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Kingship  作者: 三化月
二章 【新たな出会い 巡る線】
32/65

30話 「彼女」



 徳島の中心地を縫うように伸びる線路図。それは先日隕石が落ちたという人工島とも大きな関りがある。

 2039年5月9日、倭国の王女として名高い卑弥呼のモノと思われる人骨が見つかり、発掘調査チームが編成されるのは時間の問題であった。

 ソレより少し遡るがどうか聞いてほしい。やはり順序だてて説明するのは理にかなっている。自分が理解するのにも、相手を理解させるのも、だ。


 ある日、どういう経緯でか地域の大学で卑弥呼について調べることになった。その過程で伝承と合致する場所を回るのは必然であろう。地元の協力も得ることが出来、比較的速やかに調査は終わろうとしていた。

 ・・・なのだが、果てしなく運の無いことに ―― いや、ある意味では運があったのかもしれない。

 南海トラフ地震が起こると同時に山が崩れ、謎の空間が現れたのだから。その場所こそが卑弥呼の遺骨が発掘された場所でもあり、新たな日本の始まりでもあった。

 遺骨も勿論大事なんだが、それ以上に価値のある金属が見つかったからである。遺骨の周囲に配されていた数々の祭具の幾つかから採取された金属片は磁気を吸収し、周囲に熱を放っていたのだ。性質としては黒体と呼ばれるモノに近く、確かに黒い金属であった。けれども、それだけで日本が変わるかと言うとそんなに簡単な問題であるはずもない。黒い金属にはもう一つの大きな特徴があったのだ。

 その異常なまでの熱伝導率はこうも言われる、熱量増幅特性と。詳しくは知らないので割愛させてもらうが、伝説に名高い日緋色金ひひいろかねと酷似した金属であることに違いは無い。現在では名称は改められ、「夜波金よはがね」とそう呼ばれる。


 それでなんやかんで当時の総理が血反吐を吐いて日本列島から隔離された海上でありながら、交通、流通の面で便利である四国にほど近い太平洋に人口島を建造しつつ、夜波金よはがねの錬成方法を探って今に至るのだ。

 電車すらなかった徳島にこうしてモノレールがあるのも、地震によって崩れた路線橋を物資搬送用として修繕した時の名残である。だから懸垂式のモノレールが多いのだが、今はどうでもいいだろう。

 今は、隣に座る彼女の誘惑をどう乗り切るかが火急の課題だった。

 「なぁ、ミクさんや」

 「なんでしょう」

 「これはそう・・いう事かえ」

 こうして俺が少しでも煩悩を感じまいと心頭滅却しているのは、全て彼女が原因でもある。坂上さかがみ美空みく、駅のホームで宣戦布告を仕掛けた人だ。

 モノレールに乗ってからも上手く俺の隣に陣取り、それはもう満開の笑みを浮かべている彼女がすべて悪いに決まっている。どこか猫を思わせる顔立ちでありながら、たおやかなでもあり、暖かい力を持っているのだからコレに抗おうと思えばそれなりの精神力が要るだろう。

 「べっつにー」

 まただ、彼女は太陽みたいな笑みを浮かべた。

 俺の手の上に重ねられた軟らかい手や、肩ごしに伝わってくる体温、鼻腔をくすぐる澄んだ匂い。そのどれもが俺を見入らせる。他の女子もどこか諦めたように距離を取り、憎らし気な視線を向けていた。

 「はぁ・・・」

 息を吐いてどうにか気持ちを切り替えてみようと心がけるものの、俺の身体は彼女のなすがまま。指なんかは当の昔に絡めとられ、ぎゅっ、と恋人繋ぎになっている。

 「積極的になったな」

 「ライバルが減った今こそがチャンス!・・・って思っとったんやけど、もーっ幸せすぎ!あんなこと言って貰えるとは思って無かったなぁ」

 肩に頭を乗せるミク。肌を撫でる髪の感触をどうにか堪え、もう一度心頭滅却に移る。

 思わず口をついて出た、「横取りされるのは嫌」発言がこうも効くとは思ってもみなかった。まぁ、深く考えずに言葉にした俺に原因があるのは分かってる。自業自得ってやつだ。俺の所有物だぞ!と認めてしまったのと何ら変わらないのだから。

 シオンとの接触もあってか、女性との接し方も幾分か分かって来た。妹に近いシオンとミクとでは違うというのは分かってるのだが、どうしても扱いが似通ってくるのはしょうがないだろう。

 日に照らされてオレンジになったミクの髪を撫で、俺は目を瞑った。


 「コスモス」にあるギルドホールを模した円卓、そこに俺は座っていた。前だけを向く俺の背後にはゲンガーが立ち、何の前触れもなく言葉を吐いた。

 「不審人物が1名居るようですが」

 ここは俺の心の空間。ボスカードシリーズの奴に教えてもらった、プレイヤーの力の本来の使い方。それの応用で作り出した体内空間とでもいうべき場所だ。

 「あからさま過ぎるだろ、あれは男ならだれでも気付くぞ」

 「同級の友だから手を抜いているのでしょうか」

 「んなわけ、だって【鑑定】が弾かれる奴やぞ」

 【鑑定】、【看破】、【隠密】。これらの効果はレベルが高い奴が圧倒的に有利を取れる仕組みになっている。俺は最高レベルだが、4ヶ月の間に同レベル帯の人間は結構数出てきていた。彼女もその1人に違いない。でなければ【鑑定】が弾かれるわけがなかった。相手さんも俺を鑑定して弾かれた口に違いない。

 「今は手を出さんから、少しずつ場を整えていこう」

 「畏まりました」

 十中八九、印持ちだよな。出来れば戦わない方向で無力化出来ればいいんだが。

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