29 ここは天国か! いえ、神の国です
「パパ、いたい~」
愛娘(養女)の声にハッと正気を取り戻したタケシです。オッサンやってます。
「おお、ごめんな~」
先ほど悲しい未来を思い浮かべてしまい、落ち込んでいるところに天使の声(当社比2.5倍)に慰められて思わず抱きしめる力加減を間違えてしまったぜ。反省。ついでにナデナデ。
「じゃあ、パパの仕事も終わったし、帰ろうか?」
「うん!」
うわ~、かわええ。またやられてしまいそうだ。ぐっと堪える。
「じゃあな、爺さんたち。もう会うこともないだろうが達者でな」
私はセーラを抱っこしたまま転移しようとした。
「待て待て!」
そこに爺さんが慌てて駆け寄ってくる。
「なんだよ。もう俺の仕事は終わったんだから、あとは神サマたちの問題だろ?」
「何を言っておる! ワシも旅に同行するという約束じゃろうが!」
「あ……」
そうだった。そんな条件を飲んだんだった。素で忘れてだぜ。
「全く、娘ができたからといって薄情なヤツじゃ。のう? セーラちゃんや」
「パパ、はくじょう?」
「じじい! ウチの娘に誤解を招くようなコト吹き込んでんじゃねえ!」
なんということだ。ウチの天使が狙われている! 父親として気をつけねば!
私は爺さんたちの視線からセーラを隠すような姿勢になり、もう一度確認する。
「なあ、本当についてくるのか?」
「当たり前じゃ!」
「旅っていっても、買い物して、しばらく暮らせそうな場所を探すだけだぞ? 観光するわけじゃないし、つまらんと思うぞ?」
そうなのだ。こちらの世界、旅なんて苦行でしかない。そもそも観光旅行という概念があるかも怪しい。
「構わぬ。真実を知ってからの初めての旅じゃ。何があろうとも、また何もなくともワシにとっては糧となろう」
うわ、爺さんマジメ発言。そんな性格だから娘さんと同じで鬱に罹りやすいんだよ。
「異世界人と一緒だと面白いことが起きそう~」
おいチビ妖精。人をトラブル体質みたいに言うな! オッサンはシュレに目を付けられただけの被害者だ。
「キサマの結界をブチ破るまでは付いていくからな!」
どこまで脳筋なんだ! これはアカシックさんの結界だぞ! お前、『宇宙の意思』を凌駕しようとでもいうのか! と言っても聞き入れそうにないな。ストーカーか!
「私は配下だ。上司に従おう」
竜神様、あのですね、あなたはシュレの配下であって、オッサンの配下じゃないんですよ? クールなキャラだと思ってたら結構ヌケてんな。
「ハハハ、面白いね、異世界人クン。僕もなるべく顔を出すよ。それじゃ」
「ワシも海が心配じゃ」
「吾輩もどこぞで雷を落とすとしますか」
魔神様、海神様、雷神様はちょっと挨拶して帰っていった。転移魔法か? 流石神サマ。それにしても雷神様のセリフは微妙に危ない。天気には気をつけないと。
残った4人? の神サマズ、梃子でも動かないらしい。いや、ここから動かないなら願ったり叶ったりなんだが、そうではなく、どうしてもついて来る気のようだ。
「はあ……しょうがない。言っておくが、俺の邪魔はするなよ」
「わかっておる。こう見えても『神』じゃぞ」
「ははは……」
これ以上オッサンにはどうしようもなかった。だって相手は神サマだし。
「それじゃ、行こうか……あ、セーラ、歩かせていいのかな? 大丈夫か?」
「だいじょうぶ! セーラあるく!」
ううっ……なんて健気な。
だが、オッサンの脳裏には、一生懸命歩いて仕舞いにはセーラちゃんの可愛い足に肉刺ができて泣いている姿が去来する。
ダメだダメだ! 異世界の常識なぞクソ食らえ! ウチの娘に辛い思いはさせられねえ!
旅か。地球ではいくらでも移動手段があった。こうなったらチートで『自動車』でも作るか?
