05 旅は道連れ? いいえ、スルーします。
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オッサンは大量の魔物が囲んでいる馬車の近くに転移した。
これが実質オッサンの初戦闘になるわけだが、オッサンは十歳くらいの黒髪のゴスロリ服の幼女を抱えたままだった。自分で言うのも何だが、どう見てもふざけているとしか思えない。プロの戦士から苦情が出そうだ。
だが、オッサンには秘策がある。管理神(笑)からもらったチート能力のことだ。実は未だに正確な性能は判明していないが『魔道の極み』とやらは色々な魔法が覚えやすくなっているということは確かである。魔力もステータス数値を疑うほど底無しだ。転生系主人公が赤ん坊の頃から魔力切れを繰り返して魔力量アップを目指しているのが馬鹿らしくなるほどである。
そして、オッサンが異世界転移? してから十数日の間に一番お世話になっているのが『結界』なのである。始めはケータイの機能であったが苦行? の末自力で結界を張ることができるようになった。ケータイ機能と併用すれば多い日も安心、なのである。あ、魔物がですよ?
「というワケで、とっか~ん!」
「パパ、がんばって!」
「おう!」
セーラの応援でオッサンは更にやる気を出した。といっても『結界』をオッサンとセーラの周り一メートルに張ったまま魔物の群れに突っ込むだけなのだが。
あ、セーラの目隠しはやめた。過保護すぎたことを自覚したのもそうだが、この世界、『設定』さんの仕様かシュレの仕業か、人間のメンタルは地球人より強いらしい。特にグロ耐性は。魔物をコロコロする程度ではビクともしないようだ。
そんなわけで救助対象の馬車に向かって走る。武器は持たない。日本刀のようなものは持っているが、あれは暇な時に鑑賞したり改造したりするのがいいのだ。いくらグロ耐性が強くなったかもしれないからといって飛び散る血飛沫なんて見たくない。
幸いというか、オッサンには『結界』のスキルの他に馬鹿げたステータス値がある。ゴリ押しだ!
「グギャッ!」「ゴフッ!」「ブギーッ!」
オッサンに気付いて向かってくるヤツも馬車に気を取られているヤツも等しく跳ね飛ばしていく。密集しているので跳ね飛ばされたヤツが更に他の魔物にぶつかり、ビリヤードかボウリング状態だ。
『結界』内部には衝撃が伝わらないので無人の野を行くが如く、という風情である。何より血が飛び散らないのがいい。おかげでオッサンが転移してきてからそう時間が経たないうちに馬車のそばまで来られた。
「一応聞くぞ! 助けはいるか!」
冒険者ビギナーではあるが、取り説を読み込んでいるオッサンに死角はない!
「ぼっ、冒険者かっ! 頼む!」
よし、言質は取った。これで『横取り』とか言われずに済む。
流石にマップ機能で長々と見ている暇がなかったのでわからなかったが、どうやらこの馬車は貴族とか身分の高い人が乗っているようで、押し寄せる魔物をなんとか食い止めていたのは騎士のようなお揃いのフルプレート姿の人たちであった。
オッサンは騎士たちの周り、つまり馬車の周囲を走り回った。
本当に文字通り走っただけだが、それだけで馬車の周りの魔物どもは吹き飛んだ。スタンピードを懸念されていただけあって魔物は無数にいたが一時的に空白地帯ができた。そのわずかな時間がオッサンの作戦に必要だったのだ。
無双? なぜオッサンがそんなマネをしなければならない?
「結界!」
オッサンは中二的呪文を唱えなくても魔法を使えるが、この場合騎士さんたちにオッサンの意図を知らせるために敢えて声にした。
使うのは『安心確実アカシックさん印の結界』である。馬車を中心に半径十メートルの半球状。見てわかるように薄っすらとピンク色にしてみた。特に意味はない。強いて言えばアニメとかでそんなシーンがあったからだ。
「これでしばらくは大丈夫だ。怪我人はいるか?」
結界を張ってすぐ魔物たちが再び群がってきたが無視。代表者がわからないので近くの騎士さんに聞いてみる。
「え? あ、そ、そこに……」
見た目若そうな騎士さんは尻餅をついていた。きっと張り詰めていた神経が緩んでしまったからだろう。
オッサンはその騎士さんの指差す方向に目をやる。
馬車の車輪辺りに何人かの騎士さんが倒れていた。
こりゃマズイ。回復魔法回復魔法っと。
「オルコット! 状況はどうなってますの? あら? あなた誰?」
突然馬車のドアが開き、如何にも『姫様!』みたいな女性が顔を覗かせる。おお! 金髪縦ロールだ! 天然モノだろうか?
「ひ、姫様! 危険です! まだ外に出てはなりません!」
「そこの冒険者! 姫様から離れろ!」
オッサン危険物扱いらしい。気持ちはわかるからスルー。
一人目は馬車の中から声だけ。たぶん侍女? メイドさん?
