23 オッサン、地道に旅を続ける。
2022年02月22日22時
祝・ぬこの日
しれっと再開&タイトル変更&ペンネーム変更
異世界に来て何日目になるか、もう数えるのも面倒になってきた。
そろそろ一ヶ月になるかなあ。
旅は順調といっていい。ただし、あえてチート能力を使わない『なんちゃって旅行』だが。
まあ、愛娘に苦労はさせたくないので(親バカ&爺バカ)町から町への移動は巨大化したワンコーズに乗せて走らせている。
創造神サマが見た目爺さんなので一緒に走らせているとなんとなく罪悪感が……
それはともかく、人目のないときは馬より早く移動できるためあっという間にババロア王国を縦断した。
もちろん夜は街で宿泊するように調整している。夕方に到着して三泊。これはセーラのためでもある。いくら神サマズに贔屓されていてステータス値は高くても、事実上生まれたばかりということはオッサンたちが知っている。
この旅自体が、わざわざ地上を移動することも含めてオッサンの我がままでしかないので、つきあわせてしまうセーラに負担をかけすぎたくはない。よって町滞在のうち二日間はセーラの好きにさせている。まあ、だいたいはオッサンと町見物だ。疲れたら宿でお昼寝。うん、健康的である。
しかし、ただ遊んでいるわけではない。町に滞在中は並行して奴隷対策をしている。主に神サマズだだが。
不当な(オッサンから見て)奴隷の解放と回収、国境街で心身のケア、協力国首脳たちと難民保護に関する協議(神託で)などかなりの仕事量である。
只の人間であるオッサンには厳しいが、神サマズにはどうということもないらしい。創造神の爺さんなどセーラと町見物しながら神託を下ろすなど、不真面目なような正に神業のような、そんなことをしていた。
「次はとうとうジャマーン帝国になるのう。少々心配じゃ」
ババロア王国の北部、国境に近い町でセーラと手を繋ぎ町を散策しながら創造神サマがつぶやいた。
ああ、ババロア王国の王都にも立ち寄った。ただし、当然だが王宮などには行っていない。今のオッサンたちは只の旅人であって、間違っても神様ご一行ではないのだから。軽く観光してほかの町と同じように三泊してから旅立った。当然『ハチベエ』の偽名は使っていない。もともと悪乗りしただけだから残念だとかは思っていない。本当だぞ。
「う~ん、どうすっかなー」
創造神サマが心配しているのは自分たちの身の安全などではない。リアルチートだから。
心配なのは……
オッサンと爺さん二人と両手を繋いでいるセーラを見つめた。
「パパ、おじいちゃん、どうしたの?」
二人に見つめられ、セーラは不思議そうにしていた。
そう、心配というのは、ジャマーン帝国の国内が間違いなく混乱しているということ。
帝国国民すべてに神託を下したものの、これまで合法と、いや、当然とされてきた常識が一夜で崩壊したのだ。
直接奴隷に関わらなかった人間も多いだろうが、差別していたのも否定できない。後悔する者もいれば神託を信じない者もいる。
奴隷を回収した際、神サマズの査定で身請け金を置いてきたこともすぐに広まるだろう。そうすれば難癖をつけてその金を取り上げようとする人間も出てくる。
民衆は役人に『この混乱を何とかしろ!』と訴え、役人は上層部の貴族に訴え、貴族は皇帝に訴える。
では皇帝は誰に訴えるのか。
そもそも奴隷に関しての政策はバルハラ教国の奉ずる教義を信じたためであった。ならばよほど責任感のある人間でなければ、すべての責任をバルハラ教国に押し付けるだろう。
神託で戦争を禁じているとはいっても、後のない人間は何をするかわからない。『これは戦争ではない、神に代わっての懲罰だ!』などといって矛先を教国に転じてもちっとも不思議ではない。
そんな混乱の中、いくら神サマチートで身の安全は保障されていても、のん気に観光旅行していられるだろうか。
何より、セーラが怖い思いをするなんて、たとえ神が許してもオッサンは許さん!
