29 異世界リゾート
新作・ヘイスが征く!! ~邪神の使徒になってしまった男の苦労譚~
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よろしくお願いします!
バルハラ教国に到着した日の夜はナーバスになった。
神サマも人間も考えすぎると碌なことにならない。
そんなわけで、偶然ではあるが、天使ことセーラを海竜・リバイアサンに乗せてもらうという約束に便乗して大人たちもストレスを発散しようとした。
場所は、人間の生活圏から離れていればどこでもかまわない。竜神サマに聞くとリバイアサンは陸上でも行動可能だそうだ。
でも約束したんだから海でセーラを乗せてあげよう。
そんなわけで地球でいうと太西洋にやってきた。はじめは太平洋にしようと思ってたけど時差が12時間てシャレにならない。朝起きて転移したら現地は日暮れなんだよな。ま、理不尽なのは時差じゃなくて転移魔法の方なんだけど。
勿論大西洋の方も人の住んでいない西方向に行けば行くほど時差は大きくなるが、そこは現地の人にギリギリ見つからない程度でヨーロッパに近いところを選んだ。
そうすると朝はゆっくり起きてゆっくり朝ごはんを食べてゆっくり食休みしていると目的地も朝を迎えるという寸法だ。
開始地点は北回帰線近くの海の上。スーパーケータイで調べたよ。北緯23度ぐらいで日本で言うと沖縄より南、ぶっちゃけ台湾・フィリピンの間ぐらい。ここまで南下すれば夏だし温暖化が始まっていないこの世界でも朝から水遊びしても問題ないだろう。それに時差が2時間くらいでアフリカからも距離があるのはここだけだった。
創造神の爺さんに浮島を創ってもらった。神パワーで揺れのない逸品だ。臨時なのにスミマセン。
ここでリバイアサンを迎えることになる。
それでは竜神サマお願いします。
「承知した。リバイアサンよ、出てくるがいい」
無詠唱でも出来るくせにオッサンやセーラのことを考えてかそれっぽい呼びかけだ。わかりやすく指差しとバカでかい魔法陣付きである。
そしてリバイアサンとも話がついているのだろう、海面上の魔法陣から静かに巨大な鎌首が持ち上がった。昨日の派手な登場シーンとは全く違う。
リバイアサンの登場とともにセーラに抱きつかれた。いくら静かに登場してもやはり厳つい巨体は恐いらしい。
「セーラ、大丈夫だよ~。ほら、あいさつしてみよう? おはようって」
「……おはよう?」
セーラはオッサンの背中に隠れ、顔だけ少しリバイアサンに向けて小声であいさつをした。うむ。子供だから許されるし、何よりかわいい。
『……おはようございます。小さき女神よ』
おお、声が聞こえた! しゃべれるんだね、リバイアサンて。そういやフェンリルもしゃべってたわ。
それより、女神ってなんだよ? 天使だとは思うけどさ。
セーラは、巨体にはフェンリルで耐性ができているのか、相手と意思疎通ができるとわかったらすぐにオッサンの後ろから出てきた。
「セーラはセーラです! パパのむすめです! よろしくおねがいします!」
『これはご丁寧に。私はリバイアサンです。こちらこそよろしくお願いいたします』
うわー。見た目によらず腰が低い! 腰がどこかわからん体型だけどな。
「あのね? セーラ、おねがいあるの」
『なんでしょう? 小さき女神よ』
「さわってもいい?」
『おお。どうぞ遠慮なく』
「わーい! スベスベ? ツルツルかな~?」
セーラは、モフモフはフェンリル親子で日常化しているが、ウロコ系は初めてのため興味津々のようだ。
しかし、巨大な鎌首が近づいてくるのは正直恐いぞ!
