を成していた。俺からすると「あぁ、車いっぱいあるなー」としか思わないけど、ミクの方は車種が分かるのか緊張が更に酷くなったように見えた。俺に何か出来たらいいんだが。

 あれよこれよとそのまま奥まで連れていかれ、鏡の前で着せ替え人形になること30分。そこから化粧を施されたんだけど、男に化粧ってどうなんだと思ってたら案外悪くない。元がいいわけじゃないものの、人並に見える程度の変化は起こってる。これならミクの方も楽しみだな。さぞかし別嬪さんになってることだろう。


 ・・・。

 「どうかな・・・」

 羞恥が混ざった、今にも消え入りそうなか細い声。もちろん、発したのはミクだ。

 ベージュのワンピースは彼女にとても似合っていて、思わず待機していた椅子から立ち上がって駆け寄ってしまう。化粧と、これは香水かな?いつもと匂いが違う気がする。こういうと変態チックか。

 「なんというか・・・綺麗?いや、綺麗なのは元からなんやけどさ、なんか、今までと違う神々しさを感じる?みたいな」

 「なにそれ」

 呆れた表情を浮かべながらも、彼女の頬はどこか上がってるような気がした。元気が出たのならいいや。それに越したことはない。

 「うわっ、凄い手触りいいな・・・シルクですか?」

 ミクの肩に触れてみて、そのあまりの肌触りの良さに俺の化粧を担当してくれていた人に振り返ってみると、その担当の人は微笑ましく頷く。

 「コスモス」にもシルクに似た素材が無いわけじゃないけど、流石に本物に勝てるほどVRは進歩してないのだ。

 「キョウ君も似合ってるよ」

 「あ・・・、うん。ありがと」

 「照れとん珍しいね、可愛い!」

 「照れてないし」

 ミクからこんなふうに外見を褒められるのは珍しい。赤くなっているだろう顔を化粧が隠していることに期待してあえて平常を装ってみても、彼女は分かってるんだろう。


 そうこうしている間に誕生日会は始まり、俺はミツキの手を引いて会場入りをする。俺達の後ろにはミクが大人しく付いてきているから、彼女の表情を見ることが出来ない。上手く笑えてるといいのだが。

 「キョウ君は緊張しないんですか?」

 隣に並び、俺に手を引かれるミツキが尋ねてきた。

 「割り切ればこんなのは雑音を出すモブでしかないよ」

 「まるでゲームみたい」

 「なら、ミツキはお姫様かな?」

 「なら君は王子様だ」

 互いに目を合わすことなく前だけを向いて歩いていく。偶に起こる、カメラの大きいフラッシュのお陰で光の調整が間に合わないのか、視界はずっと朧気なまま。人の輪郭だけが何となく分かる程度で、変に緊張はしていない。ミツキとは違って小市民の俺はこれぐらいが丁度いい。

 心を隠すことに関しては自信があるし、緊張は内面だけで抑えて笑ってれば乗り切れる。何の自慢にもならないんだけど、なんとも俺らしくていいじゃないか。

 それと、俺は出来れば騎士がいいな。ランスロットなんて名前まで貰ってるんだから、名前に見合ったそれなりの働きは果たせるだろうし。

 「後は予定通りに」

 「分かった」

 この後は化粧している時に聞いたとおりにスケジュールが進んでいくのだろう。まぁ、そんなに難しい話しではなくて、横で笑ってればそれでいいらしい。何か聞かれたら答えるようにと言われているけど、そんなに変なことは聞かれないと思う。ササクラもフォローしてくれるとか言ってたしな、今のところ姿は見えないが。

 「誕生日おめでとうな」

 「ありがとう・・・」

 どうせ後から言おうと思っても時間が取れないだろう。そう思っての言葉だったが、返ってきた言葉のなんと小さいこと。どうしたのかと横を見てみると、顔を赤くして俯くミツキが見えた。

 なんだよ。お嬢様だって普通に照れるんじゃないか。


 happy birthday to you

 16際おめでとう。女子はもう結婚出来る年齢か。もう少し、2年は少しじゃないけど、とにかく待っててくれや。

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