30 異世界リゾート・その2
新作・ヘイスが征く!! ~邪神の使徒になってしまった男の苦労譚~
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よろしくお願いします!
「セーラ! ただいまーっ!」
「パパー! みてみてー!」
北大西洋の臨時の浮島に戻ってみると、セーラはリバイアサンの頭に乗ってはしゃいでいた。チビワンコーズたちもだ。きっとチビ妖精もだろう。見えないが。
子供たちが暴れていても微動だにしないリバイアサンが逆にシュールだ。剥製とかじゃないよな?
「リバイアサン! 子守ありがとうな! 一旦セーラを降ろしてくれ!」
『承知しました。使徒様』
オッサンが頼むとちゃんと言うことを聞いてくれた。スゴイ!
ただ、持ち上げられていた鎌首が浮島に近づいてくるのを見ていると、まるで高層ビルが倒れてきたように見えて心臓に悪かった。
子供たちはさらに大はしゃぎだったが。
気の利くリバイアサンは体を海に沈めて鼻先の高さを浮島に合わせてくれた。
子供たちはリバイアサンの顔の上をピョンピョンと跳びながら浮島に戻ってきた。
「よし、これからちゃんとした島に行くぞ」
「はーい」
うむ。いい返事だ。ほんとセーラはいい子だ。この子を邪神にしようとしたオタクどもは何を考えているのか。まあ、かわいいままの邪神もテンプレの一つではあるか。
「じゃあ、爺さん、この島ごと転移してくれ。リバイアサンは竜神サマがまた呼ぶまでちょっとだけ待っててくれな」
「うむ。わかった」
『あの、使徒様、私も小さくなることができますが』
「え? そうなの? じゃあ、リバイアサンも浮島に乗ってくれ」
『はい。わかりました』
ピカッと光った気がしたら小さくなったリバイアサンが浮島に乗っていた。
うーむ、魔物じゃなくて神獣のデフォは《サイズ変更》とかのスキルがあることだろうか?
まあ、小さくなったといっても目測で5、6メートルの大蛇がとぐろを巻いている感じだ。ファンタジーではなくリアル寄りなのでちょっと恐い。
「ま、まあ、これでいいか。じゃあ、爺さん、頼む」
「うむ。では行くぞ」
凡人と子供たちのためにちゃんとタイミングを教えてくれる爺さんだった。
爺さんの掛け声とともに浮島は転移した。
転移場所はオッサンが造った埠頭の端に接続する形になる。
最初から砂浜や海の家に転移してもよかったが、端のほうから順々に見せてやりたいと思ったのだ。ま、これもオッサンのこだわりってことかな。
「ここが『埠頭』だ。大きなリバイアサンや船に乗るときにはここで乗るんだ。で、あっちの、手前の建物が『海の家』だ。海で遊んで疲れたら休むといい。ご飯もあそこで食べるんだよ。それから向こう側にあるのが『海上コテージ』だ。夜はあそこに泊まろうな」
「パパ! みてきていい?」
「ああ、いいぞ」
「わーい! スコル、ハティ、いこう!」
「「キャン、キャン!」」
子供たちは楽しそうに駆け出した。
オッサンたち大人組はゆっくりと歩き出す。そういえばチビ妖精は……アイツは子供組らしい。
「使徒様。獣神はどうしたのだ?」
歩きながら竜神サマが聞いてきた。
「あー、いたな。そんなのが。たぶん、魔物狩りを頑張ってくれてるんじゃないかな? ま、厭きたら戻ってくるだろ」
「そうか。わかった」
それで話は終わる。理解がある神サマでよかった。
大人組も海の家に到着した。
「……なぜいる……」
中を覘くとセーラたちの姿はなく、代わりにむさくるしい二人組がだべっていた。
昨日だけの特別参加のはずだった海神サマとお久しぶりの雷神サマだった。
「ここは『海の家』なんだろ? なら、我のテリトリーだな」
「空があるところ、すべては我のテリトリーだな」
二人とも似たような、それでいて意味のないことを言っている。だからどうした。
「……まあ、好きにしろ。メシくらいは出してやる」
「「酒は!?」」
「……あとで買ってくる」
一応神サマズには世話になっている。仏壇にお供えするのだと思えば腹も立たない。
「そういうことで爺さん、竜神サマ。今日は休みだ。各自自由にしてくれ」
「承知した」
「お主も苦労するのう……」
爺さんからの哀れみの目から逃げるようにオッサンはセーラたちがいるであろうコテージに向かった。
「おねーちゃん、これ、かわいい!」
「こっちも似合うわよ」
コテージのドアを開けるとそこは男子禁制の空気が漂っていた。
「……なぜいる……」
まさかの2度目のセリフだった。
「あら、覗き? それだけ私が魅力的ってことかしら?」
シュレだった。それも神サマ会議のときのボンキュッボンバージョン、派手なビキニスタイルだ。
「……その格好もバグか?」
「失礼ね! これは私が人間だと仮定して5年後をシュミレートして仮固定した姿よ。私自身であることに変わりはないわ!」
「パパ! これとこれ、どっちがいい?」
オッサンと大人バージョンのシュレが旧交を温めていたが、テンションの高いセーラにはどうでもいいことのようだった。
「うん、どっちもかわいいな」
「パパ、えらんで!」
「時間はたっぷりあるからな、午前と午後で両方着ればいいじゃないか」
「そっかー。わかった! そうする!」
「……うまく誤魔化したわね……」
オッサンだけに聞こえるようにボソッと呟きやがった! やはりシュレの仕込みか!
