28 暗くなった(精神的)
新作・ヘイスが征く!! ~邪神の使徒になってしまった男の苦労譚~
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何とか神頼みでバルハラ教国の入管をパスしたオッサン一行はバルハラ側の港町をコソコソ歩いていた。
「爺さん、尾行とかはないか?」
「心配性じゃの。特に追ってくる人間はおらんから安心せい」
「そっか。じゃあ一旦国境街に帰ろうぜ? 何か気疲れした」
「パパ? つかれたの?」
「ああ、セーラ。もう暗くなるし、お風呂に入って寝ような」
「おっきいりゅうさんとあそぶのは~?」
「え? ああ、リバイアサンか。それは明日だって約束しただろ? 大丈夫、明日必ず遊ぶから」
「うん、やくそく!」
「よし。じゃあ結界、んで転移っと」
オッサンは人気のない路地に入ったところで認識阻害の結界を張り、そのまま国境街に転移した。もうこの動作は慣れたものである。
オッサンたちが国境街と呼んでいるのはフランシスカ王国とババロア王国の国境の荒地に難民キャンプを作ったからで、経度としてはほぼ同じだが緯度としてバルハラの港町の南方に500キロ以上離れている。
ここは異世界であっても地球のパラレルワールドらしいのでしっかりと地軸の傾きがある。つまり、高緯度のバルハラは夕方でも明るかったが、国境街はすでに暗くなっていた。
まずは皆で夕食を済ませ、潮風でべたついているのでセーラを風呂に入れてやる。実際に帆船に乗ったせいか、お風呂用のおもちゃの船でご機嫌で遊んでいるセーラはマジ天使である。
いつまでも見ていたいがそうも言ってられない。
遊び足りなさそうなセーラを「明日寝坊したらリバイアサンが遊んでくれないかも」とズルイ大人の言い方で何とかベッドに押し込めた。あとはチビワンコーズに任せる。
これからは大人の時間だ。
結界に隠された臨時の神殿? のリビングで今後の相談をする。この旅の中、何度もして来たことだが、参加者は俺と創造神の爺さんと竜神サマの3人がメインだ。脳筋の獣神やチビ妖精は面倒だからと興味のある話題のときしか出てこない。今日も欠席だ。ちなみに竜神サマは真面目に皆勤賞だが、上司の指示に従うというスタンスなので事実上俺と爺さんの話し合いとなってしまう。
「で? これから本当にどうするのじゃ?」
これで何度目のセリフだろうか。
「明日は竜神サマにお願いして、話のわかるリバイアサンにセーラの相手をしてもらおうかなと……」
「使徒様、それはかまわないのだが、創造神様の聞きたいことはそれではなかろう」
竜神サマが容赦してくれない件よ。
「わかってるさ。けど、本当に俺に聞くなよ。ぶっちゃけノープランだ」
「タケシよ、ここまで来てそれはなかろうて」
「そんな目で見ないでくれよ。確かに、不当に虐げられてる獣人たちは強引にでも助けるつもりだし、その話はして来たけどさ。それに、教国の連中をぶん殴りたい気持ちもあるさ。でもな、それ以降どうしたらいいか、全くわからん。イズミちゃんの気持ちがよくわかるよ」
「イズミのとな?」
「ああ。イズミちゃん言ってただろ? この世界は不自然だって。恐い話だけど、人間の妄想から生まれた世界だ。矛盾しててもしょうがないさ。ああ、言っておくが、確認してないだけで俺のいた世界もそうやって生まれた可能性があるんだからな? 生まれてしまった以上悲観ばかりしてもいいことないぞ?」
地球が45億年前に出来たのか、それとも5分前に出来たのか。極論、今を生きている人間には変わりがない。歴史? それこそ支配者によって都合よく創られたモンだろ? タイムマシンかシュレレベルの力がなきゃ真実はわからん。
なら、どちらの場合でも結局は心の持ちようだ。
