24 どいつんだ? オラんだ
何時に投稿するのがいいかわかりません。
とりあえず0時。
「うわー! パパ! くるくるしてる!」
「あれは風車っていうんだぞ」
「ふうしゃ! あっ! パパ! きれいなおはながいっぱい!」
「ああ、そうだな。見にいこうか」
「うん! ハティ、スコル、いこ!」
「「キャン、キャン!」」
セーラは子犬化した神狼を引き連れ、チューリップ畑に駆け出した。
そう、チューリップである。
ここは地球の地理で言うとオランダにあたる。
ババロア王国北部のジャマーン帝国国境で進路を変え、すこし後戻りして西に転進、ペースは変えず途中の宿場町を観光しながら十日でババロア王国の国境を越えた。
入国したときにはじめて知ったのだが、この国の名は『ダレンダ』。実にふざけたネーミングである。確実に日本のオタクが関わっている。
しかも『オランダといえば風車とチューリップでしょう』という思いが透けて見える、というかそのまんまだ。捻りがない。
オッサンは一応社会科の教師として歴史も習っていたが、歴史学者に比べれば浅学もいいところ。確か地球では17世紀ごろにチューリップが流行したのでは、と思い返してみるが、多数のイメージから創られたこの世界では地球の歴史考証など無意味と深く考えるのはやめた。
ただ、『設定』上高速輸送や保冷技術が発達していないのに観賞用の花をこんなに育ててどうするんだろう? という庶民的疑問が新たに発生した。
そのオッサンの疑問に答えてくれたのが創造神サマであった。
「ふむ、あれはウコン草じゃな」
「え? ウコン?」
「うむ。根がポーションの材料になっての、人間界では数少ない、薬草の栽培成功例と記憶しておる」
オタクの皆様ごめんなさい。ちゃんと捻りがありました。しかも立派なバックグラウンド付き。言われて思い出したけど、確かチューリップの漢字名は『鬱金香』だった気が。
それと漢方薬の、二日酔いに効きそうな『ウコン』を掛けたワケね。植生条件とかは気にしない方向で。何せオッサンの初めての冒険者クエストの対象が『ナオール草』とかだったから。
「パパー! はやくはやく!」
「おう! いま行くよ」
愛娘にせかされ、何故か往年のベテラン芸人を思い出しながらチューリップ畑にむかう。
ちゃんと野生の花畑と区別できているウチの子供たちは畑に乱入することなくあぜ道らしきところを楽しそうに駆け回っている。
オッサンたちは、通行人はまだ見当たらないが、邪魔にならないような場所にテーブルを取り出し休憩することに。
「で? 進捗は?」
子供たちを眺めながら、神サマズと打ち合わせ。
「特に進展はないのう。各国の準備がまだ終わらん」
「まあ、ゆっくり待つか……」
そうそう、不当奴隷に関してだが、ジャマーン帝国内の奴隷だけはすでに解放し終わっている。ほとんどを国境街に転移させて一時保護中だ。
その数なんと一万人越え。創造神サマ謹製臨時アパートも一部屋十人の大部屋で一棟十室に変えて、それでも百棟を越えた。
精神状態が悪くても故郷に家族が健在だった者たちは故郷に帰した。また、精神状態がマシな者で介護のボランティアしてくれる人以外も希望する場所に送り届けている。
残ったのは精神が不安定な人たちと故郷が壊滅して行く当てのない人、ボランティアの人たちである。それだけでも都市を形成できる人数だ。ほぼ女子供ばかりなのでこのまま放置することはできないのが最大の問題なのである。
いやー、ここまで国民を拉致されてよく戦争にならなかったものだ。しかも、この人数って運よく奴隷として生き残っていた数で、実際は抵抗して殺されたり、商品にならないからといって処分されたりしたヒトたちも少なくないはず。正に氷山の一角だ。
まあ、ユーグラシ連合国とかいって、一応『国』ではあるんだろうけど、『設定』では最近成立したばかりのうえ、実質は部族がバラバラに暮らしているままなのだとか。
それゆえ拉致被害者を奪還しても即時受け取りとはいかなかったのだ。
こっちも、せっかく助けたのに故郷に戻っても暮らしていけないとなれば後味が悪いどころではない。よって、各国に一時避難の要請をしたのだが、いくら『ご神託』で受け入れさせたとしても物資の準備には相応の時間がかかることもしかたがない。
住居は神サマズが用意するので時短にはなるが、一国につき約二千人、各地に分散させるので民衆に告知したり食料を集めたりと大変なのだ。
しかも、魔族との戦争もあったりして、王様たちはテンテコマイに違いない。シャルさん、ご愁傷サマ。
まあ、オッサンは初志貫徹。この世界では絶対に気楽に暮らしてやる。シュレが手を回したのだろうが、せっかくかわいい家族ができたのだから。
あ、爺さんのことじゃないぞ、念のため。
そのために苦労はいとわない。暗躍してやる。神サマズをそそのかしてな。
神サマズもシュレに会ってから考え方が変わったようだ。
『真の自我が芽生えた』とファンタジー風にいうべきか。
『神は人の世に直接関与しない』などという神のルールは、それこそよくある『設定』だからだ。シュレによって宇宙スケールのネタばらしがされた結果、この世界の矛盾に面と向かうことが出来、自ら修正することに忌避感を持たなくなったのだ。
そう考えると、シュレが来る前に自力で気がついたイズミちゃんはすごい。さすが『智の神』サマだけのことはある。いま何してんのかね?