考え込んだ私をセーラが不安そうに見てくる。
「よし! コース変更だ!」
「後継ぎ殿、どうしたんじゃ?」
「後継ぎ言うな! 娘さんがいるだろ!
まあ、それはともかく、西へ移動する。セーラ、海に行くぞ」
「うみ? パパ、うみってな~に?」
私とは別の意味で常識を知らず、また、『神の国』である地球でいうグリーンランドからは転移魔法で一気に内陸に跳んだセーラはまだ海を見たことがない。私の発言にきょとんとしている。うん、かわいい。
「ここからお日様の沈む方角にずっと行くとな、広くて大きい、たくさん水があるんだ。その水はしょっぱくてな、いつも波が、ザザーン、ザザーンって水が動いているんだぞ」
「おおきいおみず? うごくの? パパ! セーラみたい!」
「そうか、セーラも見たいか。じゃあ、明日出発しような」
「うん!」
こうしていとも簡単に旅程は変更された。
以前この世界の地図と地球の地図を照らし合わせたのだが、フランシスカ王国はフランス、ババロア王国はドイツ南半分、ジャマーン帝国はドイツ北半分に相当した。
そして目的地バルハラ教国はデンマークに当たるので、旅程としてはフランシスカ王都から北に一直線だった。
ここで西に折れると、地球ではオランダあたりに向かうことになる。
この世界では別の国名だが、詳しく聞いていないが、悪いうわさも聞いていないので問題ないだろう。
オランダからデンマークに行くには海岸線を北に進むのだが、どうしてもジャマーン帝国を通過しなくてはならない。しかもバルハラ教国との国境部分だ。まさかいきなり戦争が始まることはないだろうが、面倒に巻き込まれる恐れがある。
見知らぬ海の話題ではしゃいでいるセーラに心配をかけたくないので、こっそり創造神サマに相談してみたところ、呆れた顔で答えてくれた。
「そうまでして転移魔法を使いたくないのなら、海を渡ればよいではないか。船ぐらいこの世界にもあるぞ。なんならワシが創造ってもよいぞ」
これはオッサンの不明。
決して異世界の文明を低く見ていたわけじゃない。単に、前世? でも船旅なんてしたことがなかったため完全に頭から抜けていただけだ。
「あ、そっか。サンキュー爺さん。セーラ、海に行ったら船に乗ろうな!」
「ふね? おふろ?」
この家族旅行、転移魔法は使わないといったが、あれはウソだ。
あくまで目的地までは直接跳ばないと決めただけで、それ以外ならどうしてこんな便利な能力を使わないでいられようか。
基本夜は訪れた街で宿を取りそこで眠る(徹底的にクリーン魔法で消毒はしている)が、中には質の悪すぎるベッドもあって、そんなときは悩まず国境街の仮神殿に戻って就寝する。そして街の宿に泊まる場合も毎日お風呂だけは入りに戻っているのだ。
仮神殿の浴場はオッサン設計、創造神サマ謹製のなんちゃって銭湯風大浴場だ。決してローマ風テルマエでも王族専用金ピカ風呂でもない。
そこで毎晩セーラは入浴しているのだが、オッサンは愛娘のため土魔法で船やらアヒルやらを作ってあげたのだ。
時にチビ妖精がおもちゃの船に乗りお風呂という名の大海原に漕ぎ出し、ハティとスコルに沈められるという茶番を演じている。
「そうだよ。でも本物はこ~んなにおっきくてセーラも乗れるんだぞ」
オッサンは両手を広げ、愛娘に大げさにアピールする。
セーラも真似してはしゃいでいる。
「こ~んなにおっきいの? わーい! おふねたのしみ!」
くるくる走り回るセーラを見てホンワカする。
「なあ、爺さん。俺、海に行ったらセーラと船に乗るんだ……」
「? 何をいっておる? ワシが勧めたことではないか」
ネタは異世界の神サマには通じなかった。
ならばフラグも立つまい。
新作品・ヘイスが征く!! ~邪神の使徒になってしまった男の苦労譚~
2022年02月22日22時22分に投稿予定です。
失敗したら同じこと考えていた人が多かったということで(笑)
次話は24日20時ごろ投稿予定です。




