08 自重? 所詮は自己満足だ!
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現在神サマズ会議IN結界内、なう! あ、『現在』が被った。
魔物に襲われているお姫様を助けるという『主人公テンプレイベント』に不本意ながら参加してしまったオッサンだったが、それだけなら名乗らずに(偽名を使った)適当なタイミングで離れればいい。実際その予定だし。
しかし、お姫様からもたらされた情報によると面倒なことが起こっているらしい。その上、同行者である某脳筋が関わっているのだという。
『今後獣人に手を出したらどうなるかわかってんだろうな』とその脳筋は『神託』を下したらしい。本人は警告のつもりだったようだが。
「それって挑発じゃね?」
オッサンがそう分析したのも当然。『押すなよ! 押すなよ!』と言われれば、人は押したくなるものだ。それは地球だろうと異世界だろうと逃れようもない性なのだ。駝鳥の法則と呼ぼうか。
え? 関係ない? 私も何となく言ってみただけです。
「ふむ。どうやら神託は偽物、獣人からの精神攻撃と思われているらしいの」
北東の方、ババロア王国方面を見つめながら創造神の爺さんはそう言った。おそらくその『神の瞳』は更に先のジャマーン帝国を見ているのだろう。映像だけではなく音声も聞こえているのかもしれない。流石と言ってやろう。
だが、これで脳筋獣神の失態だと確定した。
「くそっ! アイツらどこまでも獣人を馬鹿にしやがって!」
おや? 全く反省の色がない。
「本当よね~。これは神罰を与えないとダメね」
おやおや? もう一人脳筋がいるみたいだぞ?
「爺さん、こいつら、これでいいのか?」
「うーむ。『神託』を完全に無視されておるからのう。神罰もアリといえばアリなのじゃが、今回はワシにも責任があることじゃからのう、難しい問題じゃ」
そういう言われ方をしたら『神託』の指示をしたオッサンも罪悪感を抱いてしまうじゃないか。
「じゃあ、どうせジャマーンは通り道だし、情報を集めつつ、戦争は止める方向で。やり方は爺さんたちに任せる。この世界の神サマだからな」
オッサンは、オッサン自身に負担が来ない方法を選択。ザ・丸投げ。
「管理神様に指示はもらえんかのう?」
「う~ん、聞いてもいいが、たぶん俺と同じこと言うと思うぞ?」
或いはもっと面倒なことになる。私は今回はなるべく、できるだけ、絶対にシュレに連絡をしないことを密かに決意するのだった。
それにしても『神罰』か。亜人差別が酷い、と聞いていたからオッサンもどうにかしたいとは思ってたんだ。いっそ神サマズにビシッとシメてもらった方がいいか。バルハラの件もあるからな、前哨戦ってところかな。
「そうか……お主の言うことじゃ。間違いないのであろう」
爺さんが納得したことで旅の目的が増えた。
竜神様はオッサンに従うというスタンスを崩さないし、大小脳筋は『神罰』執行でテンションが上がっている。うーむ、ちょっと怖い。
「方針が決まったところで、あのお姫様はどうする?」
「そうじゃの、お主が送ってやれば良いのではないか?」
「あ? 別行動? まあ、それでも構わんが……」
「いやいや、転移魔法でじゃよ」
「は? それってマズイんじゃ……」
オッサンはまだこの世界の常識についてわからないことが多い。例えば魔法の規模。『異世界のんびりライフ』を目指す者としてあまり目立つことはしなくないのだが、そのボーダーラインがわからない。アイテムボックスはセーフだと思うが、転移魔法は軍事的にアウトではないだろうか? 結構使ってるけど。魔族よりもオッサンが敵視されるんじゃないか?
