26 フラグは回収しなきゃね?
新作・ヘイスが征く!! ~邪神の使徒になってしまった男の苦労譚~
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よろしくお願いします!
オッサン一行の乗る帆船の右側から二隻の帆船が近づいてきている。
だが、オッサンの目には小さい影が二つ見えるだけだ。船員さん、アレでよく海賊だとわかったな。
「パパ、かいぞくってなーに?」
「う~ん、悪い人たちかな?」
「わるいひと? こわいの?」
「あー、パパがいるから恐くないよ~?」
「そうだぞ! ワシがいるからな! 今すぐ沈めてやろうか!」
おいこら! 親子の会話に口を挟むんじゃねえよ!
海の担当ということでテンションの高い海神サマ。
他の神サマズはどこ吹く風だ。とくに脳筋代表の獣神サマがおとなしいのは違和感がありまくりだ。アレか? 魔物とのバトルならともかく、一周回って海賊ごときはお呼びじゃないとか?
「使徒様。私の眷属竜を呼んではいかがか?」
クールな竜神サマからとんでもない提案が!
それよりも『使徒サマ』はやめて! ワザとか! ワザとなのか! 身バレしそうなババロア王国はもう出たんだから『ハチベエ』にしてって言ったのに、そういえばもう誰もその設定守ってないよね!
「えーと、接近する前にどんな感じか調べようか。ほら、海賊っていってもバルハラやジャマーンの悪徳商人だけを狙った義賊的な連中かもしれないし」
「なるほど。使徒様はやはり聡明であるな」
やめて! 持ち上げないで!
単にオタクの妄想が海賊と言ったら『ヒャッハーなカリビアン』か『海賊オウに俺はなる!』の2パターンしか思いつかないだけなんだよ!
たぶん見た目だけはゴリゴリのパイレーツだろうし、スーパーケータイでビューしても区別できないだろうから神サマズに人格判断してもらうしかない。
「どうだ?」
「ふむ。義賊などではないな」
「そうなのか?」
どうやら少年漫画のパターンではなさそうだ。
「ああ。私とアニマをどう痛めつけるかで盛り上がっている。典型的なヒューマン至上主義だな。ああ、同じヒューマン族でも奴隷として売り払うことは決まっているらしい」
「なんだそりゃ? なんで奴らが竜神サマや脳筋を知ってるんだ?」
「遠話のスキルを持った仲間がこの船に乗っている。間者というヤツだろう」
「遠話? テレパシーみたいな魔法か? 遠くの人間と会話ができる?」
「そうだ。知らんのか? 管理神様と遠話スキルで話していただろう?」
「あー、なるほど? でも、あれって俺のスキルってわけじゃないんだが……あ、今わかった。バルハラの工作員、なんで俺を誘拐しようとしてたのか。そうか、王都にいたスパイが遠話スキルで本国に報告してたんだ。それで本国から指示を受けてたってわけだ。途中のスタンピードとかの指示も遠話スキルなんだろうな。あー、異世界ナメてたわ。ちゃんと報連相してるわ」
「よくはわからんが、して、どうするのだ? 使徒様。眷属竜を呼んで船を沈めるか、海神に沈めさせるか」
「え? 結局その2択なの? なあ、爺さん。どうすればいい?」
正直アクションは御免だ。創造神に丸投げしよう。
「タケシが決めればいいじゃろう? 御使いサマなんじゃからのう」
丸投げしたら投げ返された!?