「なるほどの。どの世界もその可能性はあるのじゃな? して、イズミの気持ちとはどういうことじゃ?」
「ああ、それな? いや、この世界は『設定』のせいでいろんな人種がいるだろ? どういう理由をつけてるかは知らんけどな。俺のいた世界は『進化』と『淘汰』で人種が一種類になってるんだよ。何万年も前に。イズミちゃんもそっちのパターンが自然だと気付いたんじゃないのかね。だからこの世界はおかしいと」
「……真実を知ってしまってから言うのは何じゃが、一応創造神の加護がすべての人種に与えてあるのじゃ。それに加えて他の神々もそれぞれ担当する種族を庇護している……という『設定』じゃな。種族の維持は可能だったろう」
「あー。まあ、神サマが実在する世界ならそれもあるかもな。でも、今度はどこまで神サマが手を差し伸べるかって問題が出てくるぞ?」
「どこまで……か。加護や神託もそうだと言いたいんじゃな?」
「まあな。人間は弱い生き物なんだよ。力も心もな。聞いた話だが、人間は自分の理解できない存在がそばにいると恐怖を覚えるんだと。これも又聞きだが、文明度とか民度っていうのが低いと相手を理解しようという発想より排除してしまおうってなるんだとよ。それに、神託や加護で人間をコントロールするのは初めの内は効果があるだろうが、人間は慣れる生き物だ。変に頭もいい分、自分の都合のいいように解釈しはじめちまう。そうなると逆効果だな。都合のいい大義名分でしかない。それをコントロールするには加護や神託よりも強い、神罰なんか落とさなきゃならなくなる。だが、『喉もと過ぎれば熱さ忘れる』ってことわざが俺のいた国にあるんだが、法の網を潜ろうとするヤツが必ず出てくる。神罰が落ちないギリギリのグレーゾーンを攻めるヤツもな」
「それではキリがないではないか」
「そうなんだよ。いたちごっこだ。最終的には人間一人一人に神サマがマンツーマンで指導してやらないといけなくなるかもな」
「バカな。そんな世界があってたまるか。生きている意味がないじゃろうが」
「地球では割とありふれた概念なんだがな。ディストピアっていってな、たぶん、きっと、必ずどこかの異世界に発生してると思うぞ。この世界みたいにな」
「ワシは、神はどうすればいいんじゃ? 中途半端な庇護は意味がないとしたら、人間を完全に神の支配下に置くか、人間との関わりを絶つか、両極端じゃな。そうか……イズミは自力でこの真理に辿りついたんじゃな。不思議なものじゃ。あの時は話を聞いても理解できなかった。イズミには悪いことをしてしまったのう……」
「仕方ないさ。そういう『設定』だったんだから。たぶん、爺さんは人間が想像する都合のいい神サマだったんだろうよ」
「タケシよ。それは慰めになっておらんのう」
「別に慰めてるつもりはないからな。でも、それは過去の話だろ? 今は違うんだし」
「……今のワシはどうじゃ?」
「そうだな、人間っぽい神サマかな」
「……人間っぽいか……やはり管理神サマの言う通り余生を人間として生きるべきかのう?」
「あー、それな。シュレが出した選択肢。やっと俺も理解できそうだ。そうだよな、人間目線になっちゃうと神サマの仕事を続けるの苦痛でしかないよな」
凡人なのに神サマの手伝いをするオッサン。神サマなのに世界を知らなかった爺さん。そしてバグのせいで人間的思考が植えつけられてしまったアカシックさんと分離したシュレ。
人間的思考こそ諸悪の根源ではないか、などと発想が暗黒面に落ちそうになったので、結論は出さないまま今日の話し合いは終了することにした。
明日……はセーラとの約束があるので、それで気分転換して、明後日からバルハラを見聞しよう。
うん。きっといいアイディアが出るはずだ。
それでは、おやすみなさい。
次話は4日0時の予定です。




