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12 オッサン、働く。

 


「預かるって、予想外に面倒見がいいのは素直に感心するが、どうやって? 寝るところは? 食料なんかは?」


 あっさりと言い切った爺さんの発言を、オッサンは信じられなかった。

 このあと、オッサンは自分が只の人間であることを痛感することになる。


「フォッフォッフォ。お主、力を持っておるくせに使い方がまだまだじゃの。ほれ、見とれ」


「うおっ!」


 爺さんが手を翳すと、おそらくオッサンにわかりやすく見せるために指を差したのだろう、脳筋獣神の戦闘の結果荒れ果てていた草原にデカイ建物が現れた。しかも一つや二つではない、ボコボコとしか形容できないほどのハイペースである。


 その建物はアパートと言っていいだろう、二階建てで横長、部屋数は二十はありそうだ。それが数十軒、もしかしたら百を越えているかもしれない。一番近くの建物を恐る恐る覗いてみた。基本は石造りだがドアは木製、窓はガラスが嵌っていて採光も完璧。部屋は六畳ほどでベッドが二つ置かれている。その上クローゼットやバストイレまで完備されていた。オッサンが住みたいくらいである。


「どうじゃ? これでしばらく暮らせるじゃろ」


「もう大都市レベルじゃねえかよ! しばらくじゃねえよ! 一生モンだよっ!」


「何を怒っておるのじゃ?」


 オッサンの小市民的不安は創造神には理解してもらえなかったようだ。道を整備して外壁を作れば立派な街になる。国境にこんな大都市が忽然と現れて大丈夫なのか? 新たな火種になるのではないだろうか。本当に一時的なもので問題が解決したら消してしまうのかな? もったいない。一棟もらってどこかでアパート経営でも始めようか……


「うわー。おっきいのがたくさんあるよ。パパ、コレなに?」


 突然現れた建物群に驚いたのか、セーラが戻ってきた。当然ちび妖精も一緒である。


「どうせ創造神様が創ったんでしょ? 何が始まるの?」


 そういえばコイツは神サマ会議に参加してなかったな。神通信とかで情報共有してないのか?

 聞いてみると、できるできないの問題ではなく、単にその発想がなかったらしい。なので簡単に教えてやった。これからエルフとかの奴隷が集められるならチビ妖精も活躍の機会があるかもしれないし。というか、働け!


「なるほどね~。よし! アタシに任せなさい!」


 何を任せるのかわからんが、チビ妖精はそう言うと再び飛び去っていった。まあ、がんばれ?


「パパ~。おなかすいた~」


 おっと、働くのは大人だけでいい。子供は健康でいればいいのだ。

 オッサンはテーブルの上に料理を並べていく。全て出来合いのものだが、下手なキャンプ料理よりもマシだろう。アイテムボックス様様である。一応神サマズの分も出した。皆で食べた方が美味いからな。


「住居の問題は、レベルが高すぎるのは置いといて、まあ納得してやろう。それで、食い物の方はどうすんだ? まさかそれも爺さんが『創る』んじゃないよな?」


 ちょっと早い夕食を食べながら確認作業をする。

 創造神というくらいだ、世界も生物も創れる。食料ぐらいヒョイッと創りだしても不思議ではないが、どうも魔法で創った食べ物は倫理的に食べちゃいけない気になる。オッサンが自分で魔法で出した水は平気で飲んでいるのにおかしいとは思っている。『倫理』とはいってもそれは地球のソレだし、凡人のソレなのだ。しかし、頭の中ではわかっていても生理的に受け入れられないのだから仕方がない。遺伝子組み換え食品やクローン生物に対して過剰反応してしまうのと同じ。この気持ち、爺さんたちが理解してくれればいいのだが。


「何言ってやがる。食いモンならそこら中に転がってるじゃねえか」


 豪快に焼き串を頬張りながら脳筋が答える。


 そこら中と言われても……オッサンたちの周りはアパート群と焼け野原なんだが……

 あ、そうか、脳筋が口からカメハメ○を使って消滅させた以外はスタンピード級の魔物の死骸が残っているんだ。

 ……やっぱり、ファンタジー世界は魔物肉を食べるんだ。オッサンはこれまで食材について詳しく聞いていなかったが、既に口にしていた可能性大。というか、牧畜が行われている可能性のほうが少なそう……うん、これからもあまり深く考えるのは止そう。


「あ~。じゃあ、あとで死体を集めないとな」


 無理矢理自分を納得させたオッサンは新たな仕事の発注をする。

 オッサンも『アイテムボックス(極大)』が大活躍することだろう。

 あ、魔物っていってもゴブリンとか食べられるのかな? 食べたくはないが、あとで確認しておこう。オークは定番、解体してしまえばそれほど嫌悪感はない。


「パパ! セーラもやりたい!」


 娘がいい子です! オッサン幸せです!