「いやー、決めろといわれても……ああ、そっか。別に戦う必要はないのか。なあ、ここからあの船のマストと舵を壊せるか? 周りの人にバレないように」
「造作もないが、それだけでいいのかの?」
「いいんじゃないの? 遠話が使えるなら仲間に助け求められるだろうし、海賊捕まえるのは俺らの仕事じゃないし。あ、海賊船に捕まってる人いないよな? 奴隷とか」
「……奴隷がおるな。亜人のじゃ」
「あー。ホント、クズだな。じゃあ、マスト倒して騒ぎになったらドサクサにまぎれて救出よろしく。国境街へ運んでおいて。ケアも頼む」
「わかった。やるぞ」
創造神の爺さんの軽い掛け声を聞いて海賊船のほうを見ると、少し大きくなった船影のフラグ、ではなくマストが二隻とも倒れる光景が目に入った。ここからはさすがに見えないがリクエストどおり舵も壊してあるだろう。
「奴隷はどうなった?」
「うむ。すべて助け出した」
その言葉にオッサンはホッとした。
どうやって、とは聞かない。オッサンだって時間はもう少しかかるが結界で姿を消して転移すれば同じようなことはできるからだ。神サマズは船に乗ったままこともなげにやり遂げたが、部下の下級神に命じてやらせたのかもしれない。まあ、終わりよければすべてよしだ。
「なんだ、戦いはないのか。つまらん」
「せっかくワシがいるというのに……」
脳筋と海の暴れん坊が不満げだ。無視だ無視。
「む? 使徒様。どうやらこの船が海賊船に向かうようだ」
「なんで!?」
「間者が唆しているようだ。海賊を捕まえれば一攫千金だと」
「罠か?」
「罠というより悪あがきだろうな。どうする?」
神サマズ、主体性がないな! いちいちオッサンに聞くなよ!
まあ、気持ちがわからんこともない。シュレの神気とやらにかなりビビらされてたからな。いってみれば爺さんは小さな町工場の社長でシュレが大会社の社長のようなものだ。今回そこの傘下に収まってシュレ社長の直属の部下であるオッサンが出向してきた感じだ。いちいちお伺いを立てたくなるのも無理はない。
「あー、どうするか……そうだ、海神サマ! 出番です!」
「なに! ワシか! やはり沈めるのか!」
「いや、沈めねえよ! 海流でこの船バルハラ方面に流してくれ。できるか?」
「そんなことか。つまらん」
「いいから、やってくれ。それから竜神サマ、すぐに眷属を呼べるか?」
「ああ。呼べるとも。沈めさせるのか?」
「だから沈めねえよ! 呼べるんならこの船と海賊船の間に呼んで威嚇させてくれ。いいな? 威嚇だけだぞ? 沈めるなよ? フリじゃないからな?」
「フリが何だかわからんが、わかった。威嚇だな」
いきなり海面が爆ぜた。
同時に黒く細長い物体が伸び上がった。
「キシャー! キシャー!」
それはオッサンが事故で死なせてしまいあまつさえ死体を売り払ってしまったシードラゴンの姿にそっくりであった。当時は雄叫びまでは聞かなかったが。
「り、リバイアサンだーっ! 逃げろーっ!」
海賊発見のときよりも船上が騒がしくなった。
そしてオッサンの目論見どおり船はバルハラ方面に向かって進みだす。海神の力も相まって通常よりも速くだ。
リバイアサンはリクエストどおり鎌首を振り回し何度も雄叫びを上げる。ただしその場からは動かなかったが。
「リバイアサン? シードラゴンじゃなくてか?」
「似ているが、あれはリバイアサンだな」
「へー? そういわれればシードラゴンよりトゲトゲしてる、みたいな?」
「まあ、東洋ではどちらも海竜と呼ばれるゆえ、気にするほどのことではない」
「へー」
「パパ~。こわい~」
今まで大人たちの小難しい話が続き、なんとなくワンコたちと戯れていた我が天使だったが、さすがにリバイアサンの登場にはショックを受けてしまったようだ。
「こわくないよ~? あれは竜のおじさんのお友達だからね~。今度一緒に遊んでもらおうか?」
「おともだち? ほんと?」
「ホント、ホント。ほら、スコルとハティのお父さんも大きかっただろ? でも恐くないだろ?」
「うん。ふぇんりるのおじちゃん、やさしいの」
「あの大きな竜さんもやさしいよ。今度背中に乗せてもらおう」
「ほんと? いつ? あした?」
「い、いつがいいかな~?」
「あしたがいい!」
「あ、明日か~……よ、よし! パパが頼んでみよう!」
「わーい! パパだいすき!」
はい! パパ大好きいただきました! これで十年は戦える、ってなもんだ!
「タケシよ。お主、ズルイぞ。竜神の手柄ではないか」
「いいだろ? 親子のコミュニケーションなんだから」
「ワシもこみにけーしょんしたいわい!」
オッサンたちは甲板の騒ぎとは別に騒ぎまくった。
ああ、ちなみに海賊が出現したときから結界を張っていたのでオッサンたちの物騒で秘密の話は他の人間には聞こえていません。チャンチャン♪