こうなったら全世界の人間に転移魔法を覚えさせるか……アカン。最悪の事態しか思い浮かばない。強盗、暗殺の雨霰、法律の改正も防犯対策も間に合わないうちに国家が、世界が崩壊する。
よし、隠し通すか。バレたら神サマズの国に逃げ込もう。
「……そうだな。さっさと片付けて旅を再開しよう」
決断は早い方だと思う。開き直りともいう。
神サマ会議はあっさりと終了。相変わらず人間のオッサンが主導しているのが違和感バリバリだがしばらくの辛抱だ。
「お待たせしました」
オッサンが代表でお姫様に会いに行く。神サマだとバレるよりチートだと認識される方がまだマシだ。
「それで、護衛の方は引き受けてもらえるのでしょうか?」
「はい。フランシスカの王都まで送っていきます」
「まあ! それはありがたいですわ。報酬についてはきっと満足のいく物を差し上げますわ」
お姫様、不安そうだった表情がパーっと明るくなる。
「報酬は特に要りません」
「え? ですが、それでは……」
「ただ、一つ条件があります。それが報酬代わりですかね」
「そ、その条件とは何でしょうか?」
再び不安そうな表情になる。そばで聞いていたオルコット君も顔を顰めた。いや、大丈夫だって。オッサンは鬼畜じゃないから。
「私たちのことを口外しないでください。詮索も無用に願います」
「どういうことでしょうか?」
「言葉の通りです。お姫様は公務でしょうが、逆に私たちはお忍びなのだとでも思ってください」
「……わかりました。一刻も早く任務を遂行しなければなりません。条件は飲みましょう」
おお。思ったよりスムーズな展開。よっぽど切羽詰まってたんだな。オルコット君も苦い顔するだけで反対の声は上げないし。
「快諾ありがとうございます。では、お急ぎということなので早速出発しましょう」
「わかりました」
気が急いているであろう姫様はメイドさんとともに馬車に乗り込んだ。
オッサンは次のステップに移る。
「騎士さんたちはちょっと集まってくれ!」
「何だ? 何か用か?」
「これで全員か?」
「ああ。生き残り8名。これで全部だ」
100人が8人か。九割消耗って全滅と見做されるレベルだよね。
それは仕方ないとして、オッサンの仕事を始めますか。
「よし。じゃあ、もっと馬車に近寄って~」
「何なんだ、一体……」
姫様から引き離されるワケではなく逆に側に寄るのだから誰もオッサンの指示に異論を唱えるの者はいなかった。うん、これぐらいでいいか。じゃあ、結界!
「じゃあ、ご隠居サマ、ちょっと行って来る。セーラを頼んだぞ」
「どうせすぐに戻るのじゃろ?」
ハハハ。その通り。
オッサンはケータイでマップを確認。結界の中身ごと転移した。
実はこれ、神サマズとの会議中にアドバイスしてもらったもの。神サマズは元々チートだから自由に複数の人間を転移させられるのだろうが、オッサンはそう簡単にはいかない。そこで自分に張った結界を拡張して結界内部に取り込めば、中の人間も転移できるだろうということになったのだ。
ぶっつけ本番なのだが、まあ、失敗してもオッサン一人が転移してしまうだけだから問題ないだろう。そのときは爺さんに頭を下げてこっそりと転移してもらおう。
……あれ? 最初っから爺さんに頼めばよかったんじゃ……
まあいい。もう終わった話だ。
「こっ、これは!」
「オルコット! どうなったの!? ハチベエさん、これは一体何が起きたんですの?」
姫さんも騎士さんたちも騒いでいる。
そりゃそうだろう。予告もなしに転移したのだから。オッサンって結構ヒドイよね。でも、いちいち質疑応答を繰り返したくなかったし。
「あれがフランシスカの王都です。姫様」
「て、転移魔法……」
そう、オッサンがマップで確認したのはフランシスカの北街道、オッサンが旅に出た通り道、北の森の手前だ。人通りのないところを選んで集団転移してきたのである。少し距離があるが王都の城壁が見えているのでここまで送れば問題ないだろう。
「し、信じられん……」
信じなくてもここが国境の草原でないのは見ればわかる。因ってこれ以上の説明は不要だ。
「それでは姫様。私の任務はこれで終わりました。くれぐれもお約束をお忘れなきように。再び会うことはないでしょうが、お元気で。それでは失礼します」
未だ騒ぐ者、呆然としている者がいる中、オッサンはちょっとカッコつけた口上とともに再び転移した。
いや~、いいコトをしたあとは気持ちがいいね。お仕事が上手くいくことを願ってますよ、お姫様♪