二人目は騎士さん。尻餅君じゃなくて姫様の声を聞いてから馬車の前方から駆けつけてきたからオルコット君なのかもしれない。兜で顔は見えないがきっとイケメンなのだろう。強い口調で警告はしてきたが実力行使はしてこなかった。おそらく助けられたことは理解している上、子連れだったからだろう。
しかし、人前で『姫様』連呼しないほうがいいぞ。
「安心しろ。治療しているだけだ」
大人なオッサンは落ち着いて回復魔法を倒れている騎士さんたちに掛け続ける。
「む、結界といい回復魔法といい、キサマは魔術師なのか?」
オッサンは答えなかった。何故ならオッサン自身わからないからだ。ステータス上では『魔法剣士』なんだが、剣はアイテムボックスに入れっぱなしだ。
「オルコット、治療の邪魔よ。わあ、これが結界? すごいわね」
「姫様! 出てきてはなりません! いつ結界が破られるか!」
失礼な。神サマでも破れないっつーの! 言わないけどね。
「そうね……ねえ、あなた。これからどうするのかしら? いつまでもこのままじゃ……」
お姫さまは容姿に似合わずというか、特に高飛車な態度を取るでもなくオッサンに聞いてきた。騎士さんも安全さえ確保できればそれでいいというスタンスらしくテンプレの『平民が馴れ馴れしい口を利くな!』とかは言われない。ふむ、この世界、上に立つ人間はシャルさんを含めできた人物もいるようだ。あ、イギリスの港町で高飛車な領主の使いとか言う人間に会ったな、そういえば。人種差別もあるというし、過剰な期待は止めよう。気をつけなくては。
「安心してください。しばらく待てば片付きます。さて、そちらの騎士さんたちも治療してやろう。こっちに来い」
倒れていた騎士たちの治療も終わり、なんとか戦えていた残りの騎士たちを呼び寄せた。
ギリギリだったらしく、剣を杖代わりにしている者もいる。危ないところであった。オッサンが参戦するタイミングがあと少し遅ければ魔物の攻撃が馬車まで達していたことだろう。
結界を張ってあるだけで魔物の姿は増える一方。このまま満身創痍ではお姫様を守りきれないと考えたのか、騎士さんたちは素直に集まってくれた。オッサンはまとめて回復魔法をかける。『エリアヒール』とかいうんだっけ?
「待てば片付くとはどういうことだ?」
回復魔法の治療を受けながらオルコット君が問いかけてくる。他の騎士さんたちは息も絶え絶えだというのに元気だね。
「言葉どおりだ」
「それではわからん」
そうだろうな。オッサンちょっとカッコ付けただけです。
「こんなところに子連れで単独で来るわけがないだろ。連れがいる。今魔物を一掃しているところだ」
「ということはフランシスカ王国側の冒険者たちか? あちらではスタンピードと認定したのか?」
「依頼を受けたわけじゃないからそれは知らん。俺たちも旅の途中魔物の群れにかち合ってな、馬車が襲われてるのが見えたから結界を使える俺が先行して来たわけだ。時間稼ぎにな」
「そうだったのか。とにかく恩に着る。助けてもらっただけでなく回復魔法まで」
「私からもお礼を言いますわ。あなたお名前は?」
「あー、ハチベエといいます。あー、立ったままですみません完治までもうちょっとなので……」
「命の恩人に、ましてや戦場でそんなマネをさせられませんわ。申し遅れましたが、私はババロア王国第四王女、エミリアですわ」
「……なるほど、お姫様ですね。おっと、もういいか。調子はどうだ?」
「ああ。これでまた戦える。感謝するぞ」
「ハチベエさん。お願いがあるのですが」
オッサンが騎士さんたちの体調をチェックしていると、お姫様からお言葉が。挨拶以上の内容のようだ。トラブル臭プンプン。これって勇者君専用のフラグじゃないの? ダンジョン潜ってる場合じゃないよ!
「……なんでしょう?」
「私たちの旅に同行してもらえないかしら。護衛として」
「……何故でしょう? 立派な騎士さんたちもいるというのに」
「……オルコット」
「はっ! ハチベエだったな。実は、恥を晒すようだが、私たちは五台の馬車と百人の護衛でここまで来たのだが、生き残ったのは今ここに居る人間だけなのだ。皆なんとか姫様だけは逃がそうとして……今後も旅を続けるのならば戦力が足りない。そう姫様は心配なさっておられるのだろう」
なるほど。確かにお忍びにしては護衛が騎士丸出しだし、姫様姫様連呼していると思った。オッサンが発見するのが遅かったワケか。罪悪感がないわけではないがお姫様が助かったので良しとしよう。
「事情はわかりました。無念なことでしょう」
「それなら!」
「……残念ですが、お断りいたします」
だが断る! 敬語バージョン。