リアル彼女にやられたら男のセンスを試されるイベントだ。
だが、それは経済的な問題が多分に関わっている。今のオッサンにはどうということはない。しかもシュレの持込なら尚更オッサンの懐には響かない。
「真面目な話、水着は助かった。爺さんに頼むつもりではいたが、抵抗があるからな」
「うふっ。そうだと思った。詰めが甘いのよ。というより行動が衝動的過ぎじゃないかしら?」
「おかげさまで自由にやらせてもらってるよ」
「ま、これから大変だと思うわよ。創造神候補者サマ?」
「やめろ。お前がいうと預言になっちまうだろ。シャレにならん。俺をからかう暇があったら終わらないバグ取りでもしてろ」
「な、なによ! そのバグ取りで疲れた心を癒す時間があったっていいじゃないぴょん! あ……」
「ほら見ろ。サボってるからだ。セーラの前でボロが出る前に帰るんだな」
「うーっ、タケシはイジワルだっちゃ! 呪ってやるニャン!」
「本気でシャレにならんからヤメロ!」
「べー、だワン」
大人の姿で子供みたいにアカンベーしながらシュレは消えていった。不覚にもドキッとしてしまったのはオッサンが汚れているからではない。凡人として正常な反応だろう。気にすることはない。
「あれ? おねーちゃん、きえちゃった」
「仕事があるんだと」
「そっかー……」
「まあ、暇になったらまた来るだろ。ここはいつでも遊びに来れるからな」
「うん……」
「ねー、ねー。管理神様、色々置いてったわよ?」
チビ妖精ナイス!
セーラがちょっと落ち込んだが、話題は変えられた。
「どれどれ?」
ほほう? オッサンを詰めが甘いと言うほどだ。確かに準備万端である。
セーラサイズのビーチサンダル、麦わら帽子、日焼け止め、レジャーシート、バスタオル、浮き輪、シュノーケル付きのゴーグル、大物でビーチパラソル、水上マット、シャチの浮き輪まであった。
オッサンはセーラの背中に日焼け止めを塗ってやりながら各アイテムの使い方を説明する。まあ、自由にすればいい。
「さて、パパはちょっとお昼ご飯の買い物に行ってくるけど、すぐに戻ってくるからな。それまで皆と遊んでてくれな?」
「うん、わかった」
「よし、いい子だ。お昼ご飯は豪華だぞ?」
「わーい!」
「「キャン、キャン!」」
「ああ、チビ妖精。ちょっと頼みがある」
「その呼び方ムカつくんだけど……いいわ、何よ?」
「この砂浜の周囲に、いいカンジに椰子の木を植えてほしいんだが」
「オッケー。いいカンジにね? これは女神としてのセンスが試されるわね!」
「まあ、ほどほどにな。じゃあ、行ってくる」
「「いってらっしゃーい!」」
お互いコテージの玄関で見送った。
オッサンはバルハラ教国の港町まで買い物に行く。子供たちは海だ。
さて、海の家にふさわしい食い物はあるかな……
次話は8日0時の予定です。




