02 可愛いだけじゃない。ちゃんとお役に立ちます!
ブクマありがとうございます。
オッサン一家プラス神サマズの『なんちゃって漫遊記』は一日目から順調だった。
順調すぎて直線距離で100キロは北上できたと思う。単純計算で時速8キロか? 実際は街道が直線というわけもなくもっとスピードがあるはずなのだが、いやいや、これでも神サマズに人間っぽく振舞ってもらった結果なんだよ? 移動方法は歩きか馬車でと交渉したのだ。私にはそれぐらいしか思いつかなかったともいう。何せここはファンタジー世界なんだから転移魔法を含めてブッ飛んだ移動方法があったとしてもおかしくはない。それでも目立ちたくないということで了承してもらったのだ。
だが、神サマズの『歩き』は速かった。気付かずにペースを合わせたオッサンも大概なんだろうけど。
いやいや、始めの30分は本当に『人並み』だったんだけどね。ウチの天使が『セーラもあるく!』って張り切ってたもんだから、皆セーラちゃんのペースに合わせて進んだのだよ。
ただ、いくら『元』邪神とはいっても、この世界ステータスに依存するのが『設定』であるからして、今のセーラちゃんは文字通り10歳の女の子、しかも毎日外を駆け回って遊んでいるタイプではない。長い間『監禁』されていたようなものだ。そりゃ体力もないに決まっている。
で、30分がんばったもののダウンしてしまったワケだ。
今のオッサンならセーラちゃんの10人や20人抱えて歩き続けるのはステータス的に容易なことである。だからそれほど心配してなかったのだが、創造神の爺さんコトご隠居様にはオッサンがよほど心配性に見えるらしい、ある提案をしてきた。
「たけ……ハチベエや、心配せずともよい。足はちゃんとある」
「馬車でも『創る』のか?」
「それもよいかも知れぬが、ほれ、何のために連れてきたと思っておる」
爺さんが指を差したのは、オッサンがレジャーシート代わりに毛布を地面に敷いて休憩させているセーラちゃんの、その傍らに侍っている二匹のモコモコだった。
「そりゃモフモフだからに決まっている」
私は躊躇することなく答えた。
だが、それは爺さんの期待する答えではなかったようだ。
「……スコル、ハティよ。大きくなれ」
何かハムが食べたくなるセリフだが、それも一瞬のことだった。
「おおっ!」
いやはや、これだからファンタジー世界は……
「スコル、ハティ、おっきい……」
こら! 女の子がそんなセリフ言っちゃいけません!
と言いたかったが、セーラちゃんの言葉どおり、二匹は大きくなった。馬並みとは言わないが、地球観点だとセントバーナードぐらいはあるかも。
面白いのは、『神狼』フェンリルの子供だからといって同じように厳つい姿にはならず、モコモコの子犬の姿のまま縮尺を拡大させたのだ。
これはいい。モフモフも大倍増ではないか!
「どうじゃ? フェンリルなら全員が乗れるのじゃが、これならセーラちゃんだけでも楽に旅ができるじゃろう」
私は昨日出会った狼を思い出した。全長100メートルはないかもしれないが50メートルはありそうだった。でも、たぶんあのサイズは室内用。縮小してたんじゃないかなと今は考えている。だって、目の前に巨大になったモコモコがいるんだから。
あ~、スコル、ハティ、セーラちゃんにじゃれるのはほどほどにしなさい。今のサイズだとセーラちゃんが襲われているようにしか見えないぞ。あ~あ、涎でベトベトじゃないか。
「浄化」
生活魔法でセーラちゃんを清めながら考えた。魔法も覚えさせた方がいいな、と。
せっかく『ニンゲン』になったのだからあまりに目立つようなキワモノ魔法は必要ないが、一般的なのは将来のことを考えても持っていたほうがいいだろう。私? いや、オッサンは異世界転移十日目でほとんどあきらめましたが、何か? だってシュレの悪戯にムキになって拒否したら逆に喜ばれてしまう。ほどほどに反応するのがいいのだろう。無視して嫌われたりするのも避けたい。宇宙の意志レベルの呪いなどゴメンだからな。
愛娘の英才教育については、幸いしばらくは神サマズが同行すると言っているし、何か教えてもらおう。魔神様こと魔法の神も偶に合流するというのも好都合である。あのヒト、名前ほど怪しくないのが高評価ポイントである。たぶん、この世界の『設定』では『魔神<邪神』で人類の敵としての役割が与えられているのであろう。まだ魔族のヒトに直接会ったことはないが、誤解と先入観から敵役になっているみたいだし、人間と魔族が関係修復不能の段階になってから『邪神召喚!』とかモブの邪教集団が突然現れて更に泥沼になるパターンだ。よくあるよくある。
ま、イズミちゃんの暴走とシュレの介入で抜本的に『設定』が改変されたケドね。あれ? もしかしてこの世界って元々滅亡に向かってたの? ああ、そこで『勇者登場!』のパターンか。ゴメンね勇者君、見せ場なくなっちゃったよ。でも平和でよかったじゃないか。これからは主に魔物相手に思う存分『ヒャッハー』してください。
「ハチベエ。何をしとる。出発するぞ」
おっと、また『高速思考』で他愛もないことを考えていたぜ。反省反省。
ここはひとつ、キャラ付けのために……
「こいつぁ、うっかりだ!」
……神サマズ、何の反応もありませんでした……
こんな感じでセーラちゃんの乗騎が手に入り移動が楽になったのです。いつの間にか鞍とかも用意されてて(たぶん創造神謹製)、長時間の騎乗も無問題。スコルとハティは交代で巨大化。疲労とかの問題ではなく、一匹は小さいままセーラちゃんが抱えて道中の話し相手になっているのだ。話し相手? 話せるのか?