さて、オッサンはもう一仕事だ。
「セーラ。パパはみんなが休めるところを作ってくるからな。ここでリバイアサンと遊んでてくれ。乗ってもいいけど、あまり遠くにいかないようにな。じゃあ、竜神サマ、ここはよろしく」
「承知した」
「うん。わかってるよ、パパ」
「ちょっと! あたしもいるでしょ!」
「あー。チビ妖精もいたのか。気付かなかった。ま、ほどほどにな」
オッサンはセーラの頭を一撫でして次の行動に移る。
お供は爺さん……じゃなくて、メインが爺さんだ。一応獣神もついてくるらしい。仕事はないが。
オッサンたち3人は再び転移する。
移動先はここからさらに南南西方向。地球で言うと南アメリカの近くだ。スーパーケータイで赤道付近に『これぞ絶海の孤島!』みたいな島を見つけたのでそこをリゾート地として改造するつもりだ。
「ではここに『海の家』を創ればいいんじゃな?」
「ああ、ゆうべ教えたとおりに頼む。俺は海岸の整備をしてくるからな」
「おい、俺は何をすればいいんだ?」
オッサンと爺さんが打ち合わせしていると、獣神が仲間に入りたそうに話しかけてきた。
「あー、なら、この島に危険な魔物がいないか調べてきてくれ」
「は? 魔物ごときが危険なわけないだろ?」
ハァ~……これだから脳筋は……
「……じゃあ、国境街の食料調達のためにこの島の魔物を狩り尽くしてくれ。これは獣神サマにしかできない大事な仕事だ。頼んだぞ」
「お、おう! 俺に任せとけ!」
言い方を変えたら張り切って飛んでいった。
「……あれも『設定』のなせる業かのう……同じ神として情けない……」
「まあ、邪魔がなくなったと思ってさっさと仕事にかかろうぜ」
「そうじゃのう……」
出だしから締まらないが、セーラを待たせるわけにはいかないからな!
創造神の爺さんに頼んだのは『海の家』と『海上コテージ』だ。
特に『海の家』はオッサンが『畳』にこだわった。
この世界、魔物やポーションなどファンタジー成分に溢れているが、地球と似通った部分も多い。植物としての『イグサ』と製品としての『畳』をスーパーケータイで見せたところ、どちらもこの世界にあるとの答えをもらった。オッサンもケータイでちらっと調べただけだが、やっぱり『極東のサムライの島』というお約束はあるらしい。ついでに『米』も存在を確認した。いつか行かなければ! まあ、転移でいつでも行けるんだけど。
建物は爺さんに任せて、オッサンは土木工事。
リバイアサンのためだけじゃなくて、ヨットやクルーザーなんかも創ってもらう予定なので、そのための係留場を造るのだ。
やり方は簡単。水魔法で海を割って、結界で維持、土魔法で海底を掘り下げる。最後は土砂をアイテムボックスで回収すれば、あっという間に大型船も横付けできる港の完成だ。地面部分も土魔法で均せばセーラが走り回っても転びにくいだろう。
次は似たような手法で海底から白い砂だけ集めてくる。
港の隣に人工の砂浜を造るのだ。
いや、この島にも砂浜はあったよ。でも、何だか色が悪かったので造り替えたい。オッサンのこだわり第2弾だ。
サメなんかの危険な海の生き物が侵入しないように、またせっかくの綺麗な白砂が流されないように半径1キロを岩壁で囲っておく。高さは海面下ギリギリ。海水の循環も問題はない。
あとはさりげなく椰子の木で囲んでおきたい。オッサンのこだわり第3弾だが、これは『森の女神』であるチビ妖精に頼もう。
「爺さん、そっちはできたか?」
『海の家』のガワができているのは見ればわかる。
オッサンは日本では数えるほどしか海に遊びに行ったことがない。それも学生のときが最後だ。だからなのか、こうして『海の家』を見ていると懐かしさが込み上げてくる。
海の家というのは基本開けっ放しだ。中に入ってみると、見事に『畳』が再現されている。爺さんGJだぜ! 正にゴッドだ!
思わず畳の上に寝転んだ。イグサの香りがまた郷愁を呼び起こす。
「おお、ここにおったか。頼まれたものはできたぞ」
「爺さん、ありがとな」
「なんじゃ? そなたらしくもない。泣いておるのか?」
「そんな日もあるさ……さて、セーラたちを呼んで来ようぜ?」
情けないところを見られたが、オッサンは只の人間だ。気にすることはない。
名残惜しいが畳から起き上がる。
顔は《クリーン》の魔法で証拠隠滅だ。
異世界リゾート、楽しまないとな!
次話は6日0時の予定です。