「心配せんでも、ワシに任せておくがよい」
おお? 爺さんにいいアイディアがあるらしい。
「元々護衛として連れて行く予定じゃったが、セーラちゃんはそれに乗ればいいじゃろ」
おお。と言うことは騎乗できる動物か? いや、護衛と言っているから強い魔物かなんかか? ペガサス? ユニコーン?
爺さんがムニャムニャ呪文を唱えている。召喚魔法かな?
「出でよ! フェンリル!」
あ、出落ちした。このあとの展開が読める。
「パパ! こわい!」
天使ちゃんがオッサンの胸にしがみついて震えている。うん、オッサンも隠れたい。
現れたのは黒くてデカイ狼。
どのくらいデカイかというと、竜神様を召喚した時広間いっぱいに東洋竜の姿を晒していたがそれに負けない大きさである。10メートルでは利かないだろう。うん、神様んち無駄に広い訳がわかった気がする。
そのデカイ狼が顔をオッサンたちの方に近づけているのだ。その大きな口は全員を一飲みにできそうである。
『創造神様。お呼びにより参上しました』
おお、しゃべった。いや、『念話』とかなのかな?
「よく来てくれた。実はな、お主に頼みがあっての――」
「却下だ!」
オッサンは爺さんのセリフを容赦なくカット。冗談ではないぞ、○○の○○は化け物か!
「なんじゃ、神獣じゃぞ。皆で背に乗れて便利じゃろうが」
「アホか! こんなん連れて歩いたら人間界が阿鼻叫喚だろうが! 逆に討伐隊も出て来んわ! 大体ウチのセーラが怖がってるだろ!」
「おお、それはマズイ。セーラちゃんや、怖くないぞ~」
全く、実際人間界がどうなろうとオッサンにはどうでもいいが、うちの子を泣かす存在は許せん!
『創造神様、人間界での任務でお忍びということでしたら、私は適任とはいえますまい』
おお? この狼理性的だな。姿は怖いけど好感が持てる。
「うむ。それはわかった。ならば誰にするかのう」
流石最高神(この世界限定)、神獣のストックはまだあるらしい。
『僭越ながら、私の子供たちにお任せください』
「おお! それはいいかも知れん」
ポンと手を打つ創造神。それにしてもフェンリルの子供ねえ?
「……『スコル』と『ハティ』って名前じゃないよな?」
「何故知っておる? いや、タケシじゃからな……」
おい! 酷い風評被害だな。日本人の大部分が知ってるよ!
しかし、この世界、地名や神サマの名前は微妙にパクリっぽいのに対して魔物は地球の知識のまんまなんだよな。何故だろ? 知識的財産権とか? 肖像権とか?
それより、『オールディン』に『フェンリル』って組み合わせ、マズくない? 最後に食われたりしないよな、爺さん。
「出でよ! スコル! ハティ!」
爺さんはフェンリルさんの提案を快諾し、再び召喚魔法を使う。
そして現れたのは!
「うおーっ! モフモフ!」
「パパ?」
娘も引くほどオッサン大興奮。
だって、モフモフだよ? キミ達に決めた!
「娘よ! この子たちはこれからウチの家族になる。仲良くしなさい。さあ! モフモフしてみなさい!」
「かぞく? もふもふ?」
オッサンの暴走は止まらない。自分で暴走って言えるぐらいだから冷静な部分もあるのだろう。だが、それがどうした! モフモフは正義なのだ!
爺さんが召喚したのは、伝説の魔物とは思えぬほど可愛らしい、そして小さな生き物たちであった。狼じゃねえ! 子犬だ! 『ぬこ派』を自認するオッサンだが、モフモフに貴賎はない、という主義でもある。あ、デカすぎて毛が針金どころが槍みたいなフェンリルさんは対象外です。
こちらの世界に来てからモフれたのはシュレのなんちゃってヌコ耳だけだ。タバコといいモフモフといい、この世界オッサンに厳しすぎた。
だが、これまでの苦労が報われる。この先この子たちと一緒のモフモフの旅。う~ん、なんて甘美な響きだ。
このあと、親のフェンリルさんに止められるまでセーラと二人で2匹の子犬をモフり倒しました。爺さんたちも呆れて言葉もなかったようだが、セーラちゃんも満足してたからオールOK!
第三章完了です。
次回、第四章突入!
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