オッサンが素でうっかりしていたのが移動のペース。
道中盗賊の襲撃も魔物の氾濫もなかった上、愛娘が巨大モコモコの上でチビモコモコと戯れている様子を愛でるのに忙しかったもので、ついペース確認を忘れていたのだ。神サマズも何も言わず歩き続けていたからね。途中集落があったようだがすべてスルー。
オッサンが我に返ったのは日も暮れかかってから。宿の情報でもないかとケータイを取り出すと時間がわかった。ここって日本より緯度が高いの忘れてたよ。オッサン的にはもうすっかり夜時間だよ。子供は寝る時間だよ!
しかも、次の街まで大分距離がある。勿論神サマズやオッサンのステータスなら次の街まで一っ飛びなんだろうが、それを選択するぐらいならわざわざ歩き旅も選択しない。
ならば野宿だ! そして反省会だ!
一日の移動距離が100キロ以上? 歩いて?
これは異世界的に『順調』なのか『非常識』なのか。果たしてこのメンバーで話し合って答えが出るのだろうか?
そのことを同行者たちに告げる。
反応は悪かった。特に獣神。創造神サマに野宿なぞさせられるか、うんぬん。今更すぎるだろうが。ノープランのオッサンも悪かったけどさ、だったら手前の集落で今夜の宿はどうするかぐらいの意見は言ってくれよ。
うん、やはり偉いヒトと一緒なのは慣れない。オッサンは万能秘書じゃないんだよ!
「どうするのじゃ? 一度ワシの神殿に戻るか?」
う~む。魅力的な提案だ。仕切り直すか?
だが断る!
「いや、できれば野営の経験もしておきたい。何でも神頼みで解決できたらセーラが成長できない」
「天晴れじゃ! その心意気を賞してワシも野宿に付き合おう。……いや、違うのう……神を辞めると言っておるワシが勝手なことはできんのう」
うわ、面倒くせえ。たまに鬱っぽくなるよな、この爺さん。
「いや、そんな重い話じゃない。爺さんたちは好きにしてくれたって構わないさ。なんなら魔神様みたいに時々合流だけしてもいいんだぞ?」
さりげなく誘導。神サマ視点の『時々』って数年とか数十年単位じゃないかなという期待もある。
「異世界人にしてはいいアイデアね! アタシそうする! ただ歩いてるのつまんなかったし」
オギンことチビ妖精がオッサンの提案に乗ってきた。って、お前はずっと誰かの頭の上で寝てただけじゃねえか! それに! 何かトラブルを期待するのはやめろ!
だが、せっかくフェードアウトしてくれるというのだから、突っ込むのは勘弁してやろう。
「ああ、いいぞ。神サマの仕事も忙しいだろうしな。今日は付き合ってくれて済まない。じゃあ、元気で」
「む~! 何か追い出されてるみたい! いい? 面白いことがあったらすぐ呼んでよね!」
こちらの思惑を読まれていたが暇だったことには違いない。そりゃそうだ。本家のコーモン様だって週一でしか事件に遭遇しないんだから、他の時間は地味に移動中なのだろう。ということで、フラグっぽいセリフを残してオギンさんは去っていった。
よし! 残り3人!
「爺さんたち、どうする?」
「ワシは残るぞ。ヒトとして経験を積まねば」
頑固。
「俺も残る! キサマと決着を付けるまではな!」
これまた頑固。&バトル脳。
「私は配下だ。従うのみ」
あの、竜人様? 何度も言いますが、私の配下ではなくてですねシュレの配下なんですよ?
結局本家と同じメインメンバーは残るようだ。
「方針が決まったなら宿の準備じゃな」
「いや、だから今日は野宿で……」
オッサンのツッコミが間に合わなかった。
爺さんが手を翳すと街道沿いに家が……いや、立派な『神殿』が……
「どうじゃ? 少し小さいが一泊だけなら構わんじゃろう」
「お手軽に奇跡を起こしてんじゃねえーっ!」
その後この神殿は『○○街道の奇跡』として長く信仰の対象になったとか……
って、そんなことはオッサンが許すものか! 翌朝爺さんに処分させました。