「そうか、いい子だな」


「うん! セーラ、いいこ!」


 私は愛娘を撫でながら、縮小化してテーブルの上でセーラに餌付けされていたワンコたちに話しかける。


「スコルとハティも手伝ってくれな。セーラを頼むぞ」


「「キャン、キャン」」


 子供にどんな手伝いができるかわからないが、ワンコの背中に乗っていればお手伝いの雰囲気ぐらい味わえるだろう。オッサンは『子供が邪魔をするな!』などと無粋なことは言わない大人なのだ。


 そんなオッサンの広い心アピールを打ち壊すヤツがいた。そいつはいつの間にか戻ってきていたチビ妖精である。


「そうね~。セーラちゃんはアイテムボックス使えるようになったもんね~」


「……なに? 初耳なんだが……」


 神サマの国でセーラのステータスを確認した時は、色々突っ込みどころも多かったが、確かアイテムボックスはなかった気がするのだが……

 いや、『使えるようになった』と言ったな。


「そりゃそうよ。さっきアタシが教えたんだもん。他にも色々魔法を教えたのよ。だからアタシはセーラちゃんの師匠なのだ~」


「うん! フリッカおねえちゃんはししょ~」


「フリッカ! お主だけズルイではないか! ワシもセーラちゃんに師匠と呼ばれたいわい!」


 草原でワンコたちと遊んでいるとばかり思っていたが、チビ妖精と魔法の修行していたらしい。旅の間爺さんにも教えてもらっていたのだが、今日一日だけで完全にお株を奪われてしまったようだ。『おじいちゃん』と呼んでもらえるだけでいいじゃねえか。


 しかし、アイテムボックスってちょっと習っただけで習得できるのか? そこはかとない神サマの贔屓を感じる。まあ、オッサンに文句の言えた義理はないが。それに、『究極破壊魔法』とか教えられるよりは実務的で将来も安泰だ。素直に感謝しよう。


「そうか。セーラは偉いな。じゃあ、がんばってご飯を集めてきてくれ。スコルとハティは生きている魔物に気をつけてくれな」


「わかった! いってくる!」


「「キャン、キャン!」」


 オッサンに褒められたセーラは巨大化したスコル(それともハティ? 見分けが付かん)に飛び乗って張り切って出かけていった。チビ妖精も弟子の成長を見守るとかほざいて追いかけていく。

 脳筋獣神も肉体労働は好きらしく、また発案者だからかなのか同じように嬉々として回収作業に出かけていった。……何も子供みたいに走っていかなくても……


 で、オッサンはどうしたかと言うと、まだ座ったままである。

 但し、爺さんのように偉い神サマだから、というワケではない。一応お仕事中だ。

 半分実験と言ってもいいが。


『結界』に次いで多用している『転移魔法』なのだが、先ほど『結界』との合わせ技で多人数を転移させることに成功した。ならば次のステップに進もう、というワケだ。

『転移』とは必ずしも自身を移動させなくてもいいのではないか? それがコンセプトである。というか、フツーは『物質転送』の方が簡単なのではないかとも思っている。神サマチートでいきなり『転移魔法』を覚えたオッサンは、どうもこの世界の魔法、魔術の常識に疎い。来たばかりだから仕方がないが、とりあえずコツコツやろう。


 まずは、テーブルの上に置きっぱなしの、食事の後の食器たち。

 目視して念じる。

『動け~。動け~』と。

 すると、目標にしていた空の皿が一瞬消えてテーブルの端に現れた。


「おっ、たぶんできると思ってたけど、一発で成功か。シュレよ、イージーモードが過ぎるだろ……」


 ここにはいない、元凶中の元凶に文句を言ってみる。反応はないが、きっと笑っていることだろう。


 お次はアイテムボックスとの連動だ。今まではアイテムボックスを使うときは対象物に接触する方式だったが、この『物質転送』と組み合わせれば目視しただけで対象物をアイテムボックスに回収できる、はずだ。ラノベの主人公たちも使ってた技術なので、『魔道の極み』とアカシックさんの贔屓があるオッサンには楽勝だろう。


「……やっぱりできたなあ……」


 テーブルの上の食器はおろかテーブルまでも、見つめながら『アイテムボックスに入れ~』と念じただけで本当に回収できてしまった。予想通りなので感慨深さはない。


 次の実験はケータイのマップとの連動である。

 実はオッサン、なるべく取得したくないスキルがある。それは、ラノベでよく出てくる、便利な『脳内マップ先生』とか『ヘルプ先生』などのアシスタントシステムである。アカシックさんは自由にやれって言うし、シュレも『未開人に文明の利器を与えてその反応を楽しむ』と言えば言い方が悪いが、少なくともバラエティ番組の乗りでチートスキルを大盤振る舞いしてくるのだが、お断りである。

 アレって確かに便利そうだけども、よく考えると別人の意識が自分の頭の中にあるってことだよね。プライベートもないもないじゃないか。それより多重人格を疑いそうになるんだよ。似たような理由で『並列思考』もノーサンキューだ。


 アカシックさん? あのヒトは別。『ご神託』だと割り切ればいい。プライベートもないようなもんだが、それを言うなら全宇宙の生物にプライベートなどないことになる。キミ達はいつでも監視されてるのだよ。


 まあ、オッサンは妄想というか考え込む習性があるので『脳内先生』も活躍の場がないだろう。

 というワケで分離独立ケータイを外部先生? としてオッサンのスキルと連動できるか検証するのだ。


 あ、考えすぎてたせいか、もう終わってる。

 マップでピンを付けた魔物の死体が目の前に転送されてました。


 後は複数同時転移&アイテムボックス直接回収なのだが、どちらもあっけなく成功したのは言うまでもない。


 さて、セーラたちもそろそろ帰還してきそうだ。

 いや~働いた! 椅子から一切立ち上がってないけど。











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