そういうオッサンも早々に吹っ切れている。
『内政干渉』だとか『既得権益』だとか、『異世界人は部外者』だとか内心葛藤はあった。
じゃあ気に食わない世界でコソコソと我慢して暮らすのかといわれれば冗談じゃないと思う。
地球の、日本の社会もこの世界と比べて同じように矛盾だらけだったと改めて思うようになった。
私が生まれる遥か前から『民主主義』が地球世界を席巻していたが、それって王侯貴族はいなくなっても『姿の見えない支配者』がガッチリ既得権益を掴んでいて、庶民は相変わらず庶民のままだったのでは、とこっちに来て気づいた。
建前では身分制度はないはずなのだが、とてもそうは思えなくなった。私は陰謀論者というわけではなかったが、本当に『姿の見えない支配者』がいるのならソイツは恐ろしいほど頭がいいのだろうと考える。
『言論の自由』があるから目に見えている政治家に不満をぶつけることは出来る。が、選挙で選び直されても改善されたという話は聞かない。これでは単なるガス抜きだ。
たとえば消費税についてだが、本当に国民の半数以上が賛成しているのだろうか。庶民代表としてありえないと思う。なのに、何故か国民に選ばれた議員たちの中で賛成多数になっているという不思議。
伝言ゲームじゃあるまいし、国民の声は本当にどこに消えてしまったのだろうか。
無論投票率の低下も知っている。熱心に政治運動するより流されたほうが楽だと国民の大半が思うようになったのではないか。
『パンとサーカス』の手法は今も生きている。歴史で習っているはずだが、自分のことになると気がつかない、或いは、気づいても諦観してしまう環境になっているのだろう。私も生前? はそうだったと今更ながら思う。
が、それも『姿の見えない支配者』たちの思う壺ではなかろうか。
『言論の自由』がある一方、新聞、テレビ、インターネットと情報統制の方法も進化し続けている。
『国民性』といって誤魔化されているが、日本はほぼ『全体主義』なんだろう。核心に迫った意見は『空気読め』の一言で黙殺される。
ある意味、日本での生活は息苦しかった。自由など名目上でしかない。
だが、私は何も出来なかった。
新しい世界に来たというだけで好き勝手に生きていいのだろうか?
生まれた国も救えなかったくせに、無関係な世界ならどうなってもいいと?
まあ、こんな葛藤があったのだ。
一応悩んだよ。
そして、答えは決まった。
仕方ないじゃないか。だって選択肢が『する』か『しない』の二択なんだから。
そりゃ『ラノベの主人公みたいなコトはしたくない』という別の葛藤もあったけど、それは置いといて、日本で何も出来なかった言い訳として『単純に力がなかったから』というのがあり、じゃあ、この世界では王様にも神様にも大きなコネがあり、自分自身にもシュレからもらったわけのわからない正にチートな能力があるんだったらどうする? と考えたら答えは『する』しかないだろう。
そんなわけで神サマズをコキ使ってオッサンの思い通りの世界にしてやろうと思う。
フハハハ。我こそが真の黒幕なり!
「なんじゃ、渋い顔しとると思うたら急にニヤケおって……」
「異世界の使徒よ、気持ち悪い」
ぐはっ……
次話は26日予定。時間は未定です。




